第52回日本理学療法学術大会

講演情報

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) » ポスター発表

[P-KS-29] ポスター(基礎)P29

2017年5月13日(土) 12:50 〜 13:50 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT)

[P-KS-29-4] ヒト頭蓋骨由来間葉系幹細胞の神経保護効果に微小重力環境が与える影響

大塚 貴志1, 猪村 剛史1, 中川 慧1, Looniva Shrestha1, 品川 勝弘2, 高橋 信也3, 末田 泰二郎3, 栗栖 薫2, 河原 裕美4, 弓削 類1,4 (1.広島大学大学院医歯薬保健学研究院生体環境適応科学研究室, 2.広島大学大学院医歯薬保健学研究院脳神経外科学教室, 3.広島大学病院心臓血管外科, 4.株式会社スペース・バイオ・ラボラトリーズ)

キーワード:間葉系幹細胞, 微小重力環境, 神経保護

【はじめに,目的】

間葉系幹細胞(mesenchymal stem cells:MSCs)は,多分化能を有し,神経保護因子を放出することから,神経損傷に対する再生医療に用いる細胞のソースとして期待されている。我々は,脊髄損傷モデルにおいて,微小重力(microgravity:MG)環境で培養したMSCsは,通常重力(1G)環境で培養したものと比べて移植効果が高いことを報告している。MSCsは,由来する組織によって能力が異なることが報告されているなかで,我々は近年,神経堤由来のヒト頭蓋骨由来MSCsに着目している。そこで本研究では,ヒト頭蓋骨由来MSCsを1G環境およびMG環境で培養し,神経保護効果の検討を行った。


【方法】

C57BL/6マウスを用いて脳損傷モデルを作製し,損傷1日後に後眼窩静脈叢よりヒト頭蓋骨由来MSCsを移植した。1G環境下で培養したMSCsを移植した群を1G群,MG環境で培養したMSCsを移植した群をMG群,PBSのみを注射した群をControl群とした。運動機能評価としてBeam walking testを,細胞移植前,細胞移植7,14,21,28日後に行った。in vitroでの解析として,1G環境およびMG環境で培養したMSCsの遺伝子発現をreal-time PCR法を用いて検討した。また,各条件の培養上清を回収し,過酸化水素水およびリポ多糖により細胞死を誘導した神経芽細胞腫(NG108-15)に培養上清が与える影響を,生存率で評価した。


【結果】

脳損傷モデルマウスの実験において,MG群の運動機能は,Control群および1G群と比較して有意に改善し,in vivoでの移植効果が確認できた。in vitroでの解析においても,MG環境で培養したMSCsにおいて,神経保護因子の一つである肝細胞増殖因子(hepatocyte growth factorHGF)と,抗炎症サイトカインの一つであるトランスフォーミング増殖因子-β(transforming growth factor-betaTGF-β)の有意な発現増加が認められた。また,MG環境で培養したMSCsの培養上清は,過酸化水素水およびリポ多糖によるNG108-15の細胞死を有意に抑制した。


【結論】

脳損傷モデルに対して,MG環境で培養したヒト頭蓋骨由来MSCsを移植することで,運動機能の有意な改善が認められた。また,MG環境で培養したヒト頭蓋骨由来MSCsは,神経保護因子および抗炎症サイトカインの遺伝子発現が増大し,その培養上清によって細胞死が抑制されることが示された。このことから,MG環境で培養したヒト頭蓋骨由来MSCsは高い神経保護効果を有する可能性が示唆された。