[P-KS-28-2] 除神経と圧迫によりラット踵部皮膚に形成された褥瘡様皮膚損傷に対し除圧を施した際の経時的変化
Keywords:創傷治癒, 動物モデル, 物理療法
【はじめに,目的】
褥瘡の形成とその回復のメカニズムを解明するためには,ヒトに近い状態の褥瘡を動物で再現する必要がある。ラットの両坐骨神経切断後に飼育方法を工夫すると,踵部皮膚に褥瘡様皮膚損傷を惹起することできる(長井ら,2011)。本皮膚損傷の形成過程や組織学的所見はヒトの褥瘡と類似している(近藤ら,2014;幅ら,2015)。本実験動物がヒトの褥瘡と同様の発症過程であるならば,ヒトの褥瘡と同様に除圧による回復も期待できる。よって本皮膚損傷形成後に除圧を施し,損傷皮膚の回復過程を明らかにしようと試みた。
【方法】
12週齢Wistar系雄性ラット100匹を用いて無処置群と圧迫群を作成した。圧迫群は褥瘡様皮膚損傷を惹起できる長井ら(2011)の方法に倣い,坐骨神経切断後,片側下肢錘負荷,軽度尾部懸垂で飼育した。圧迫群飼育後1,3,5,7,14日に錘を外し,尾部懸垂を強度にして踵部皮膚への負荷を取り除いた。除圧開始後1,3,7,14,28,40日に屠殺し,H-E染色で観察,およびマクロファージ(ED1)と血管新生因子(VEGF)の動態を免疫組織化学で明らかにした。
【結果】
圧迫群:5日後まで圧迫部の表皮胚芽層は肥厚し,胚芽層に変性した細胞が多くみられた。真皮中の血管は減少し,VEGF発現も減弱化した。7日後以降胚芽層は急速に菲薄化し,消失した。同時期の圧迫部にマクロファージが凝集した。14日後には開放創を形成した。
圧迫14日後から除圧した群(14日除圧群):除圧3日後まで圧迫部にマクロファージが凝集した。除圧7日後に胚芽層が修復,除圧14日後では血管が減少したがVEGF発現は増強した。除圧28日後に乳頭層と血管が過剰に発達し,40日後に正常へと回復した。
7日除圧群:除圧7日後に胚芽層が修復した。以降は14日除圧群と同様であった。
5日除圧群:除圧1日後に圧迫部の胚芽層が消失した。除圧3日後に圧迫部にマクロファージが凝集した。除圧7日後に圧迫部で血管が減少し,圧迫周辺部では胚芽層が肥厚した。除圧14日後には胚芽層が修復された。マクロファージは散在しVEGF発現は増強していた。除圧28日後以降は14日除圧群と同様の過程を呈した。
3日除圧群:除圧1日後に,肥厚していた胚芽層はやや菲薄した。除圧3日後以降ではマクロファージは散在し,除圧7日後に正常へと回復した。
1日除圧群:除圧1日後に胚芽層はやや菲薄し,除圧3日後に正常へと回復した。
【結論】
除圧を施した動物は胚芽層が修復した後に回復する過程を経るが,圧迫5日後に除圧すると一端胚芽層は消失してしまう。これは,すでに圧迫部胚芽層の細胞が変性しており,除圧した際に一端胚芽層が消失してから回復するものと考えられた。本結果から,褥瘡は予防と超早期の発見が重要であることを裏付けることができたと考える。
褥瘡の形成とその回復のメカニズムを解明するためには,ヒトに近い状態の褥瘡を動物で再現する必要がある。ラットの両坐骨神経切断後に飼育方法を工夫すると,踵部皮膚に褥瘡様皮膚損傷を惹起することできる(長井ら,2011)。本皮膚損傷の形成過程や組織学的所見はヒトの褥瘡と類似している(近藤ら,2014;幅ら,2015)。本実験動物がヒトの褥瘡と同様の発症過程であるならば,ヒトの褥瘡と同様に除圧による回復も期待できる。よって本皮膚損傷形成後に除圧を施し,損傷皮膚の回復過程を明らかにしようと試みた。
【方法】
12週齢Wistar系雄性ラット100匹を用いて無処置群と圧迫群を作成した。圧迫群は褥瘡様皮膚損傷を惹起できる長井ら(2011)の方法に倣い,坐骨神経切断後,片側下肢錘負荷,軽度尾部懸垂で飼育した。圧迫群飼育後1,3,5,7,14日に錘を外し,尾部懸垂を強度にして踵部皮膚への負荷を取り除いた。除圧開始後1,3,7,14,28,40日に屠殺し,H-E染色で観察,およびマクロファージ(ED1)と血管新生因子(VEGF)の動態を免疫組織化学で明らかにした。
【結果】
圧迫群:5日後まで圧迫部の表皮胚芽層は肥厚し,胚芽層に変性した細胞が多くみられた。真皮中の血管は減少し,VEGF発現も減弱化した。7日後以降胚芽層は急速に菲薄化し,消失した。同時期の圧迫部にマクロファージが凝集した。14日後には開放創を形成した。
圧迫14日後から除圧した群(14日除圧群):除圧3日後まで圧迫部にマクロファージが凝集した。除圧7日後に胚芽層が修復,除圧14日後では血管が減少したがVEGF発現は増強した。除圧28日後に乳頭層と血管が過剰に発達し,40日後に正常へと回復した。
7日除圧群:除圧7日後に胚芽層が修復した。以降は14日除圧群と同様であった。
5日除圧群:除圧1日後に圧迫部の胚芽層が消失した。除圧3日後に圧迫部にマクロファージが凝集した。除圧7日後に圧迫部で血管が減少し,圧迫周辺部では胚芽層が肥厚した。除圧14日後には胚芽層が修復された。マクロファージは散在しVEGF発現は増強していた。除圧28日後以降は14日除圧群と同様の過程を呈した。
3日除圧群:除圧1日後に,肥厚していた胚芽層はやや菲薄した。除圧3日後以降ではマクロファージは散在し,除圧7日後に正常へと回復した。
1日除圧群:除圧1日後に胚芽層はやや菲薄し,除圧3日後に正常へと回復した。
【結論】
除圧を施した動物は胚芽層が修復した後に回復する過程を経るが,圧迫5日後に除圧すると一端胚芽層は消失してしまう。これは,すでに圧迫部胚芽層の細胞が変性しており,除圧した際に一端胚芽層が消失してから回復するものと考えられた。本結果から,褥瘡は予防と超早期の発見が重要であることを裏付けることができたと考える。