[P-KS-30-1] 脊髄損傷モデルラットに対するヒト頭蓋骨由来間葉系幹細胞の移植効果
Keywords:間葉系幹細胞, 頭蓋骨, 脊髄損傷
【はじめに,目的】
脊髄損傷は重篤な機能障害を残存することが多く,その治療法として再生医療が注目されている。そのなかで,間葉系幹細胞(mesenchymal stem cells:MSCs)は,移植に用いる幹細胞のソースとして注目されている。MSCsは,由来する組織によって分化能や増殖能が異なることが報告されている。我々は,神経疾患への再生医療における新たな細胞ソースとして,神経堤を起源とするヒト頭蓋骨由来間葉系幹細胞(cranial derived mesenchymal stem cells:cMSCs)の樹立に成功し,その神経分化特性について報告した。しかし,脊髄損傷に対するcMSCsの移植効果は不明である。そこで本研究では,脊髄損傷モデルラットに対するcMSCsの移植効果を検討することを目的とした。
【方法】
脊髄損傷モデルラットは,第10胸髄上にimpactorを落下させるweight drop methodにより作製した。移植細胞にはcMSCsを用い,損傷翌日に尾静脈より細胞移植を行った。対象群は,損傷後に細胞移植を行う群(trans群),PBSのみを注射する群(cont群)の2群とした。運動機能評価として,BBBscore,inclined plane testを用いた。運動機能評価は,損傷前,損傷後,損傷1~7,10,14,21日後に行った。脊髄損傷領域における損傷早期の遺伝子発現を解析するため,損傷3日後に脊髄を摘出した。摘出後,損傷領域よりRNAを抽出しreal-time PCR法を用いて炎症関連遺伝子である腫瘍壊死因子(TNFα),TNF受容体super family(TNFrsf)の発現を解析した。
【結果】
運動機能評価では,cont群と比較してtrans群で損傷6日後以降に,統計学的に有意な運動機能の改善を認めた(p<0.05)。また,遺伝子発現を解析した結果,炎症関連遺伝子であるTNFα,TNFrsfの発現がtrans群で弱かった。
【結論】
本研究の結果,脊髄損傷に対するcMSCsの移植は機能回復に貢献することが示された。脊髄損傷後は,外力による機械的な損傷である一次損傷と,一次損傷を起因とする浮腫,炎症で知られる二次損傷がある。一般的に,MSCsはサイトカイン,ケモカインを分泌し抗炎症作用を有すると考えられている。細胞移植を行うことで運動機能が改善した要因として,二次損傷の一つである炎症が早期に抑制されたことが考えられる。しかしながら,本研究では,cMSCsが分泌する液性因子について検討を行っておらず,真にcMSCsの作用で炎症が抑制されたかどうかは定かではない。今後は,cMSCsが脊髄損傷後の機能改善に与える作用機序について詳細に検討したい。さらに,脊髄損傷の再生医療における理学療法の役割について検討していく必要がある。
脊髄損傷は重篤な機能障害を残存することが多く,その治療法として再生医療が注目されている。そのなかで,間葉系幹細胞(mesenchymal stem cells:MSCs)は,移植に用いる幹細胞のソースとして注目されている。MSCsは,由来する組織によって分化能や増殖能が異なることが報告されている。我々は,神経疾患への再生医療における新たな細胞ソースとして,神経堤を起源とするヒト頭蓋骨由来間葉系幹細胞(cranial derived mesenchymal stem cells:cMSCs)の樹立に成功し,その神経分化特性について報告した。しかし,脊髄損傷に対するcMSCsの移植効果は不明である。そこで本研究では,脊髄損傷モデルラットに対するcMSCsの移植効果を検討することを目的とした。
【方法】
脊髄損傷モデルラットは,第10胸髄上にimpactorを落下させるweight drop methodにより作製した。移植細胞にはcMSCsを用い,損傷翌日に尾静脈より細胞移植を行った。対象群は,損傷後に細胞移植を行う群(trans群),PBSのみを注射する群(cont群)の2群とした。運動機能評価として,BBBscore,inclined plane testを用いた。運動機能評価は,損傷前,損傷後,損傷1~7,10,14,21日後に行った。脊髄損傷領域における損傷早期の遺伝子発現を解析するため,損傷3日後に脊髄を摘出した。摘出後,損傷領域よりRNAを抽出しreal-time PCR法を用いて炎症関連遺伝子である腫瘍壊死因子(TNFα),TNF受容体super family(TNFrsf)の発現を解析した。
【結果】
運動機能評価では,cont群と比較してtrans群で損傷6日後以降に,統計学的に有意な運動機能の改善を認めた(p<0.05)。また,遺伝子発現を解析した結果,炎症関連遺伝子であるTNFα,TNFrsfの発現がtrans群で弱かった。
【結論】
本研究の結果,脊髄損傷に対するcMSCsの移植は機能回復に貢献することが示された。脊髄損傷後は,外力による機械的な損傷である一次損傷と,一次損傷を起因とする浮腫,炎症で知られる二次損傷がある。一般的に,MSCsはサイトカイン,ケモカインを分泌し抗炎症作用を有すると考えられている。細胞移植を行うことで運動機能が改善した要因として,二次損傷の一つである炎症が早期に抑制されたことが考えられる。しかしながら,本研究では,cMSCsが分泌する液性因子について検討を行っておらず,真にcMSCsの作用で炎症が抑制されたかどうかは定かではない。今後は,cMSCsが脊髄損傷後の機能改善に与える作用機序について詳細に検討したい。さらに,脊髄損傷の再生医療における理学療法の役割について検討していく必要がある。