[P-KS-27-3] 慢性痛有訴者の中枢性疼痛抑制機能は運動の継続によって改善するか―conditioned pain modulationの解析による検討―
Keywords:conditioned pain modulation(CPM), 運動継続, 中枢性疼痛抑制機能
【はじめに,目的】線維筋痛症や変形性膝関節症,腰痛症といった慢性痛患者では,中枢性疼痛修飾系,特に疼痛抑制系の機能異常が指摘されている。そのため,慢性痛患者では,運動により機能障害の改善や社会復帰などを指標とした効果に関する報告はなされているが,疼痛抑制効果は得られにくいことが示唆されており,特に中枢性疼痛修飾系に対する効果についての報告は見受けられない。一方,近年,この中枢性疼痛抑制系の定量的評価指標としてconditioned pain modulation(CPM)が広く用いられている。CPMとは,痛みで痛みを抑制するDNIC(diffuse noxious inhibitory controls)現象を示し,下行性疼痛抑制系の機能を反映するといわれている。また我々はこれまでに日常生活における身体活動量が少ない者ではCPM機能が減弱していることを報告しており(城2016),身体活動性と中枢性疼痛抑制系には何らかの関係性があると推察される。そこで本研究は,定期的な運動介入による中枢性疼痛抑制系への影響についてCPMを用い検討した。
【方法】対象は健常者20名(男性10名,年齢20.6±1.4歳),と3ヶ月以上持続する慢性頚肩痛有訴者20名(男性10名,年齢20.6±1.1歳,疼痛強度visual analogue scale:VAS 31.9±22.2)とし,健常者,慢性頚肩痛有訴者を1週間に1回運動する単回群と5回運動する複数回群にそれぞれ10名ずつ振り分けた。運動は,50% heart rate reserve強度で20分間の下肢ペダリングとした。CPMは非利き手側手部を9~11℃の冷水に90秒間浸漬し,浸漬前・中に対側の僧帽筋,上腕二頭筋,大腿四頭筋の圧痛閾値(pressure pain threshold:PPT)を測定し,PPTの各変化量を測定値とした。測定は,1週間の運動介入前および終了翌日に行った。統計学的解析はWilcoxonの符号付き順位検定を用い,有意水準は5%とした。
【結果】健常者では両群とも全ての部位でCPMは変化しなかった。一方,慢性頚肩痛有訴者では,複数回群でのみ僧帽筋と大腿四頭筋のCPMが有意に増大した。
【結論】今回,健常者においては運動による中枢性疼痛抑制系への影響は認められなかった。健常者はそもそも中枢性疼痛抑制系の機能異常は生じていないと推察され,また,アスリートのような高強度の運動を高頻度で行っている人では逆に痛覚感受性が低下しているとの報告があるように,今回行った運動強度・頻度では健常レベルにある中枢性疼痛抑制機能をさらに向上させるには至らなかったと考えられる。一方,慢性頚肩痛有訴者においては5日間の運動の継続によりCPMの増大を認めた。動物実験より,5日間程度の運動の継続であっても内因性オピオイド鎮痛系が賦活され,脊髄後角の疼痛シグナル伝達を抑制するとの報告もされていることから,短期間であっても日々の活動性増大は中枢性疼痛抑制系に何らかの改善変化を与える可能性が示唆された。
【方法】対象は健常者20名(男性10名,年齢20.6±1.4歳),と3ヶ月以上持続する慢性頚肩痛有訴者20名(男性10名,年齢20.6±1.1歳,疼痛強度visual analogue scale:VAS 31.9±22.2)とし,健常者,慢性頚肩痛有訴者を1週間に1回運動する単回群と5回運動する複数回群にそれぞれ10名ずつ振り分けた。運動は,50% heart rate reserve強度で20分間の下肢ペダリングとした。CPMは非利き手側手部を9~11℃の冷水に90秒間浸漬し,浸漬前・中に対側の僧帽筋,上腕二頭筋,大腿四頭筋の圧痛閾値(pressure pain threshold:PPT)を測定し,PPTの各変化量を測定値とした。測定は,1週間の運動介入前および終了翌日に行った。統計学的解析はWilcoxonの符号付き順位検定を用い,有意水準は5%とした。
【結果】健常者では両群とも全ての部位でCPMは変化しなかった。一方,慢性頚肩痛有訴者では,複数回群でのみ僧帽筋と大腿四頭筋のCPMが有意に増大した。
【結論】今回,健常者においては運動による中枢性疼痛抑制系への影響は認められなかった。健常者はそもそも中枢性疼痛抑制系の機能異常は生じていないと推察され,また,アスリートのような高強度の運動を高頻度で行っている人では逆に痛覚感受性が低下しているとの報告があるように,今回行った運動強度・頻度では健常レベルにある中枢性疼痛抑制機能をさらに向上させるには至らなかったと考えられる。一方,慢性頚肩痛有訴者においては5日間の運動の継続によりCPMの増大を認めた。動物実験より,5日間程度の運動の継続であっても内因性オピオイド鎮痛系が賦活され,脊髄後角の疼痛シグナル伝達を抑制するとの報告もされていることから,短期間であっても日々の活動性増大は中枢性疼痛抑制系に何らかの改善変化を与える可能性が示唆された。