[P-KS-17-4] 革靴着用が歩行に及ぼす影響
運動学的・運動力学的検討
Keywords:革靴, 歩行動作, 三次元動作分析
【はじめに,目的】
生活における歩行環境下では,アスファルトなどの硬い接地面が多く,身体を保護するための履物が必須である。革靴は,日常生活において広く使用されている履物の一つである。身体を保護するための履物である一方,臨床では,革靴の着用により下肢に疼痛症状が出現する症例を経験することも少なくない。これまでに,靴の形状と足部とのフィッティングの問題が報告されているが,革靴着用時における下肢関節運動と力学的負荷の関係については十分に分かっていない。本研究では,革靴着用時の歩行立脚期に着目し,下肢の運動学的・運動力学的観点からその関係を捉えることとした。
【方法】
対象は,整形外科的既往のない成人男性9名18肢とした。年齢20-21歳,身長170.4±6.3cm,体重62.2±6.2kgであった。履物は,革靴およびスニーカーで,全員が同種類の靴を着用し,サイズのみ選択した。計測は,三次元動作解析装置(カメラ10台,100Hz),床反力計(2枚,1000Hz)を用い,反射マーカの貼付はPlug-In-Gaitモデルを使用した。第2中足骨頭点と踵骨隆起点のマーカは,同程度の位置になるように各靴に貼付した。運動課題は,革靴とスニーカーを着用した歩行で,「できる限り速く」という口頭指示の下で各3回施行した。データ処理は,各歩行課題を3回行った平均値を採用し,歩行立脚期における矢状面上の下肢各関節角度,体重で正規化した関節(内部)モーメントおよび関節パワーを算出した。角度データは,踵接地時点を基準に下肢各関節変化量を抽出した。関節モーメントおよび関節パワーデータは,下肢各関節における極値を抽出した。統計処理はSPSS12.0を用い,下肢各関節角度変化量,関節モーメントおよび関節パワーの極値について,革靴とスニーカー着用時の2群間比較を対応のあるt検定で行った。その際,有意水準は5%とした。
【結果】
2群間の歩行速度,歩幅,歩行率に有意差は認められなかった。角度データは,革靴着用時の立脚初期足関節底屈変化量および膝関節屈曲変化量が有意に増加した。関節モーメントデータは,革靴着用時の立脚初期足関節背屈モーメント最大値および膝関節伸展モーメント最大値が有意に増大した。関節パワーデータは,革靴着用時の立脚初期足関節底屈における負のパワー最大値および膝関節屈曲における負のパワー最大値が有意に増大した。その他,有意差は認められなかった。
【結論】
立脚初期の衝撃吸収および荷重応答は,下肢各関節の作用により行われる。本研究の結果,革靴着用時では立脚初期足関節底屈変化量および膝関節屈曲変化量が増加する様態に対しブレーキをかけるため,足関節背屈筋群および膝関節伸展筋群による遠心性収縮活動が増大することが推測された。これらのことから,革靴着用が立脚初期における足関節および膝関節の力学的負荷を増大させる可能性が示唆された。
生活における歩行環境下では,アスファルトなどの硬い接地面が多く,身体を保護するための履物が必須である。革靴は,日常生活において広く使用されている履物の一つである。身体を保護するための履物である一方,臨床では,革靴の着用により下肢に疼痛症状が出現する症例を経験することも少なくない。これまでに,靴の形状と足部とのフィッティングの問題が報告されているが,革靴着用時における下肢関節運動と力学的負荷の関係については十分に分かっていない。本研究では,革靴着用時の歩行立脚期に着目し,下肢の運動学的・運動力学的観点からその関係を捉えることとした。
【方法】
対象は,整形外科的既往のない成人男性9名18肢とした。年齢20-21歳,身長170.4±6.3cm,体重62.2±6.2kgであった。履物は,革靴およびスニーカーで,全員が同種類の靴を着用し,サイズのみ選択した。計測は,三次元動作解析装置(カメラ10台,100Hz),床反力計(2枚,1000Hz)を用い,反射マーカの貼付はPlug-In-Gaitモデルを使用した。第2中足骨頭点と踵骨隆起点のマーカは,同程度の位置になるように各靴に貼付した。運動課題は,革靴とスニーカーを着用した歩行で,「できる限り速く」という口頭指示の下で各3回施行した。データ処理は,各歩行課題を3回行った平均値を採用し,歩行立脚期における矢状面上の下肢各関節角度,体重で正規化した関節(内部)モーメントおよび関節パワーを算出した。角度データは,踵接地時点を基準に下肢各関節変化量を抽出した。関節モーメントおよび関節パワーデータは,下肢各関節における極値を抽出した。統計処理はSPSS12.0を用い,下肢各関節角度変化量,関節モーメントおよび関節パワーの極値について,革靴とスニーカー着用時の2群間比較を対応のあるt検定で行った。その際,有意水準は5%とした。
【結果】
2群間の歩行速度,歩幅,歩行率に有意差は認められなかった。角度データは,革靴着用時の立脚初期足関節底屈変化量および膝関節屈曲変化量が有意に増加した。関節モーメントデータは,革靴着用時の立脚初期足関節背屈モーメント最大値および膝関節伸展モーメント最大値が有意に増大した。関節パワーデータは,革靴着用時の立脚初期足関節底屈における負のパワー最大値および膝関節屈曲における負のパワー最大値が有意に増大した。その他,有意差は認められなかった。
【結論】
立脚初期の衝撃吸収および荷重応答は,下肢各関節の作用により行われる。本研究の結果,革靴着用時では立脚初期足関節底屈変化量および膝関節屈曲変化量が増加する様態に対しブレーキをかけるため,足関節背屈筋群および膝関節伸展筋群による遠心性収縮活動が増大することが推測された。これらのことから,革靴着用が立脚初期における足関節および膝関節の力学的負荷を増大させる可能性が示唆された。