The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) » ポスター発表

[P-KS-34] ポスター(基礎)P34

Sat. May 13, 2017 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT)

[P-KS-34-4] 姿勢や肢位の違いが下肢伸展時の筋活動に及ぼす影響

瀧谷 春奈1, 国分 貴徳2, 小平 寛岳3, 藤嶋 弾4, 金村 尚彦2 (1.自治医科大学附属さいたま医療センター, 2.埼玉県立大学保健医療福祉学部理学療法学科, 3.八潮中央総合病院, 4.松田整形外科)

Keywords:大腿四頭筋, 筋活動, Quad Setting

【はじめに,目的】

ヒトの筋肉は姿勢や体節の肢位,口頭指示等を変えることにより筋活動が変化する。Blaimontらによると立位では,足部が固定され骨盤が制動されている状態で膝関節屈筋群であるハムストリングスが収縮すると,膝関節伸展に作用すると報告されている。これをもとに,大腿四頭筋の機能向上トレーニングとして用いられているQuad Setting(以下QS)の動きのパターンに着目し研究を行った。QSに関する研究は多くなされているが,動きのパターンに着目した研究の報告は少ない。本研究の目的は,従来のQSがハムストリングスによって課題達成されると仮説を立て,効果的な大腿四頭筋の機能向上トレーニング法を検証することである。

【方法】

対象は膝関節疾患の既往がない健常成人男性12名(22±1歳)とした。三次元動作解析装置(Myomotion,Noraxon),表面筋電図(TeleMyo DTS,Noraxon)を用いて,QSの膝関節の動きだしと完全伸展までの表面筋電図波形を計測した。対象筋は右側の大腿直筋,外側広筋,大腿二頭筋,半腱様筋,大殿筋とした。被験者は長座位(股関節屈曲45°)にて異なる2条件のQSを各試行3回行った。1つ目は膝窩でタオルを押しつぶしながら膝関節を伸展させる方法(以下QS-normal),2つ目はタオルを支点に膝関節を伸展させる方法(以下QS-knee up)とした。筋電図波形はTeleMyo DTS,Noraxonのパソコン内にてノイズ除去,フィルター処理を行った。筋電図波形から安静時の平均値を算出し,平均値±2標準偏差(以下SD)の計算を行い膝関節の動き出し,筋活動開始時間を抽出した。筋活動量については,範囲を膝関節動き出しから完全伸展までとした。筋電図波形を正規化し,筋活動量(RMS)を抽出した。各課題における筋活動量の統計処理は,正規性の検定後Wilcoxon符号付順位検定を用いて算出した。

【結果】

筋活動開始順位は,QS-normalではハムストリングスが全施行回数の約40%,大腿四頭筋が約40%,大殿筋が約20%の割合で先行していた。一方,QS-knee upでは大腿四頭筋が全施行回数の約70%,ハムストリングスが約20%,大殿筋が約10%の割合で先行していた。筋活動量は,大腿二頭筋と半腱様筋ではQS-normal時に筋活動量が有意に増大した(p<0.05)。しかし,大腿直筋と外側広筋の筋活動量では異なる2条件下で有意差は認められなかった。

【結論】

本研究の結果から,QS-normalは,膝窩でタオルを押しつぶす動作が含まれているため股関節伸展に伴い,ハムストリングスが先行して活動し,適切に大腿四頭筋の筋活動を引き出せていない可能性が示唆された。一方,QS-knee upでは大腿四頭筋が先行して活動していたため,大腿四頭筋の単純な機能向上トレーニングとなり得る可能性が示唆された。この結果を踏まえ,姿勢や肢位における筋活動の特性を理解し理学療法プログラムを立案することがより効果の高い理学療法を提供できるものと考える。