[P-KS-36-1] 着座動作の筋電図学的解析
Keywords:着座動作, 筋電図学的解析, 下肢筋活動量
【はじめに,目的】
着座動作は立位から重心を下方そして後方へ移動させながら座位になる動作である。他の起居動作と同様に日常的に繰り返し行われる動作であり,動作の理解は重要である。しかし,動作指導や動作介助の書籍には着座動作を詳細に解説したものは見られない。本研究は着座動作の動作指導への一助を目的に着座動作条件による下肢筋活動量の比較検討を行ったので報告する。
【方法】
対象は健常成人11名(男性4名,女性7名,年齢21.5±0.7歳,身長164.2±7.4cm,体重55.5±6.3kg)とした。測定機器はテレマイオDTS(Noraxon社製)を用い,右側の大腿直筋(RF),内側広筋(VM),前脛骨筋(TA),腓腹筋内側頭(MG)を被検筋とした。表面筋電図を双極誘導で導出し,サンプリング周波数は1000Hz,バンドパスフィルターを10~500Hzとし整流平滑化を行った。着座動作は両上肢を腹部の前で組んだ立位から座位への動作とし,座面高は40cmとした。課題は前方注視と下方注視,速度を至適,速く,遅くの各組み合わせで計6条件とした。各課題を3回施行し,動作開始を胸骨に付けた加速度センサーの変位で,着殿を座面に付けた圧センサーで規定した。課題動作中の平均振幅値(RFEMG)およびピーク値(ピークRFEMG)を算出し,各筋の最大等尺性収縮時のRFEMGを100%として正規化し,それぞれの%RFEMGを求めた。統計学的検定は注視方向と速度の違いの2要因について,反復測定2元配置分散分析を行った。統計学的有意水準は5%とした。
【結果】
%ピークRFEMGでは,TAに有意差が認められ,下方注視(43.8±21.3%)より前方注視(38.6±18.3%)で大きくなり,速く(31.2±15.0%),至適(40.8±19.8%),遅く(51.4±19.8%)の順で大きくなった(p<0.05)。%RFEMGでは,TAとMGは下方注視(TA:20.9±7.9%,MG:4.4±2.8%)より前方注視(TA:22.9±8.8%,MG:5.0±3.0%)で大きく,MGは遅く(3.5±0.9%),至適(4.2±1.7%),速く(6.4±4.2%)の順で大きくなった(p<0.05)。
【結論】
下方注視に対して前方注視では体幹の傾斜角度が小さくなり,後方に位置する身体重心を足関節で制御していると考えられる。速度条件で前脛骨筋の筋活動に差がみられたことから,ゆっくり座るためには重心の後方移動を足関節で制動する必要性が示唆された。安定した着座動作には足関節の制動が重要であり,このことは着座動作の指導,介助方法の一助となると考える。
着座動作は立位から重心を下方そして後方へ移動させながら座位になる動作である。他の起居動作と同様に日常的に繰り返し行われる動作であり,動作の理解は重要である。しかし,動作指導や動作介助の書籍には着座動作を詳細に解説したものは見られない。本研究は着座動作の動作指導への一助を目的に着座動作条件による下肢筋活動量の比較検討を行ったので報告する。
【方法】
対象は健常成人11名(男性4名,女性7名,年齢21.5±0.7歳,身長164.2±7.4cm,体重55.5±6.3kg)とした。測定機器はテレマイオDTS(Noraxon社製)を用い,右側の大腿直筋(RF),内側広筋(VM),前脛骨筋(TA),腓腹筋内側頭(MG)を被検筋とした。表面筋電図を双極誘導で導出し,サンプリング周波数は1000Hz,バンドパスフィルターを10~500Hzとし整流平滑化を行った。着座動作は両上肢を腹部の前で組んだ立位から座位への動作とし,座面高は40cmとした。課題は前方注視と下方注視,速度を至適,速く,遅くの各組み合わせで計6条件とした。各課題を3回施行し,動作開始を胸骨に付けた加速度センサーの変位で,着殿を座面に付けた圧センサーで規定した。課題動作中の平均振幅値(RFEMG)およびピーク値(ピークRFEMG)を算出し,各筋の最大等尺性収縮時のRFEMGを100%として正規化し,それぞれの%RFEMGを求めた。統計学的検定は注視方向と速度の違いの2要因について,反復測定2元配置分散分析を行った。統計学的有意水準は5%とした。
【結果】
%ピークRFEMGでは,TAに有意差が認められ,下方注視(43.8±21.3%)より前方注視(38.6±18.3%)で大きくなり,速く(31.2±15.0%),至適(40.8±19.8%),遅く(51.4±19.8%)の順で大きくなった(p<0.05)。%RFEMGでは,TAとMGは下方注視(TA:20.9±7.9%,MG:4.4±2.8%)より前方注視(TA:22.9±8.8%,MG:5.0±3.0%)で大きく,MGは遅く(3.5±0.9%),至適(4.2±1.7%),速く(6.4±4.2%)の順で大きくなった(p<0.05)。
【結論】
下方注視に対して前方注視では体幹の傾斜角度が小さくなり,後方に位置する身体重心を足関節で制御していると考えられる。速度条件で前脛骨筋の筋活動に差がみられたことから,ゆっくり座るためには重心の後方移動を足関節で制動する必要性が示唆された。安定した着座動作には足関節の制動が重要であり,このことは着座動作の指導,介助方法の一助となると考える。