[P-KS-26-5] スタティックストレッチング中に行う等尺性収縮が筋張力に与える影響に関する検討
Keywords:スタティックストレッチング, ハムストリングス, 筋張力
【はじめに,目的】
スタティックストレッチング(static stratching:以下SST)は,関節可動域(range of motion:以下ROM)増大を目的に行われる代表的な運動療法のひとつであり,臨床場面では様々なSSTの方法が用いられている。そのなかでも等尺性収縮を併用したSSTは,骨格筋の収縮後に得られる弛緩作用により,効率的に骨格筋を伸張する方法として知られている。しかしながら,等尺性収縮後に生じる筋弛緩状態について,骨格筋の力学特性(粘弾性)や静止張力などの指標を用いて検討している報告は少ない。そこで本研究では,SST中に行う等尺性収縮が骨格筋の力学特性や静止張力に与える影響について検討した。
【方法】
対象は健常大学生15名(男性7名,女性8名,平均年齢21.3±1.0歳)の右ハムストリングスとし,介入条件はSSTを単独で行うSST条件とSST中に等尺性収縮を行うコントラクション(contraction:以下CONT)条件の2条件を設定し,24時間以上の間隔を空けて実施した。すべての被験者は,股関節および膝関節を約100°屈曲した座位にて,等速性運動機器(BTE社製PRIMUS RS)を用いて実験を行った。ストレッチング強度は,大腿後面に痛みの出る直前の膝関節伸展角度とし,ストレッチング時間は190秒間とした。なお,CONT条件では,最大等尺性筋力の75%で10秒間の等尺性収縮を40秒毎に計3回実施した。評価指標は,190秒間のストレッチング前後にstiffnessと最大動的トルク,および膝伸展ROM,190秒間のストレッチング開始直後,および計3回の等尺性収縮終了直後から5秒後の静的トルクを測定した(計4回)。なお,stiffnessと最大動的トルクは,膝関節最大伸展角度まで5 deg/secの角速度で他動的に伸展させた時のトルク―角度曲線より算出した。統計学的解析には,対応のあるt検定とWilcoxonの符号順位和検定を用い,有意水準を5%未満とした。
【結果】
ROMとstiffnessは,2条件とも介入によって有意な変化を認めたが,条件による違いは認めなかった。最大動的トルクは,介入や条件の違いによる有意な変化を認めなかった。静的トルクは,CONT条件のみで1回目と比較して4回目に有意な減少を認めた。また,CONT条件4回目の静的トルクは,SST条件4回目の値と比較して有意に低値を示した。
【結論】
本研究結果より,SST中に3回以上の等尺性収縮を繰り返し行うことで,静的トルクは低下することが明らかとなった。しかしながら,stiffnessと最大動的トルク,および膝伸展ROMに関しては,等尺性収縮を併用しても効果に違いを認めなかった。このことから,SSTに等尺性収縮を併用することで筋張力の低下は得られるが,骨格筋の力学特性までは変化させることができないため,併用による特異的なROM改善効果は得られないことが示唆された。この結果は,臨床場面におけるSSTに等尺性収縮を併用する介入根拠や方法を検討するための一助となると考える。
スタティックストレッチング(static stratching:以下SST)は,関節可動域(range of motion:以下ROM)増大を目的に行われる代表的な運動療法のひとつであり,臨床場面では様々なSSTの方法が用いられている。そのなかでも等尺性収縮を併用したSSTは,骨格筋の収縮後に得られる弛緩作用により,効率的に骨格筋を伸張する方法として知られている。しかしながら,等尺性収縮後に生じる筋弛緩状態について,骨格筋の力学特性(粘弾性)や静止張力などの指標を用いて検討している報告は少ない。そこで本研究では,SST中に行う等尺性収縮が骨格筋の力学特性や静止張力に与える影響について検討した。
【方法】
対象は健常大学生15名(男性7名,女性8名,平均年齢21.3±1.0歳)の右ハムストリングスとし,介入条件はSSTを単独で行うSST条件とSST中に等尺性収縮を行うコントラクション(contraction:以下CONT)条件の2条件を設定し,24時間以上の間隔を空けて実施した。すべての被験者は,股関節および膝関節を約100°屈曲した座位にて,等速性運動機器(BTE社製PRIMUS RS)を用いて実験を行った。ストレッチング強度は,大腿後面に痛みの出る直前の膝関節伸展角度とし,ストレッチング時間は190秒間とした。なお,CONT条件では,最大等尺性筋力の75%で10秒間の等尺性収縮を40秒毎に計3回実施した。評価指標は,190秒間のストレッチング前後にstiffnessと最大動的トルク,および膝伸展ROM,190秒間のストレッチング開始直後,および計3回の等尺性収縮終了直後から5秒後の静的トルクを測定した(計4回)。なお,stiffnessと最大動的トルクは,膝関節最大伸展角度まで5 deg/secの角速度で他動的に伸展させた時のトルク―角度曲線より算出した。統計学的解析には,対応のあるt検定とWilcoxonの符号順位和検定を用い,有意水準を5%未満とした。
【結果】
ROMとstiffnessは,2条件とも介入によって有意な変化を認めたが,条件による違いは認めなかった。最大動的トルクは,介入や条件の違いによる有意な変化を認めなかった。静的トルクは,CONT条件のみで1回目と比較して4回目に有意な減少を認めた。また,CONT条件4回目の静的トルクは,SST条件4回目の値と比較して有意に低値を示した。
【結論】
本研究結果より,SST中に3回以上の等尺性収縮を繰り返し行うことで,静的トルクは低下することが明らかとなった。しかしながら,stiffnessと最大動的トルク,および膝伸展ROMに関しては,等尺性収縮を併用しても効果に違いを認めなかった。このことから,SSTに等尺性収縮を併用することで筋張力の低下は得られるが,骨格筋の力学特性までは変化させることができないため,併用による特異的なROM改善効果は得られないことが示唆された。この結果は,臨床場面におけるSSTに等尺性収縮を併用する介入根拠や方法を検討するための一助となると考える。