The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) » ポスター発表

[P-KS-22] ポスター(基礎)P22

Fri. May 12, 2017 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT)

[P-KS-22-2] 物品運搬課題の有無が座位前方リーチ動作の運動学的特性に及ぼす影響

橋立 博幸, 藤澤 祐基, 八並 光信, 齋藤 明彦 (杏林大学保健学部理学療法学科)

Keywords:座位前方リーチ, 物品運搬課題, 運動学的分析

【はじめに,目的】日常生活では物品を操作するためにリーチ動作を実施することが多く,座位前方リーチ動作は日常生活上必要不可欠な動作である。これまでに単一課題としての座位前方リーチ動作の特性について検討されてきたが,物品操作課題を伴う座位前方リーチ動作におけるリーチ距離およびリーチ時の運動学的特性については十分に検証されていない。本研究では,物品運搬課題の有無が座位前方リーチの運動学的特性に及ぼす影響について検討することを目的とした。

【方法】対象は健康な若年男性36人(年齢21.1±0.9歳,身長171.4±4.0cm,体重65.4±8.1kg,BMI22.3±2.6kg/m2)であり,座位での前方最大右上肢リーチを,課題付加のない通常条件と物品運搬課題付加条件にて実施した。物品運搬課題付加条件では約9割の水を入れた持ち手の付いたコップの持ち手を把持した状態で水を溢さないようにリーチ動作を行った。測定項目は,リーチ距離,上前腸骨棘移動距離,肩峰と外果のなす角度(A-T角度),足圧中心前後移動距離(COP前後移動距離)とした。

【結果】物品運搬課題付加条件のリーチ距離(452.5±77.2mm),A-T角度(51.1±11.3deg),COP前後移動距離(185.7±38.0mm)は,通常条件のリーチ距離(472.5±74.1mm),A-T角度(54.9±10.0deg),COP前後移動距離(199.8±39.3mm)と比べてそれぞれ有意な低値を示した。上前腸骨棘移動距離は通常条件(93.5±31.4mm)と物品運搬課題付加条件(94.2±29.2mm)で有意差を認めなかった。各条件において,リーチ距離と他の指標とのPearson相関係数を算出した結果,リーチ距離とA-T角度,COP前後移動距離との間に有意な相関が認められた。さらに,各条件において,リーチ距離を目的変数,A-T角度およびCOP前後移動距離を説明変数,身長を調整変数とした重回帰分析を実施した結果,各条件ともにA-T角度,COP距離がリーチ距離に対する有意な関連項目として抽出された(自由度調整済決定係数:通常条件0.782,物品運搬課題付加条件0.826)。

【結論】物品運搬課題付加条件での座位前方リーチ動作では通常条件に比べてリーチ距離,体幹前傾角度,重心前方移動距離が有意に低い値を示したことから,物品運搬課題を付加することによって姿勢制御への注意配分量の減少を引き起こし,安定性限界の狭小化とともに体幹前傾角度の減少と重心前方移動の制限が生じた結果,座位リーチ距離が減少したと推察された。また,物品運搬課題付加の有無にかかわらず,体幹前傾運動と重心前方移動は座位前方リーチ距離に対する重要な関連因子であると考えられた。