The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) » ポスター発表

[P-KS-24] ポスター(基礎)P24

Sat. May 13, 2017 12:50 PM - 1:50 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT)

[P-KS-24-1] 立位時の骨盤アライメントおよび非術側の膝内反変形は人工膝関節置換術後における膝関節屈曲拘縮の原因となる

南角 学1, 濱田 涼太1, 池口 良輔1,2, 伊藤 宣2, 布留 守敏2, 栗山 新一2, 中村 伸一郎2, 松田 秀一2 (1.京都大学医学部附属病院リハビリテーション部, 2.京都大学医学部整形外科)

Keywords:人工膝関節置換術, 内反変形, 骨盤アライメント

【はじめに,目的】人工膝関節置換術(以下,TKA)後における膝関節屈曲拘縮は歩行能力の低下を招くことから,術後の膝関節伸展の可動域(以下,ROM)に対する評価や介入は重要である。TKA術後の理学療法において,効率的に膝関節伸展ROMの改善に取り組むためには,術後の膝関節屈曲拘縮の原因となる因子を明確にすることが必要であると考えられる。しかし,TKA術後の膝関節屈曲拘縮の原因となる要因を詳細に検討した報告は少なく,不明な点が多い。本研究の目的は,TKA術後1年における膝関節屈曲拘縮の有無に関連する因子を術前の評価項目から検討することである。

【方法】内側型の両側変形性膝関節症により片側TKAを施行された53名を対象とした(反対側の手術は未実施)。術前の測定項目として,両側の膝関節屈曲・伸展のROM,膝関節屈曲・伸展筋力と脚伸展筋力,Timed up and go testを計測した。また,当院整形外科医の処方により撮影された術前の立位レントゲン画像を用いて,両側の内反角(大腿骨頭-膝中心を結ぶ線と脛骨の骨軸と平行で地面と垂直な線)と骨盤腔の縦径からKitajimaらの回帰式を用いて骨盤前傾角度を算出した。さらに,TKA術後1年での術側の膝関節伸展のROMを測定し,伸展角度が0̊であった症例(以下,A群)と5̊以上の伸展制限を認めた症例(B群)の2群に分類した。統計は対応のないt検定,ロジスティック回帰分析を行った。

【結果】両群の割合はA群28名(52.8%),B群25名(47.2%)であり,年齢,性別,BMIについては両群間で有意差を認めなかった。非術側の内反角はA群174.0±3.8°,B群169.5±4.7°であり,B群がA群よりも有意に低い値を示した。骨盤前傾角については,A群27.7±5.9°,B群18.2±5.3°であり,B群がA群よりも有意に低い値を示した。一方,その他の評価項目については,両群間で有意差を認めなかった。さらに,ロジスティック回帰分析より,術後1年の膝関節の伸展制限を規定する因子として,術前の骨盤前傾角度(オッズ比1.31,95%信頼区間1.14-1.51)と非術側の膝内反角(オッズ比0.97,95%信頼区間0.95-0.97)が有意な項目として選択された。

【結語】本研究の結果より,術前の立位時に非術側の膝関節の内反変形が大きく,骨盤後傾位での立位姿勢を呈している症例では,TKA術後1年では膝関節屈曲拘縮が残存しやすいことが明らかとなった。非術側の内反変形が大きい場合では,術後に非術側が術側と比較して下肢長が短くなるために,術側の膝関節を屈曲位にして対応するために膝関節屈曲拘縮が起こりやすいと考えられた。また,骨盤後傾位での立位姿勢を呈している症例では,ハムストリングスが短縮位していることから,膝関節屈曲拘縮が生じやすいと考えられた。以上から,TKA術後の膝関節屈曲拘縮の改善を効率的に図っていくためには,これらの結果を考慮した理学療法プログラムが必要であると考えられた。