[P-KS-36-4] 女性高齢者の立ち上がり動作における仙骨傾斜角が膝関節へ与える影響
~前額面における検討~
Keywords:女性高齢者, 仙骨傾斜角, 外的膝内反モーメント
【はじめに,目的】
本研究の目的は,女性高齢者の立ち上がり動作における仙骨傾斜角が膝関節に与える影響を前額面上で検証し,膝関節疾患への脊柱や骨盤に対する理学療法介入への一助とすることである。
【方法】
対象は日常生活に制限がない女性高齢者21名とした。直立座位で仙骨傾斜角が負の値を示している者を骨盤後傾群と定義し,Spinal MouseⓇを用いて直立座位での仙骨傾斜角を測定後,骨盤後傾群と非後傾群(対照群)に分けた。
立ち上がり動作は下腿長と同じ高さの台に着座し,三次元動作解析装置,赤外線カメラ8台(100 Hz),床反力計2枚(1000 Hz)を用いて測定した。立ち上がり動作は膝屈曲と共に足部を後方へ移動させた後,床反力計の垂直成分が5 Nを超えた時点を動作開始と定義し,動作終了は床反力計の垂直成分が定常状態になった時点とした。反射マーカーは左右内外側膝関節裂隙および内外果を含む31箇所に貼付した。
動作分析は動作解析ソフトに取り込み,外的膝内反モーメントおよび膝内反角力積を算出した。膝内反角力積は外的膝内反モーメントを時間で積分した値を表す。
各データの解析時期は動作中の最大値および動作開始,左前頭部マーカー垂直成分最下位,体幹最大屈曲時点とし,被検者間の体格差をなくすため計測された関節モーメントは体重と身長で除して算出した。測定回数は3回とし平均値を採用した。
統計解析にはSPSS(ver.16.0)を使用し,骨盤後傾群と対照群における外的膝内反モーメントおよび膝内反角力積について2群間の差の検定を行った。有意水準は5%とした。
【結果】
対象は骨盤後傾群8名,対照群13名であった。動作開始時の外的膝内反モーメントは骨盤後傾群右側-7.5±7.3 Nmm/kg・m,左側-9.8±8.2 Nmm/kg・m,対照群右側-23.0±14.1 Nmm/kg・m,左側-27.0±10.4 Nmm/kg・mで骨盤後傾群が有意に大きかった(p<0.01)。その他の解析時期や膝内反角力積では,有意差は認められなかった。
【考察】
立ち上がり動作においては,動作開始時に骨盤後傾群では外的な外反モーメントが有意に低い値を示した。この理由として,骨盤後傾により大腿骨が外旋し,その機械的な連結運動として脛骨外旋および外側傾斜が生じ,相対的に膝内反アライメントが高まったためと考えられた。しかし,立ち上がり動作全体を通しての外的膝内反モーメントおよび内反角力積は,両下肢支持のため比較的低値で,左右下肢への荷重分配率も対象者によって異なることから,明らかな差を生じなかったものと考えられる。
【結論】
女性高齢者において直立座位での仙骨傾斜角が後傾することで立ち上がり動作開始時の外的膝内反モーメントが相対的に大きくなるが。動作全体では骨盤後傾による膝関節内側負荷への影響は少ない可能性がある。
本研究の目的は,女性高齢者の立ち上がり動作における仙骨傾斜角が膝関節に与える影響を前額面上で検証し,膝関節疾患への脊柱や骨盤に対する理学療法介入への一助とすることである。
【方法】
対象は日常生活に制限がない女性高齢者21名とした。直立座位で仙骨傾斜角が負の値を示している者を骨盤後傾群と定義し,Spinal MouseⓇを用いて直立座位での仙骨傾斜角を測定後,骨盤後傾群と非後傾群(対照群)に分けた。
立ち上がり動作は下腿長と同じ高さの台に着座し,三次元動作解析装置,赤外線カメラ8台(100 Hz),床反力計2枚(1000 Hz)を用いて測定した。立ち上がり動作は膝屈曲と共に足部を後方へ移動させた後,床反力計の垂直成分が5 Nを超えた時点を動作開始と定義し,動作終了は床反力計の垂直成分が定常状態になった時点とした。反射マーカーは左右内外側膝関節裂隙および内外果を含む31箇所に貼付した。
動作分析は動作解析ソフトに取り込み,外的膝内反モーメントおよび膝内反角力積を算出した。膝内反角力積は外的膝内反モーメントを時間で積分した値を表す。
各データの解析時期は動作中の最大値および動作開始,左前頭部マーカー垂直成分最下位,体幹最大屈曲時点とし,被検者間の体格差をなくすため計測された関節モーメントは体重と身長で除して算出した。測定回数は3回とし平均値を採用した。
統計解析にはSPSS(ver.16.0)を使用し,骨盤後傾群と対照群における外的膝内反モーメントおよび膝内反角力積について2群間の差の検定を行った。有意水準は5%とした。
【結果】
対象は骨盤後傾群8名,対照群13名であった。動作開始時の外的膝内反モーメントは骨盤後傾群右側-7.5±7.3 Nmm/kg・m,左側-9.8±8.2 Nmm/kg・m,対照群右側-23.0±14.1 Nmm/kg・m,左側-27.0±10.4 Nmm/kg・mで骨盤後傾群が有意に大きかった(p<0.01)。その他の解析時期や膝内反角力積では,有意差は認められなかった。
【考察】
立ち上がり動作においては,動作開始時に骨盤後傾群では外的な外反モーメントが有意に低い値を示した。この理由として,骨盤後傾により大腿骨が外旋し,その機械的な連結運動として脛骨外旋および外側傾斜が生じ,相対的に膝内反アライメントが高まったためと考えられた。しかし,立ち上がり動作全体を通しての外的膝内反モーメントおよび内反角力積は,両下肢支持のため比較的低値で,左右下肢への荷重分配率も対象者によって異なることから,明らかな差を生じなかったものと考えられる。
【結論】
女性高齢者において直立座位での仙骨傾斜角が後傾することで立ち上がり動作開始時の外的膝内反モーメントが相対的に大きくなるが。動作全体では骨盤後傾による膝関節内側負荷への影響は少ない可能性がある。