第52回日本理学療法学術大会

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日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) » ポスター発表

[P-KS-24] ポスター(基礎)P24

2017年5月13日(土) 12:50 〜 13:50 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT)

[P-KS-24-3] 膝関節と脊柱のアライメントが足圧中心動揺に及ぼす影響

岡田 裕太1, 石井 達也1, 篠田 祐介1, 濱野 祐樹1, 白石 和也2 (1.上尾中央総合病院, 2.上尾中央医療専門学校)

キーワード:変形性関節症, 身体アライメント, 足圧中心動揺

【はじめに,目的】

臨床では,膝関節と脊柱に変形性関節症(以下OA)を併発している者が散見される。OA患者では姿勢制御能力が低下しているため,それらのOAが姿勢制御能力に及ぼす影響を理解することは重要である。そこで,本研究では膝疾患患者を対象に膝関節と脊柱のアライメントの関係を確認し,それらの身体アライメントが足圧中心(以下COP)動揺に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。


【方法】

対象は,2015年12月から2016年3月までの間に当院の外来リハビリテーションに通院された膝疾患患者とし,荷重時痛が強い者や神経疾患を呈している者は除外とした。身体アライメントの計測には,膝関節アライメントにFTAを用い,脊柱アライメントには脊柱傾斜角,骨盤傾斜角,後弯指数を用いた。姿勢制御能力の計測には重心動揺計を用い,COPの総軌跡長および前後方向と左右方向の速度と実効値を用いた。また,立位姿勢時のCOP位置より前後位置割合と左右荷重割合を算出した。統計処理には,膝関節と脊柱のアライメントの関係およびそれらの身体アライメントとCOPの位置と動揺の関連を検討するためにPearsonの相関係数を用いた。


【結果】

対象者は57名であり,身体アライメントはFTAが178.9±3.6度,脊柱傾斜角が7.3±6.5度,骨盤傾斜角が10.7±6.3度,後弯指数が11.6±2.7であった。それらの身体アライメントの間に有意な相関は認められなかった。COP位置において,前後位置割合は39.5±8.0%であり,左右荷重割合は3.6±10.5%であったが,身体アライメントとの間において有意な相関は認められなかった。COP動揺は,総軌跡長が455.5±167.0mmであり,速度は前後方向が11.0±3.9m/s,左右方向が8.2±3.6m/s,実効値は前後方向が7.5±2.7,左右方向が5.3±2.3であった。身体アライメントとCOP動揺の関連において,脊柱傾斜角に対して総軌跡長と前後方向の速度に有意な正の相関が認められた。また,骨盤傾斜角に対して前後方向の実効値に有意な負の相関が認められた。しかし,FTAにおいてはCOP動揺との間に有意な相関は認められなかった。


【結論】

本研究ではOAが頻発する膝関節と脊柱に着目し,膝関節と脊柱のアライメントの関係およびそれらの身体アライメントと立位姿勢におけるCOPの位置と動揺の関連を検討した。OA者では,関節構造体の破綻や姿勢安定性が優先されていた可能性が考えられ,立位姿勢時の身体アライメントにおいて運動連鎖は生じていなかった。

身体アライメントとCOP動揺の関連において,脊柱傾斜角や骨盤傾斜角はCOPの前後方向動揺との間に有意な相関が認められ,転倒の危険因子になることが示唆された。しかし,安静時立位姿勢においてFTAはCOP動揺に影響を及ぼしていなかった。OA者では,対照群と比較して姿勢制御能力が低下しており,転倒リスクが高いとされている。そのため,姿勢制御能力を適切に評価することが転倒予防に重要であると考える。