The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) » ポスター発表

[P-KS-37] ポスター(基礎)P37

Sat. May 13, 2017 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT)

[P-KS-37-1] 一段階運動負荷試験における酸素摂取量の時定数の最小可検変化量の推定

藤田 大輔 (健康科学大学理学療法学科)

Keywords:酸素摂取量, 時定数, 最小可検変化量

【はじめに,目的】

一段階運動負荷試験によって得られる酸素摂取動態は3相に分けられている。特に,第2相における酸素摂取量の立ち上がりの速さは時定数によって表され,酸素摂取量の時定数と呼ばれている。この指標はエネルギー産生機構の速度によって規定されており,運動耐容能とは異なる指標として活用できる可能性がある。しかし,理学療法の介入効果を反映する指標として,測定による誤差がどの程度であるかを推定する最小可検変化量(Minimal Detectable Change:MDC)については不明である。MDCを推定できれば,誤差以外の変化量の基準を設けることができるため明確にする必要がある。そこで,本研究の目的は健常成人男性を対象に時定数測定の最小可検変化量(Minimal Detectable Change:MDC)を明らかにすることとした。


【方法】

対象は健常成人男性12名とした(年齢:20.3±0.8歳,身長:170.6±6.5cm,体重:65.1±10.7kg)。測定は安静座位5分後に速度を6.0km/hに設定したトレッドミル歩行を6分間測定し,15分以上の間隔を置いて2回行った。測定項目は呼気ガス分析装置から得られた酸素摂取量とし,測定値は10秒平均値を用いた。酸素摂取量の時定数はトレッドミル歩行開始後20秒からの酸素摂取量を指数関数曲線にフィッティングして算出した。統計学的分析は1回目と2回目の酸素摂取量の時定数に対して対応のあるt検定と信頼性を検討するために級内相関係数(ICC)を算出した。さらに2回の測定値の差の標準偏差を求め,MDCを1.96×√2×2回の測定値の差の標準偏差×√(1-ICC)によって算出した。統計学的有意水準は危険率5%未満とした。


【結果】

酸素摂取量の時定数は1回目が43.5±7.3秒,2回目が44.4±7.3秒であり,有意な差は認められなかった。酸素摂取量の時定数測定の信頼性を示すICCは0.86であったため,almost perfectと判定された。1回目と2回目の測定値の差は-0.9±3.8秒であり,この標準偏差とICCを用いてMDCを算出すると3.9秒であった。


【結論】

本研究の結果より,一段階運動負荷試験による酸素摂取量の時定数は1回目と2回目の数値に差は無く,信頼性は高かった。さらに,MDCは3.9秒であったことは,先行研究において有意な改善が認められる秒数と近似しているため妥当だと考えられる。MDCは測定誤差の範囲を示しており,MDC以上の変化は持久的トレーニングなどの介入効果として解釈できる。そのため,本研究は健常者の介入による酸素摂取量の時定数の変化を正しく判断できる基準を示したことに意義がある。