第52回日本理学療法学術大会

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日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) » ポスター発表

[P-KS-15] ポスター(基礎)P15

2017年5月12日(金) 15:30 〜 16:30 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT)

[P-KS-15-3] 股関節回旋筋力に影響を及ぼす身体特性の検証

坂東 峰鳴1,2, 瓜谷 大輔1, 幸田 仁志3, 粕渕 賢志4, 福本 貴彦1, 今北 英高1 (1.畿央大学大学院健康科学研究科, 2.社会医療法人高清会香芝旭ヶ丘病院リハビリテーション科, 3.京都橘大学健康科学部理学療法学科, 4.大阪行岡医療大学医療学部理学療法学科)

キーワード:股関節, 回旋筋力, 身体特性

【はじめに,目的】

股関節回旋筋は,動作時に股関節のみでは無く,膝関節の回旋動作の制御にも寄与する。加えて,股関節回旋筋力の低下は,膝前十字靭帯損傷や膝蓋大腿関節痛症のような過度の膝関節回旋動作に起因する疾患と関連性があることが報告されている。したがって,我々理学療法士は,これらのような疾患への臨床アプローチとして,股関節回旋筋力の評価や治療を行うことが重要である。しかし,個々の股関節回旋筋力に影響を及ぼす身体的な要因は未だ明らかになっていない。そこで本研究の目的は,身長,体重,大腿骨前捻角,股関節回旋可動域の身体機能を測定し,股関節の回旋筋力に影響する因子について検討することとした。

【方法】

対象は下肢に重篤な整形外科的疾患の既往のない健常成人44名(男女各22名:年齢24.3±3.6歳,身長165.8±7.7cm,体重58.1±8.6kg)88肢とした。測定項目は最大等尺性収縮での股関節内旋筋力,股関節外旋筋力(以下,内旋筋力,外旋筋力),股関節内旋可動域,股関節外旋可動域(以下,内旋可動域,外旋可動域),大腿骨前捻角(以下,前捻角)とした。筋力はハンドヘルドダイナモメータ(以下,HHD)(ミュータスF-100,アニマ社)を使用し,我々が第49回日本理学療法学術大会にて妥当性を報告した,ベルト固定法で計測した。測定肢位はベッドから両下腿を下垂した背臥位で,股関節屈伸・内外旋中間位,膝関節90̊屈曲位とした。股関節可動域の計測は筋力測定と同様の肢位でゴニオメータを用いて実施した。前捻角の測定は,Craig,s testを用いて行った。また建内らの方法から,各被験者の股関節回旋可動域の中間位(以下,回旋中間位)((外旋可動域-内旋可動域)/2)を算出した。統計解析は,股関節筋力と,年齢,身長,体重,外旋可動域,内旋可動域,回旋中間位,前捻角の関連性の検討をピアソンの相関係数を用いて行った。さらに内旋筋力および外旋筋力を従属変数,その他の項目を独立変数とし,重回帰分析(ステップワイズ法)を行った。有意水準は5%とした。

【結果】

外旋筋力は内旋可動域(r=-0.75),外旋可動域(r=0.46),回旋中間位(r=0.72),大腿骨前捻角(r=-0.35)と有意な相関関係を認めた。また重回帰分析の結果,外旋筋力の独立した影響因子として,内旋可動域,回旋中間位が抽出された。一方,内旋筋力に有意な相関関係を認めた項目はなかった。

【結論】

外旋筋力には,前捻角および回旋可動域が影響していた。前捻角の増大が回旋中間位を内旋方向に偏位させ,外旋筋の筋長が短くなることで外旋筋の筋出力を弱めたと考えられる。外旋筋力は,身体構造の違いで得られる値が異なる可能性があり,今後はさらに股関節角度を変化させた値の調査を行うことで,骨形態や筋長と外旋筋出力の関連性を明らかに出来ると考える。