[P-KS-31-5] 体性感覚入力と運動イメージの組み合わせで誘導される運動知覚は運動出力系を賦活する
Keywords:振動刺激, 運動知覚, 表面筋電図
【はじめに,目的】
筋腱に適切な周波数で振動刺激を行うと,実際には関節運動が生じないにも関わらず,刺激された筋が伸張する方向への関節運動を知覚する。振動刺激によって運動を知覚すると,刺激した筋の筋収縮(緊張性振動反射)ではなく,その拮抗筋,つまり知覚している運動を実際に行なった場合に主動作筋となる筋にのみ特異的に筋収縮が生じる(Antagonist vibratory response:AVR)。この現象は感覚入力によって受動的に運動を知覚した場合にのみ生じることから,運動感覚の知覚に関連する現象と考えられている。これまで運動感覚の知覚は,被験者の主観を基に評価されることが多かった。しかし,運動感覚の知覚強度に応じた筋活動の変化を定量化できれば,運動感覚の知覚という心理状況に対する客観的な指標の確立に繫がる可能性がある。一方,拮抗関係にある2筋に対して同じ周波数の振動刺激を行うと運動感覚は知覚しなくなる。しかし,その状況下でさらに運動イメージを重畳することによって,イメージした方向への運動を知覚させることができる。そこでまず本研究では,拮抗関係にある2筋への振動刺激と運動イメージを組み合わせることで,感覚入力は変化させずに運動感覚を知覚する状況としない状況を作り出し,運動感覚の知覚と並行して筋活動に変化が生じるのかを検証した。
【方法】
健康な成人20名を対象とした。振動刺激の周波数は40,60,80,100Hzとし,掌屈筋と背屈筋を同周波数で3秒間刺激した。イメージさせる運動は,手関節が3秒間で中間位から最大掌屈位まで掌屈する運動とした。実験条件として,各周波数での振動刺激中に運動イメージを行う条件(MI条件)と行わない条件(nonMI条件)を設定し,3試技ずつ実施した。刺激中に橈側手根伸筋(ECR)と橈側手根屈筋(FCR)から表面筋電図を記録し,振動刺激開始1秒後からの1秒間における二乗平均平方根(RMS)値を算出した。さらに,刺激中に知覚した関節運動を刺激終了後に再現させ,その角速度を運動知覚の指標として用いた。統計学的解析として,RMS値は運動イメージの有無と振動刺激周波数を要因とした二元配置分散分析を行なった。さらに知覚した運動の角速度と各筋のRMS値について相関分析を行い,ピアソンの相関係数を算出した(p<0.05)。
【結果】
全ての被験者はMI条件で手関節掌屈運動を知覚した。さらに,MI条件では振動刺激周波数に依存して角速度が増大した。FCRのRMS値は,nonMI条件と比較してMI条件で有意に増大したのに対し,ECRでは差がなかった。一方,知覚した運動の角速度と各筋のRMS値には相関がなかった。
【結論】
このことから,筋活動は感覚の入力量の不均衡性には関連せず,運動感覚の知覚の有無に関連して発現することが明らかになった。したがって,知覚の強度までは言及できないが,筋活動を運動感覚の知覚の客観的な指標として用いることができる可能性が示された。
筋腱に適切な周波数で振動刺激を行うと,実際には関節運動が生じないにも関わらず,刺激された筋が伸張する方向への関節運動を知覚する。振動刺激によって運動を知覚すると,刺激した筋の筋収縮(緊張性振動反射)ではなく,その拮抗筋,つまり知覚している運動を実際に行なった場合に主動作筋となる筋にのみ特異的に筋収縮が生じる(Antagonist vibratory response:AVR)。この現象は感覚入力によって受動的に運動を知覚した場合にのみ生じることから,運動感覚の知覚に関連する現象と考えられている。これまで運動感覚の知覚は,被験者の主観を基に評価されることが多かった。しかし,運動感覚の知覚強度に応じた筋活動の変化を定量化できれば,運動感覚の知覚という心理状況に対する客観的な指標の確立に繫がる可能性がある。一方,拮抗関係にある2筋に対して同じ周波数の振動刺激を行うと運動感覚は知覚しなくなる。しかし,その状況下でさらに運動イメージを重畳することによって,イメージした方向への運動を知覚させることができる。そこでまず本研究では,拮抗関係にある2筋への振動刺激と運動イメージを組み合わせることで,感覚入力は変化させずに運動感覚を知覚する状況としない状況を作り出し,運動感覚の知覚と並行して筋活動に変化が生じるのかを検証した。
【方法】
健康な成人20名を対象とした。振動刺激の周波数は40,60,80,100Hzとし,掌屈筋と背屈筋を同周波数で3秒間刺激した。イメージさせる運動は,手関節が3秒間で中間位から最大掌屈位まで掌屈する運動とした。実験条件として,各周波数での振動刺激中に運動イメージを行う条件(MI条件)と行わない条件(nonMI条件)を設定し,3試技ずつ実施した。刺激中に橈側手根伸筋(ECR)と橈側手根屈筋(FCR)から表面筋電図を記録し,振動刺激開始1秒後からの1秒間における二乗平均平方根(RMS)値を算出した。さらに,刺激中に知覚した関節運動を刺激終了後に再現させ,その角速度を運動知覚の指標として用いた。統計学的解析として,RMS値は運動イメージの有無と振動刺激周波数を要因とした二元配置分散分析を行なった。さらに知覚した運動の角速度と各筋のRMS値について相関分析を行い,ピアソンの相関係数を算出した(p<0.05)。
【結果】
全ての被験者はMI条件で手関節掌屈運動を知覚した。さらに,MI条件では振動刺激周波数に依存して角速度が増大した。FCRのRMS値は,nonMI条件と比較してMI条件で有意に増大したのに対し,ECRでは差がなかった。一方,知覚した運動の角速度と各筋のRMS値には相関がなかった。
【結論】
このことから,筋活動は感覚の入力量の不均衡性には関連せず,運動感覚の知覚の有無に関連して発現することが明らかになった。したがって,知覚の強度までは言及できないが,筋活動を運動感覚の知覚の客観的な指標として用いることができる可能性が示された。