[P-KS-19-3] 指尖への末梢電気刺激が一次体性感覚野の活動性に及ぼす影響
Keywords:末梢電気刺激, 刺激強度, 体性感覚誘発電位
【目的】
ヒトの感覚機能を変化させる手法のひとつに末梢電気刺激(PES)がある。その効果として刺激した指尖の2点識別覚を向上させることが分かっている(Schlieper & Dinse, 2012)。また,このPESの効果は刺激強度に依存することが明らかになっており,刺激強度が強いほど2点識別覚が向上する。この効果には一次体性感覚野の活動性増強が関与していると考えられているが,十分に検証されていない。本研究では,体性感覚誘発電位(SEP)を用いて,PESが一次体性感覚野の活動性に及ぼす影響を検証することを目的としている。
【方法】
対象は健常成人18名(男性8名,女性10名)とした。PESは右示指末端部に対して,20 Hzの刺激パルスを1秒on-5秒offの刺激サイクルで30分間与えた。刺激強度は痛みの生じない最大強度から0.1 mAを減算した強度(高強度PES)と刺激を知覚しはじめる強度に0.1 mAを加算した強度(低強度PES)の2条件とした。一次体性感覚野の活動性評価として,右正中神経を刺激することで生じるSEPをPES前後で記録・比較した。電極位置は国際10-20法に基づき,記録電極をC3',基準電極をFz,接地電極を右前腕とした。SEPを誘発するための電気刺激は刺激周波数を1.5 Hz,刺激強度を運動閾値の0.9倍とし,運動閾値は筋収縮が出現する強度とした。データ解析には,各測定時間において,N20とP25のpeak-to-peak値(N20/P25),電気刺激開始前20msを基準としたN20とP25のbaseline-to-peak値を算出した。統計解析には刺激強度(高強度,低強度)と測定時間(刺激前後)を要因とした二元配置分散分析を行った後,事後検定として,Tukey法を実施した。有意水準はいずれも5%とした。
【結果】
二元配置分散分析の結果,N20/P25では測定時間に主効果を認め,P25では刺激時間と測定時間の間に交互作用を認めた。一方,N20では主効果および交互作用を認めなかった。N20/P25において,高強度PESでは刺激前が10.8±5.4 μV,刺激後が12.3±6.5 μVであり,刺激後に有意に増大した。また,低強度PESでも刺激前が11.0±5.6 μV,刺激後が12.0±6.3 μVであり,刺激後に有意に増大した。P25において,高強度PESでは刺激前が6.8±3.5 μV,刺激後が8.3±4.9 μVであり,刺激後に有意に増大した。しかし,低強度PESでは刺激前が7.4±3.9 μV,刺激後が7.4±5.4 μVであり,刺激前後で有意な変化は認められなかった。
【結論】
いずれのPESでも一次体性感覚野の活動性増大が生じ,高強度PESでは主に1野の活動性が増大している可能性が示唆された。
ヒトの感覚機能を変化させる手法のひとつに末梢電気刺激(PES)がある。その効果として刺激した指尖の2点識別覚を向上させることが分かっている(Schlieper & Dinse, 2012)。また,このPESの効果は刺激強度に依存することが明らかになっており,刺激強度が強いほど2点識別覚が向上する。この効果には一次体性感覚野の活動性増強が関与していると考えられているが,十分に検証されていない。本研究では,体性感覚誘発電位(SEP)を用いて,PESが一次体性感覚野の活動性に及ぼす影響を検証することを目的としている。
【方法】
対象は健常成人18名(男性8名,女性10名)とした。PESは右示指末端部に対して,20 Hzの刺激パルスを1秒on-5秒offの刺激サイクルで30分間与えた。刺激強度は痛みの生じない最大強度から0.1 mAを減算した強度(高強度PES)と刺激を知覚しはじめる強度に0.1 mAを加算した強度(低強度PES)の2条件とした。一次体性感覚野の活動性評価として,右正中神経を刺激することで生じるSEPをPES前後で記録・比較した。電極位置は国際10-20法に基づき,記録電極をC3',基準電極をFz,接地電極を右前腕とした。SEPを誘発するための電気刺激は刺激周波数を1.5 Hz,刺激強度を運動閾値の0.9倍とし,運動閾値は筋収縮が出現する強度とした。データ解析には,各測定時間において,N20とP25のpeak-to-peak値(N20/P25),電気刺激開始前20msを基準としたN20とP25のbaseline-to-peak値を算出した。統計解析には刺激強度(高強度,低強度)と測定時間(刺激前後)を要因とした二元配置分散分析を行った後,事後検定として,Tukey法を実施した。有意水準はいずれも5%とした。
【結果】
二元配置分散分析の結果,N20/P25では測定時間に主効果を認め,P25では刺激時間と測定時間の間に交互作用を認めた。一方,N20では主効果および交互作用を認めなかった。N20/P25において,高強度PESでは刺激前が10.8±5.4 μV,刺激後が12.3±6.5 μVであり,刺激後に有意に増大した。また,低強度PESでも刺激前が11.0±5.6 μV,刺激後が12.0±6.3 μVであり,刺激後に有意に増大した。P25において,高強度PESでは刺激前が6.8±3.5 μV,刺激後が8.3±4.9 μVであり,刺激後に有意に増大した。しかし,低強度PESでは刺激前が7.4±3.9 μV,刺激後が7.4±5.4 μVであり,刺激前後で有意な変化は認められなかった。
【結論】
いずれのPESでも一次体性感覚野の活動性増大が生じ,高強度PESでは主に1野の活動性が増大している可能性が示唆された。