第52回日本理学療法学術大会

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日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) » ポスター発表

[P-KS-32] ポスター(基礎)P32

2017年5月13日(土) 12:50 〜 13:50 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT)

[P-KS-32-5] ロボットスーツHALの重量が歩行時の下肢筋活動に与える影響

植田 達也, 田口 潤智, 堤 万佐子, 中谷 知生, 山本 洋平, 梶川 健佑 (尚和会宝塚リハビリテーション病院)

キーワード:歩行トレーニング, 筋電図, ロボットリハビリテーション

【はじめに,目的】

近年,ロボットリハビリテーション技術の臨床応用が進んでおり,当院でも歩行トレーニング時に様々なロボットを使用している。しかし,それらの機器の使用時に装着者から「重たい」,「動きにくい」といった否定的な意見が聞かれ,動作時の疲労感を訴えることが少なくない。そこで今回,当院で使用しているロボットスーツHAL医療用(以下HAL)を用い,その重量が歩行時の下肢の筋活動に与える影響を検証したので報告する。

【方法】

対象は健常成人7名(男性4名,女性3名)で,平均年齢(±SD)は25.9±2.9歳であった。方法は「HAL未装用」,「HAL装用」,HALの重量(約14kg)を免荷式リフトPOPOを用いて除いた状態での「HAL免荷装用」の3条件における快適歩行時の下肢の筋活動を表面筋電図を用いて記録した。HALのアシスト量は歩行しやすく,他覚的に見て極端な下肢の運動とならない程度とした。表面筋電図にはパシフィックサプライ社製Gait Judge Systemを使用した。導出筋は内側広筋とし,立脚初期から荷重応答期に得られた波形を解析し,「HAL未装用」を100%としたときの「HAL装用」,「HAL免荷装用」の筋活動の変化率を求めた。解析には3歩行周期分の筋活動の平均値を採用した。統計学的分析は「HAL未装用」,「HAL装用」,「HAL免荷装用」の筋活動の変化をJSTATを用いてFriedman検定で分析し,その後多重比較を行った。有意水準は5%とした。

【結果】

「HAL未装用」に対する変化率は,「HAL装用」で173±247.0%,「HAL免荷装用」で131±64.2%であった。「HAL未装用」と「HAL装用」の間においてのみ有意差を認めた(p=0.02)。

【結論】

「HAL未装用」と「HAL装用」間においてのみ有意に内側広筋の筋活動は増大し,「HAL未装用」と「HAL免荷装用」間では有意差を認めなかった。今回の結果からHALにより下肢の運動をアシストした条件下でも,機器の重量は下肢の筋活動に影響を与えることが示唆された。また,HAL装用による筋活動の比率は173±247.0%であり,HAL免荷装用時と比較して,個人間で筋活動のばらつきが認められた。これらの結果からHALのみを装用したトレーニングでは促通される運動にばらつきが生じ,トレーニング効果に差が生じやすいと考えられる。このことから,HALを用いた歩行トレーニングではその重量を除した条件で実施することで正常歩行により近い筋活動を発揮した状態でのトレーニングが可能となることが示唆された。