The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) » ポスター発表

[P-KS-16] ポスター(基礎)P16

Fri. May 12, 2017 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT)

[P-KS-16-3] 到達把持動作の学習過程における姿勢制御の変化
重量の想起が困難な課題を用いて

内藤 卓也1,3, 大田 瑞穂2, 玉利 誠3,4 (1.福岡リハビリテーション病院, 2.誠愛リハビリテーション病院, 3.国際医療福祉大学大学院, 4.福岡国際医療福祉学院)

Keywords:到達把持動作, 運動学習, 三次元動作解析

【はじめに,目的】

到達把持動作は日常生活で多用される動作であり,対象物に手を伸ばし,掴むという2つの運動から構成される。これまでの到達把持動作に関する研究において,動作の反復により脳活動が変化するとともに,正確性も向上することが知られているが,その際の姿勢制御の変化を運動学的に分析した報告は見当たらない。そこで今回,過去の経験に基づく運動イメージの想起が困難な到達把持課題を設定し,動作の反復に伴う姿勢制御の変化を三次元動作解析装置にて分析した。

【方法】

対象は健常成人男性17名(年齢24.2±4.3歳)とした。利き手は全員右手で,上肢長は72.9±3.3cmであった。到達把持動作は端座位にて両手を机上に置いた肢位から,前方に置かれた500mlのペットボトルを右手で把持し,肩の高さまで持ち上げる動作とした。ペットボトルの中身は空(空条件)と鉛(鉛条件)とし,いずれも中身が見えないようにした。ペットボトルまでの距離は対象者の上肢長の110%とし,到達把持動作を5回連続で行った。計測には三次元動作解析装置(VICON NEXUS)を用い,直径6mmと9.5mmのマーカーを計22点貼付した。分析区間は,右手が机上から離れた瞬間からペットボトルを把持する瞬間まで(到達区間)と,把持してからペットボトルを挙上する瞬間まで(把持区間)とした。抽出データは1試行目と2~5試行目の動作速度最大値,動作速度最大値の出現時期,肘関節伸展角度の変化量,手関節背屈及び尺屈角度の変化量,身体重心の移動距離,股関節屈曲角度の変化量,動作時間(到達時間と把持時間)とした。統計学的処理にはR 2.8.1を用い,2条件の1試行目と2~5試行目の各抽出データをMann-WhitneyのU検定にて比較した。

【結果】

空条件では全ての抽出データにおいて1試行目と2~5試行目との間に有意差は認めなかった。鉛条件では肘関節伸展角度の変化量は1試行目:33.9±6.3°,2~5試目:36.8±7.8°であり,有意差が認められた(p<0.05)。手関節尺屈角度の変化量は1試目:18.1±7.5°,2~5試行目:14.5±5.5°であり,有意差が認められた(p<0.01)。把持時間は1試行目:0.16±0.04秒,2~5試行目:0.12±0.03秒であり,有意差が認められた(p<0.05)。

【結論】

空条件では到達把持動作の反復による姿勢制御の変化は認められなかったが,鉛条件では2~5試行目において肘関節伸展角度が有意に増加し,手関節尺屈角度が有意に減少した。また,把持時間が有意に減少した。肘関節は対象物と手の距離の調節に寄与し,手関節は重量物を挙上する際に背屈・尺屈位となることが知られていることから,鉛条件の1試行目では対象物と手の距離を調節してレバーアームを短縮するとともに,手関節の剛性を高めつつ把持時間を延長して未知な重量に備え,2試行目以降は重量のフィードバック情報に基づき姿勢制御を適切に変化させた可能性が示唆された。