[P-KS-14-4] 腹部深層筋の効率的な収縮課題は?
―超音波画像診断装置を用いて―
キーワード:腹部深層筋, 超音波画像診断装置, 効率的な収縮課題
【はじめに,目的】
腹横筋は腹腔内圧の産生や腰椎の安定性に関与しており,腰部機能障害との関連が重要視されている。先行研究においては,腹横筋の選択的収縮方法として腹部引き込み運動の有効性が報告されている。しかし,臨床上腹横筋の収縮感覚の習得が困難な症例が多く,その指導に難渋する。そこで本研究の目的は,超音波画像診断装置を用いて筋厚変化率を指標とし,腹横筋の収縮が効率的に得られる運動課題を明らかにすることとした。
【方法】
対象は健常成人男性11名,平均年齢27.6歳(20-42歳),平均身長173.6±6.7cm,平均体重62.7±7.0kgであった。超音波画像診断装置(KONICA MINOLTA SONIMAGE HS1version1.30),4-18MHzのリニアプローブを用いて測定した。被験筋は腹横筋(以下,TA),内腹斜筋(以下,IO)とした。測定部位は右側前腋窩線上の肋骨下縁と腸骨稜との中央部でマーキングを行いプローブの位置を統一した。尚,側臥位の課題では右側臥位で支持基底面側を測定した。運動課題は,腹部引き込み運動(以下,ADIM),両膝立ち位での両下肢ボールつぶし運動(以下,BPM)の2課題とし,各運動課題を背臥位と右側臥位の2肢位で行った。課題の実施する順番による測定値への影響を防ぐ為,ランダムに各課題を実施した。筋厚の測定は安静時筋厚と収縮時筋厚を3回測定し,その平均値を用いて収縮時筋厚を安静時筋厚で除した値を筋厚変化率として算出した。統計学的分析には統計解析ソフトR2.8.1を使用し,TA,IOの筋厚変化率の運動課題での差をSteel-Dwass法を用い多重比較を行い,有意水準はp<0.05とした。
【結果】
各課題の筋厚変化率の平均値は,背臥位ADIMでTA1.9,IO1.3,背臥位BPMでTA1.4,IO1.2,側臥位ADIMでTA2.2,IO1.5,側臥位BPMでTA1.3,IO1.3であった。4課題間におけるTAとIOの筋厚変化率は,背臥位ADIMでは他の課題と有意な差を認めなかったが,側臥位ADIMでは背臥位BPM,側臥位BPMよりも有意に高値を示した(p<0.01,p=0.02)。
【結論】
本研究では側臥位ADIMでTAとIOの筋厚変化率が,先行研究でTAが効率的に収縮するとされている背臥位ADIMや背臥位BPM,側臥位BPMよりも有意に高値を示したことから,背臥位ADIMよりも側臥位ADIMの方が効率的に収縮できる結果となった。このことは,TAを効率的に収縮させる為には腹部深層筋を意識する運動課題が有用であり,かつ側臥位のように体幹が不安定な環境下での運動がより効率的に収縮する可能性を示唆した。また,TAとIOの筋厚変化率が側臥位ADIMで有意な差を認めたことから,体幹が不安定な環境下ではTAとIOが共同して収縮することを示唆する結果となった。臨床では,側臥位で疼痛が軽減する腰部疾患を呈する症例も少なくない為,側臥位ADIMは疼痛を助長せずに効率的に腹部深層筋が収縮できる課題として有用である。今後は腰部機能障害を有する症例に対する有効性の調査をしていきたい。
腹横筋は腹腔内圧の産生や腰椎の安定性に関与しており,腰部機能障害との関連が重要視されている。先行研究においては,腹横筋の選択的収縮方法として腹部引き込み運動の有効性が報告されている。しかし,臨床上腹横筋の収縮感覚の習得が困難な症例が多く,その指導に難渋する。そこで本研究の目的は,超音波画像診断装置を用いて筋厚変化率を指標とし,腹横筋の収縮が効率的に得られる運動課題を明らかにすることとした。
【方法】
対象は健常成人男性11名,平均年齢27.6歳(20-42歳),平均身長173.6±6.7cm,平均体重62.7±7.0kgであった。超音波画像診断装置(KONICA MINOLTA SONIMAGE HS1version1.30),4-18MHzのリニアプローブを用いて測定した。被験筋は腹横筋(以下,TA),内腹斜筋(以下,IO)とした。測定部位は右側前腋窩線上の肋骨下縁と腸骨稜との中央部でマーキングを行いプローブの位置を統一した。尚,側臥位の課題では右側臥位で支持基底面側を測定した。運動課題は,腹部引き込み運動(以下,ADIM),両膝立ち位での両下肢ボールつぶし運動(以下,BPM)の2課題とし,各運動課題を背臥位と右側臥位の2肢位で行った。課題の実施する順番による測定値への影響を防ぐ為,ランダムに各課題を実施した。筋厚の測定は安静時筋厚と収縮時筋厚を3回測定し,その平均値を用いて収縮時筋厚を安静時筋厚で除した値を筋厚変化率として算出した。統計学的分析には統計解析ソフトR2.8.1を使用し,TA,IOの筋厚変化率の運動課題での差をSteel-Dwass法を用い多重比較を行い,有意水準はp<0.05とした。
【結果】
各課題の筋厚変化率の平均値は,背臥位ADIMでTA1.9,IO1.3,背臥位BPMでTA1.4,IO1.2,側臥位ADIMでTA2.2,IO1.5,側臥位BPMでTA1.3,IO1.3であった。4課題間におけるTAとIOの筋厚変化率は,背臥位ADIMでは他の課題と有意な差を認めなかったが,側臥位ADIMでは背臥位BPM,側臥位BPMよりも有意に高値を示した(p<0.01,p=0.02)。
【結論】
本研究では側臥位ADIMでTAとIOの筋厚変化率が,先行研究でTAが効率的に収縮するとされている背臥位ADIMや背臥位BPM,側臥位BPMよりも有意に高値を示したことから,背臥位ADIMよりも側臥位ADIMの方が効率的に収縮できる結果となった。このことは,TAを効率的に収縮させる為には腹部深層筋を意識する運動課題が有用であり,かつ側臥位のように体幹が不安定な環境下での運動がより効率的に収縮する可能性を示唆した。また,TAとIOの筋厚変化率が側臥位ADIMで有意な差を認めたことから,体幹が不安定な環境下ではTAとIOが共同して収縮することを示唆する結果となった。臨床では,側臥位で疼痛が軽減する腰部疾患を呈する症例も少なくない為,側臥位ADIMは疼痛を助長せずに効率的に腹部深層筋が収縮できる課題として有用である。今後は腰部機能障害を有する症例に対する有効性の調査をしていきたい。