The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) » ポスター発表

[P-KS-17] ポスター(基礎)P17

Fri. May 12, 2017 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT)

[P-KS-17-2] 足部マルチセグメントモデルを用いた歩行中の前足部回内外運動の機能的役割に関する運動学的分析

江戸 優裕 (文京学院大学保健医療技術学部理学療法学科)

Keywords:前足部, マルチセグメント足部, 歩行

【はじめに,目的】

足部は荷重環境下における様々な要求に応えるべく,衝撃緩衝・体重支持・推進機能を切れ目なく繰り返し果たし続ける重要な部分である。臨床的には前・中・後足部に分類され,前足部の機能的役割は主に立脚期後半の身体の土台としての支持と前方への推進力を発揮することである。また,前足部は可動性が大きいため様々な対応を可能としており,特に回内外の可動性は個人差が大きい。歩行中に前足部の回内外が身体をどのように支持・推進させているかを明らかにすることで,足部への介入意義を具体的にすることができると考える。

したがって,本研究の目的は歩行中の前足部の回内外運動と下肢関節運動の関係を明らかにし,前足部の回内外が有する機能的な役割を考察することとした。


【方法】

対象は健常者16名(年齢20.9±1.1歳・身長168.9±7.3cm・体重58.9±12.0kg)とした。

計測は三次元動作解析システムVICON-NEXUS(Vicon motion systems社)と床反力計(AMTI社)を使用した。マーカー位置および算出項目はOxford foot modelとPlug-In-Gait lower limb modelに準拠した。計測課題は至適速度での歩行とし,左下肢を解析対象とした。データはStance phase(以下SP)の時間で正規化した後に3試行分を平均し,Neumann(2006)の示す歩行周期各相に相当する10・35・65・90%SPにおける値をLoading Response(以下LR)・Mid Stance(以下MSt)・Terminal Stance(以下TSt)・Pre Swing(以下PSw)として抽出した。

統計学的分析は,前足部回内外角度と股・膝・足関節パラメータとの関係をPearsonの積率相関係数を用いて有意水準5%で検討した。


【結果】

後足部に対して前足部が回内するほど,膝関節内反(TSt:r=0.63)・内部膝関節外反モーメント(TSt/PSw:r=0.58/0.58)・下腿に対する前足部回内(LR/MSt/TSt/PSw:r=0.70/0.73/0.59/0.67)・下腿に対する後足部回外(MSt/TSt:r=0.51/0.74)が大きかった。

下腿に対して前足部が回内するほど,膝関節内反(MSt:r=0.62)・内部膝関節外反モーメント(LR/MSt/PSw:r=0.75/0.55/0.61)が大きかった。


【結論】

本研究により,主に立脚後半において前足部が回内するほど,膝関節内反角度と内部膝関節外反モーメントが大きいことが分かった。前足部回内と膝関節内反の因果関係に関して特筆すべき結果は,MStとTStという前足部に荷重する時期において,後足部に対して前足部が回内するほど下腿に対して後足部が回外するという点である。この結果から,立脚期後半の前足部回内により,後足部と下腿が外方傾斜することで膝関節が内反し,膝関節内部外反モーメントの増大が生じるものと推論される。

以上の結果から,立脚期後半の前足部回内により膝関節外反ストレスを,前足部回外により膝関節内反ストレスを減ずることができる可能性が示唆された。