[P-KS-17-1] 歩行動作における股・膝・足関節の非線形なkinematic couplingの定量化
Keywords:歩行動作, kinematic coupling, 非線形
【はじめに,目的】
歩行動作は,膨大な運動学・運動力学的自由度を合目的的に組織化することで達成されている非線形現象である。組織化された歩行動作では,kinematic couplingと呼ばれる連動した関節運動が存在することが知られている。多くの先行研究において,kinematic couplingはPearsonの積率相関係数によって定量化されている。しかし,Pearsonの積率相関係数では線形な関係性しか検出することができず,非線形な関係性が存在する場合にはその検出が困難であった。近年,非線形な関係性が存在する場合であっても高い検出力を示すMaximum Information Coefficient(MIC)が注目を集めている。本研究は歩行動作時の股・膝・足関節運動のkinematic couplingをMICおよびPearsonの積率相関係数により定量化し,2つの方法におけるkinematic couplingの検出力を比較することを目的とした。
【方法】
対象は健常成人男性12名(年齢24.6±1.3歳,身長1.74±0.03m,体重64.2±11.2kg)とした。計測には3次元動作解析装置(VICON-MX:OMG plc.)を使用した。動作課題は快適速度での歩行動作を10試行実施した。計測されたマーカー座標位置は4次ローパスバターワースフィルタ(遮断周波数8Hz)により雑音除去を行った。雑音除去を行ったマーカー座標位置を基に骨盤,大腿,下腿,足部の座標系を定義し,股関節屈曲/伸展・膝関節屈曲/伸展・足関節底屈/背屈角度を算出した。解析区画は初期接地からつま先離地までの立脚期として,10試行の角度データの加算平均波形を算出した。加算平均した角度データを用いてPearsonの積率相関係数とMICによるkinematic couplingの定量化を行った。上記の解析にはSCILAB,Rを使用した。
【結果】
MICは股関節屈曲/伸展角度と膝関節屈曲伸展角度の間で0.76-0.57,股関節屈曲/伸展角度と足関節底屈/背屈角度の間で0.87-0.62,膝関節屈曲/伸展角度と足関節底屈/背屈角度の間で0.80-0.62であった。Pearsonの積率相関係数は股関節屈曲/伸展角度と膝関節屈曲/伸展角度の間で0.49-0.03,股関節屈曲/伸展角度と足関節底屈/背屈角度の間で0.90-0.15,膝関節屈曲/伸展角度と足関節底屈/背屈角度の間で0.85-0.04であった。
【結論】
歩行動作は身体に生じる様々な非線形効果を有する運動力学的因子を組織化することで達成されており,その結果として非線形なkinematic couplingが発現していることが考えられる。本研究の結果より,MICを用いることによりPearsonの積率相関係数では定量化することのできない非線形なkinematic couplingを安定して検出できる可能性が示された。
歩行動作は,膨大な運動学・運動力学的自由度を合目的的に組織化することで達成されている非線形現象である。組織化された歩行動作では,kinematic couplingと呼ばれる連動した関節運動が存在することが知られている。多くの先行研究において,kinematic couplingはPearsonの積率相関係数によって定量化されている。しかし,Pearsonの積率相関係数では線形な関係性しか検出することができず,非線形な関係性が存在する場合にはその検出が困難であった。近年,非線形な関係性が存在する場合であっても高い検出力を示すMaximum Information Coefficient(MIC)が注目を集めている。本研究は歩行動作時の股・膝・足関節運動のkinematic couplingをMICおよびPearsonの積率相関係数により定量化し,2つの方法におけるkinematic couplingの検出力を比較することを目的とした。
【方法】
対象は健常成人男性12名(年齢24.6±1.3歳,身長1.74±0.03m,体重64.2±11.2kg)とした。計測には3次元動作解析装置(VICON-MX:OMG plc.)を使用した。動作課題は快適速度での歩行動作を10試行実施した。計測されたマーカー座標位置は4次ローパスバターワースフィルタ(遮断周波数8Hz)により雑音除去を行った。雑音除去を行ったマーカー座標位置を基に骨盤,大腿,下腿,足部の座標系を定義し,股関節屈曲/伸展・膝関節屈曲/伸展・足関節底屈/背屈角度を算出した。解析区画は初期接地からつま先離地までの立脚期として,10試行の角度データの加算平均波形を算出した。加算平均した角度データを用いてPearsonの積率相関係数とMICによるkinematic couplingの定量化を行った。上記の解析にはSCILAB,Rを使用した。
【結果】
MICは股関節屈曲/伸展角度と膝関節屈曲伸展角度の間で0.76-0.57,股関節屈曲/伸展角度と足関節底屈/背屈角度の間で0.87-0.62,膝関節屈曲/伸展角度と足関節底屈/背屈角度の間で0.80-0.62であった。Pearsonの積率相関係数は股関節屈曲/伸展角度と膝関節屈曲/伸展角度の間で0.49-0.03,股関節屈曲/伸展角度と足関節底屈/背屈角度の間で0.90-0.15,膝関節屈曲/伸展角度と足関節底屈/背屈角度の間で0.85-0.04であった。
【結論】
歩行動作は身体に生じる様々な非線形効果を有する運動力学的因子を組織化することで達成されており,その結果として非線形なkinematic couplingが発現していることが考えられる。本研究の結果より,MICを用いることによりPearsonの積率相関係数では定量化することのできない非線形なkinematic couplingを安定して検出できる可能性が示された。