[P-KS-30-2] ラット末梢神経損傷モデルにおける経時的運動介入が神経再生に与える影響
Keywords:末梢神経損傷, 運動介入, 神経再生
【はじめに,目的】
末梢神経損傷後には旺盛な神経再生が起こることが知られており,運動療法は広く施行されている。Meeterenらは,強度な運動負荷は神経再生に悪影響を与え,低負荷は神経発芽や伸長,再生軸索の成熟に効果があることを示唆した。本研究は,ラット末梢神経損傷モデルに対し低負荷での運動介入が神経再生へどのような影響を与えるのかを明らかにすることを目的とした。
【方法】
10週齢のWistar系雄性ラット38匹を対象とし,介入期間を2週と4週に分けた。坐骨神経挫滅後自然回復経過を観察する非運動群(以下SC群,n=6),運動を行う運動群(以下SC-ex群,n=7),健常群(以下Sham群,n=6)の3群に無作為に振り分けた。神経挫滅方法は,-100℃のクリップで坐骨神経を3分間圧挫した。術後4日目から,運動群には外乱刺激装置(回転角度±7°,回転速度20rpm)を用い,週に5日,1日1時間の運動介入を実施した。採取した坐骨神経を凍結包埋し厚さ16μmの横断切片を作成した。一時抗体として抗Neurofilament抗体,二次抗体としてCy3,DAPIにより核染色で蛍光免疫組織化学染色を行った。その後,蛍光顕微鏡KEYENCEにて坐骨神経を撮影し,画像解析ソフトで単位面積当たりの平均輝度と単位面積当たりの個数を計測した。一元配置分散分析,多重比較検定Tukey法を行った。
【結果】
Neurofilament発現量の単位面積当たりの平均輝度は,2週群が0.11,4週群が0.37であり,4週群が2週群と比較して有意に増加した(p<0.05)。また,SC群はSC-ex群とSham群と比べて増加傾向を示した。しかし,実験群による有意差は認められなかった。一方,核の単位面積当たりの個数は,週齢による有意差は認められなかった。群ごとの平均はSC群が0.0025,SC-ex群が0.0027,Sham群が0.0009となり,Sham群と比較してSC-ex群とSC群がともに有意に増加した(p<0.05)。
【結論】
Neurofilamentは,損傷部ではWaller変性に伴い損傷1週までに一旦消失し,2週以降に再生軸索として経時的に増加するとされる。これと同様に本研究においても損傷後Neurofilamentが一度消失し,時間経過に伴って神経再生が生じたのではないかと推察された。また,実験群の違いによる有意差は認められなかったが,運動を行うことで機能回復が促進したのではないかと考えられた。神経損傷後は変性組織の除去や神経再生の足場としてシュワン細胞が増加する。そのため,Sham群と比較して神経を損傷させた2群の方が神経再生や軸索伸長のために旺盛な細胞増加が生じ,核の増加が観察された。本研究の結果から神経可塑性に対する運動の効果を明らかにできる可能性がある。
末梢神経損傷後には旺盛な神経再生が起こることが知られており,運動療法は広く施行されている。Meeterenらは,強度な運動負荷は神経再生に悪影響を与え,低負荷は神経発芽や伸長,再生軸索の成熟に効果があることを示唆した。本研究は,ラット末梢神経損傷モデルに対し低負荷での運動介入が神経再生へどのような影響を与えるのかを明らかにすることを目的とした。
【方法】
10週齢のWistar系雄性ラット38匹を対象とし,介入期間を2週と4週に分けた。坐骨神経挫滅後自然回復経過を観察する非運動群(以下SC群,n=6),運動を行う運動群(以下SC-ex群,n=7),健常群(以下Sham群,n=6)の3群に無作為に振り分けた。神経挫滅方法は,-100℃のクリップで坐骨神経を3分間圧挫した。術後4日目から,運動群には外乱刺激装置(回転角度±7°,回転速度20rpm)を用い,週に5日,1日1時間の運動介入を実施した。採取した坐骨神経を凍結包埋し厚さ16μmの横断切片を作成した。一時抗体として抗Neurofilament抗体,二次抗体としてCy3,DAPIにより核染色で蛍光免疫組織化学染色を行った。その後,蛍光顕微鏡KEYENCEにて坐骨神経を撮影し,画像解析ソフトで単位面積当たりの平均輝度と単位面積当たりの個数を計測した。一元配置分散分析,多重比較検定Tukey法を行った。
【結果】
Neurofilament発現量の単位面積当たりの平均輝度は,2週群が0.11,4週群が0.37であり,4週群が2週群と比較して有意に増加した(p<0.05)。また,SC群はSC-ex群とSham群と比べて増加傾向を示した。しかし,実験群による有意差は認められなかった。一方,核の単位面積当たりの個数は,週齢による有意差は認められなかった。群ごとの平均はSC群が0.0025,SC-ex群が0.0027,Sham群が0.0009となり,Sham群と比較してSC-ex群とSC群がともに有意に増加した(p<0.05)。
【結論】
Neurofilamentは,損傷部ではWaller変性に伴い損傷1週までに一旦消失し,2週以降に再生軸索として経時的に増加するとされる。これと同様に本研究においても損傷後Neurofilamentが一度消失し,時間経過に伴って神経再生が生じたのではないかと推察された。また,実験群の違いによる有意差は認められなかったが,運動を行うことで機能回復が促進したのではないかと考えられた。神経損傷後は変性組織の除去や神経再生の足場としてシュワン細胞が増加する。そのため,Sham群と比較して神経を損傷させた2群の方が神経再生や軸索伸長のために旺盛な細胞増加が生じ,核の増加が観察された。本研究の結果から神経可塑性に対する運動の効果を明らかにできる可能性がある。