[P-KS-19-4] 体性感覚刺激の刺激列が皮質脊髄路の興奮性に及ぼす影響
Keywords:電気刺激, 触覚刺激, 経頭蓋磁気刺激
【はじめに,目的】
体性感覚刺激である電気刺激や機械的触覚刺激を示指先端に与えることにより,刺激から20-30 ms後に大脳皮質一次体性感覚野が著明に活動し,両刺激によって誘発される皮質活動パターンは類似している(Onishi, et al., 2013)。一方,末梢神経を一定時間電気刺激することにより皮質脊髄路の興奮性は増大するが(Chipchase, et al., 2011),示指先端に単純な機械的触覚刺激を与えることにより皮質脊髄路の興奮性は減弱する(小島,他。第51回日本理学療法学術大会)。このように電気刺激と機械的触覚刺激による皮質反応は部分的に異なっていると推察できる。そこで本研究では,一定時間の反復的な体性感覚刺激が皮質脊髄路の興奮性に及ぼす効果を詳細に検討するために,電気刺激または機械的触覚刺激の刺激列が皮質脊髄路の興奮性に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は健常成人10名(24.7±3.5歳)であった。皮質脊髄路興奮性の指標には,経頭蓋磁気刺激(TMS)により誘発される運動誘発電位(MEP)を用いた。TMSの刺激部位は左一次運動野手指領域とし,磁気刺激強度は,右第一背側骨間筋より1 mVのMEPが誘発される強度とした。体性感覚刺激には電気刺激および機械的触覚刺激の2種類を用い,刺激部位は右示指先端とした。電気刺激はring電極を用い,刺激強度は感覚閾値の3倍とした。機械的触覚刺激は点字様の刺激ピンを4ピン使用し,ピン突出時間は1 msとした。各体性感覚刺激の刺激列は4条件(1発,2発,3発,4発)とし,連発刺激の刺激間隔は50 msとした。各刺激列の最終刺激とTMSの刺激間隔は27 ms(電気刺激時)および30 ms(触覚刺激時)に設定し,TMS単発を含めた各5条件(電気刺激4条件または機械的触覚刺激4条件)の刺激をランダムに行い,各15波形のMEPを記録した。データ解析は,MEP振幅値として15波形の加算平均波形よりpeak-to-peak値を算出した。統計処理には,反復測定二元配置分散分析(刺激の種類×刺激列)後,事後検定としてDunnett法を用い,有意水準は5%とした。
【結果】
反復測定二元配置分散分析の結果,両要因の主効果および交互作用を認めた。電気刺激時のMEP振幅値(mean±SEM)は,0.96±0.07 mV(TMS単発),0.53±0.09 mV(1発),0.70±0.09 mV(2発),0.48±0.09 mV(3発),0.59±0.10 mV(4発)となり,TMS単発時に比べ全ての刺激列において有意に小さな値を示した(p<0.01)。一方,触覚刺激時のMEP振幅値は,0.96±0.06 mV(TMS単発),0.70±0.08 mV(1発),1.08±0.17 mV(2発),1.06±0.10 mV(3発),1.20±0.13 mV(4発)となり,TMS単発時に比べ有意な差は認められなかった。
【結論】
電気刺激時には全ての刺激列において皮質脊髄路の興奮性が低下したが,触覚刺激時には皮質脊髄路の興奮性変動が認められなかった。この結果から,電気刺激と触覚刺激による介入効果は異なる神経回路が関与する可能性が示唆された。
体性感覚刺激である電気刺激や機械的触覚刺激を示指先端に与えることにより,刺激から20-30 ms後に大脳皮質一次体性感覚野が著明に活動し,両刺激によって誘発される皮質活動パターンは類似している(Onishi, et al., 2013)。一方,末梢神経を一定時間電気刺激することにより皮質脊髄路の興奮性は増大するが(Chipchase, et al., 2011),示指先端に単純な機械的触覚刺激を与えることにより皮質脊髄路の興奮性は減弱する(小島,他。第51回日本理学療法学術大会)。このように電気刺激と機械的触覚刺激による皮質反応は部分的に異なっていると推察できる。そこで本研究では,一定時間の反復的な体性感覚刺激が皮質脊髄路の興奮性に及ぼす効果を詳細に検討するために,電気刺激または機械的触覚刺激の刺激列が皮質脊髄路の興奮性に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は健常成人10名(24.7±3.5歳)であった。皮質脊髄路興奮性の指標には,経頭蓋磁気刺激(TMS)により誘発される運動誘発電位(MEP)を用いた。TMSの刺激部位は左一次運動野手指領域とし,磁気刺激強度は,右第一背側骨間筋より1 mVのMEPが誘発される強度とした。体性感覚刺激には電気刺激および機械的触覚刺激の2種類を用い,刺激部位は右示指先端とした。電気刺激はring電極を用い,刺激強度は感覚閾値の3倍とした。機械的触覚刺激は点字様の刺激ピンを4ピン使用し,ピン突出時間は1 msとした。各体性感覚刺激の刺激列は4条件(1発,2発,3発,4発)とし,連発刺激の刺激間隔は50 msとした。各刺激列の最終刺激とTMSの刺激間隔は27 ms(電気刺激時)および30 ms(触覚刺激時)に設定し,TMS単発を含めた各5条件(電気刺激4条件または機械的触覚刺激4条件)の刺激をランダムに行い,各15波形のMEPを記録した。データ解析は,MEP振幅値として15波形の加算平均波形よりpeak-to-peak値を算出した。統計処理には,反復測定二元配置分散分析(刺激の種類×刺激列)後,事後検定としてDunnett法を用い,有意水準は5%とした。
【結果】
反復測定二元配置分散分析の結果,両要因の主効果および交互作用を認めた。電気刺激時のMEP振幅値(mean±SEM)は,0.96±0.07 mV(TMS単発),0.53±0.09 mV(1発),0.70±0.09 mV(2発),0.48±0.09 mV(3発),0.59±0.10 mV(4発)となり,TMS単発時に比べ全ての刺激列において有意に小さな値を示した(p<0.01)。一方,触覚刺激時のMEP振幅値は,0.96±0.06 mV(TMS単発),0.70±0.08 mV(1発),1.08±0.17 mV(2発),1.06±0.10 mV(3発),1.20±0.13 mV(4発)となり,TMS単発時に比べ有意な差は認められなかった。
【結論】
電気刺激時には全ての刺激列において皮質脊髄路の興奮性が低下したが,触覚刺激時には皮質脊髄路の興奮性変動が認められなかった。この結果から,電気刺激と触覚刺激による介入効果は異なる神経回路が関与する可能性が示唆された。