[P-KS-23-1] 胸郭形状の非対称性に対する分析における検討
胸郭形状の非対称性の強さと換気能との関係
Keywords:胸郭形状, 非対称性, 換気能
【はじめに,目的】
我々の研究グループでは,健常人を対象とした研究にて胸郭形状の非対称性の存在が,呼吸器および運動器の機能に及ぼす影響について様々な視点から検討している。その結果,胸郭形状の非対称性の存在は呼吸器や運動器の機能と密接な関係があることを見出し,非対称性の強さが各器官の機能悪化につながることを提言してきた。これらの事象に加え我々は,胸郭形状に非対称性が形成されるメカニズムやその環境下での胸郭運動の特徴について,さらに検討を進める必要があると考える。
そこで本研究では,胸郭形状の非対称性に対する分析,また胸郭形状の非対称性の強さと換気能との関係性を検討することを目的とした。
【方法】
対象は健常成人男性20名(平均年齢23.8±3.0歳)とした。測定肢位は座位とし,課題動作は安静呼吸とした,胸郭形状は3次元動作解析装置(VICON-MX,VICON社),換気能は呼気ガス分析装置(AS-300,ミナト医科学社)を用い,それぞれの機器を同期させ実施した。胸郭形状は上位胸郭と下位胸郭を測定部位とし,貼付した赤外線マーカーにて,胸郭前後径の左右差を検討した。上位胸郭は第3胸肋関節レベルの胸骨中央部(A点),A点の左右水平線上に各3点,A点を背面に投影した棘突起上の点(B点)とした。下位胸郭は剣状突起(C点),C点を背面に投影した棘突起上の点(D点),D点の左右水平線上に各3点,計16点とした。また,呼気ガス分析装置にて一回換気量,呼吸数,分時換気量を測定した。測定は3分間行い,開始1分後から1分間のデータにおける平均値を代表値とした。
統計学的解析は上位胸郭,下位胸郭の左右比較をそれぞれ対応のないt検定を用いて検討した。また上位胸郭と下位胸郭の左右差の関係性,下位胸郭の左右差と換気能との関係性をPearsonの積率相関係数用いて検討した。なお,解析には統計ソフトウェアSPSS(IBM社製)を使用し,有意水準はそれぞれ5%未満とした。
【結果】
上位胸郭は左側が右側と比べ有意に大きく(p<0.01),下位胸郭は左側が右側と比べ有意に小さかった(p<0.01)。上位胸郭の左右比率差が大きい例で,下位胸郭の左右比率差も大きい傾向が示された(r=0.65)。また,下位胸郭左右比率差と分時換気量は負の相関を示した(r=-0.50)。
【結論】
本研究でも,胸郭形状の非対称性の存在が確認できた。さらに一側の上位胸郭と対側の下位胸郭が同一方向への形状を呈していることがわかった。また,上位胸郭の非対称性が強い例では,下位胸郭の非対称性も強いことが示された。つまり,胸郭形状の非対称性が形成されるメカニズムとして対角線の関係にて連鎖していることが示唆された。また,下位胸郭の非対称性が強い例において,換気能の低下がみられた。下位胸郭と定義したレベルでは横隔膜の付着部との関係が強い。そのため,非対称性が強くなることで横隔膜の筋長が崩れ,換気能に影響したと考えられる。
我々の研究グループでは,健常人を対象とした研究にて胸郭形状の非対称性の存在が,呼吸器および運動器の機能に及ぼす影響について様々な視点から検討している。その結果,胸郭形状の非対称性の存在は呼吸器や運動器の機能と密接な関係があることを見出し,非対称性の強さが各器官の機能悪化につながることを提言してきた。これらの事象に加え我々は,胸郭形状に非対称性が形成されるメカニズムやその環境下での胸郭運動の特徴について,さらに検討を進める必要があると考える。
そこで本研究では,胸郭形状の非対称性に対する分析,また胸郭形状の非対称性の強さと換気能との関係性を検討することを目的とした。
【方法】
対象は健常成人男性20名(平均年齢23.8±3.0歳)とした。測定肢位は座位とし,課題動作は安静呼吸とした,胸郭形状は3次元動作解析装置(VICON-MX,VICON社),換気能は呼気ガス分析装置(AS-300,ミナト医科学社)を用い,それぞれの機器を同期させ実施した。胸郭形状は上位胸郭と下位胸郭を測定部位とし,貼付した赤外線マーカーにて,胸郭前後径の左右差を検討した。上位胸郭は第3胸肋関節レベルの胸骨中央部(A点),A点の左右水平線上に各3点,A点を背面に投影した棘突起上の点(B点)とした。下位胸郭は剣状突起(C点),C点を背面に投影した棘突起上の点(D点),D点の左右水平線上に各3点,計16点とした。また,呼気ガス分析装置にて一回換気量,呼吸数,分時換気量を測定した。測定は3分間行い,開始1分後から1分間のデータにおける平均値を代表値とした。
統計学的解析は上位胸郭,下位胸郭の左右比較をそれぞれ対応のないt検定を用いて検討した。また上位胸郭と下位胸郭の左右差の関係性,下位胸郭の左右差と換気能との関係性をPearsonの積率相関係数用いて検討した。なお,解析には統計ソフトウェアSPSS(IBM社製)を使用し,有意水準はそれぞれ5%未満とした。
【結果】
上位胸郭は左側が右側と比べ有意に大きく(p<0.01),下位胸郭は左側が右側と比べ有意に小さかった(p<0.01)。上位胸郭の左右比率差が大きい例で,下位胸郭の左右比率差も大きい傾向が示された(r=0.65)。また,下位胸郭左右比率差と分時換気量は負の相関を示した(r=-0.50)。
【結論】
本研究でも,胸郭形状の非対称性の存在が確認できた。さらに一側の上位胸郭と対側の下位胸郭が同一方向への形状を呈していることがわかった。また,上位胸郭の非対称性が強い例では,下位胸郭の非対称性も強いことが示された。つまり,胸郭形状の非対称性が形成されるメカニズムとして対角線の関係にて連鎖していることが示唆された。また,下位胸郭の非対称性が強い例において,換気能の低下がみられた。下位胸郭と定義したレベルでは横隔膜の付着部との関係が強い。そのため,非対称性が強くなることで横隔膜の筋長が崩れ,換気能に影響したと考えられる。