[P-KS-24-4] 変形性膝関節症患者における床からの立ち上がり動作
Keywords:変形性膝関節症, 立ち上がり, kneeling
【はじめに,目的】
変形性膝関節症(以下,膝OA)は高齢者に特徴的な疾患であり,症状が進行すると基本動作を制限する。日本人にとって和式生活では床からの立ち上がり動作が重要であり,床からの立ち上がり動作には評価や指導が必要と考える。しかし,膝OA患者における床からの立ち上がり動作を調査した報告は殆ど行われておらず,統一した見解が確立されていない。そこで本研究の目的は,膝OA患者における床からの立ち上がり動作の特徴を把握する事である。
【方法】
対象は当院に入院した膝OA患者19例とした。内訳は男性9例,女性10例,平均年齢70±10歳,平均身長158.6±9.4cm,平均体重64.7±9.1Kgであった。床からの立ち上がり動作の計測は,患者に動作を指示しカメラにて動画を記録し,測定は一回とし患者の正面から撮影した。動作パターンは健常高齢者を対象とした星らの報告に従いA:Half-Kneeling pattern(片膝を立ててから立ち上がる),B:Plantigrade pattern(高這い位を経由して立ち上がる),C:Squatting pattern(しゃがみ位から立ち上がる)に分類し,そのどれにも分類されなかったパターンをDとした。統計学的検討では,各動作パターンを実施する頻度に差が有るかどうかを比較する為にχ2適合度検定を行った。解析ソフトはSPSS22を用い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
Aのパターンは9例,Bのパターンは3例,Cのパターンは2例,Dのパターンは5例存在したが,A,B,C,D各動作パターンの頻度に有意差を認めなかった。しかし,19例中19例が動作遂行可能であり,AとDのパターンをとる傾向が多かった。又,Aのパターンの中に膝OA側を接地しない例が5例,接地する例が4例存在し,膝OA側を接地しないパターンは全体で11例(57.9%)存在した。
【結論】
健常高齢者を対象とした星らの報告では3種類の床からの立ち上がり動作パターンが存在すると述べられているが,本研究ではそれらとは異なる両膝をついた後立ち上がるDのパターンが存在した。これは,健常高齢者とは違う膝OA患者に特徴的な動作パターンであった。又,4種類の全動作パターンにおいて,膝OA側を接地しない例が半数以上存在した。これは,膝OA患者における床からの立ち上がり動作では,膝OA側の接地を回避する動作パターンをとる傾向にあると考えられる。床からの立ち上がり動作は多関節の複合運動である為,健側下肢や上肢で膝OA側を代償して立ち上がる事で膝OA側下肢の使用頻度を少なくしていると推察される。加えて,床からの立ち上がり動作はほぼ全例でADLにおいて必要であり動作指導が必要になるが,膝OA患者における床からの立ち上がり動作と疼痛や筋力との関連についての検討は今後の課題である。本研究は,膝OA患者における床からの立ち上がり動作パターンの傾向を示したものであり,理学療法実施時の指標となる報告として意義がある。
変形性膝関節症(以下,膝OA)は高齢者に特徴的な疾患であり,症状が進行すると基本動作を制限する。日本人にとって和式生活では床からの立ち上がり動作が重要であり,床からの立ち上がり動作には評価や指導が必要と考える。しかし,膝OA患者における床からの立ち上がり動作を調査した報告は殆ど行われておらず,統一した見解が確立されていない。そこで本研究の目的は,膝OA患者における床からの立ち上がり動作の特徴を把握する事である。
【方法】
対象は当院に入院した膝OA患者19例とした。内訳は男性9例,女性10例,平均年齢70±10歳,平均身長158.6±9.4cm,平均体重64.7±9.1Kgであった。床からの立ち上がり動作の計測は,患者に動作を指示しカメラにて動画を記録し,測定は一回とし患者の正面から撮影した。動作パターンは健常高齢者を対象とした星らの報告に従いA:Half-Kneeling pattern(片膝を立ててから立ち上がる),B:Plantigrade pattern(高這い位を経由して立ち上がる),C:Squatting pattern(しゃがみ位から立ち上がる)に分類し,そのどれにも分類されなかったパターンをDとした。統計学的検討では,各動作パターンを実施する頻度に差が有るかどうかを比較する為にχ2適合度検定を行った。解析ソフトはSPSS22を用い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
Aのパターンは9例,Bのパターンは3例,Cのパターンは2例,Dのパターンは5例存在したが,A,B,C,D各動作パターンの頻度に有意差を認めなかった。しかし,19例中19例が動作遂行可能であり,AとDのパターンをとる傾向が多かった。又,Aのパターンの中に膝OA側を接地しない例が5例,接地する例が4例存在し,膝OA側を接地しないパターンは全体で11例(57.9%)存在した。
【結論】
健常高齢者を対象とした星らの報告では3種類の床からの立ち上がり動作パターンが存在すると述べられているが,本研究ではそれらとは異なる両膝をついた後立ち上がるDのパターンが存在した。これは,健常高齢者とは違う膝OA患者に特徴的な動作パターンであった。又,4種類の全動作パターンにおいて,膝OA側を接地しない例が半数以上存在した。これは,膝OA患者における床からの立ち上がり動作では,膝OA側の接地を回避する動作パターンをとる傾向にあると考えられる。床からの立ち上がり動作は多関節の複合運動である為,健側下肢や上肢で膝OA側を代償して立ち上がる事で膝OA側下肢の使用頻度を少なくしていると推察される。加えて,床からの立ち上がり動作はほぼ全例でADLにおいて必要であり動作指導が必要になるが,膝OA患者における床からの立ち上がり動作と疼痛や筋力との関連についての検討は今後の課題である。本研究は,膝OA患者における床からの立ち上がり動作パターンの傾向を示したものであり,理学療法実施時の指標となる報告として意義がある。