The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) » ポスター発表

[P-KS-37] ポスター(基礎)P37

Sat. May 13, 2017 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT)

[P-KS-37-2] 回復期脳卒中患者における非麻痺側上肢での運動負荷試験による全身持久力の縦断的評価

小宅 一彰1,2, 山口 智史2,3,4, 工藤 大輔5, 佐久間 達生5, 木下 琴枝5, 近藤 国嗣5, 大高 洋平3,5, 百瀬 公人1 (1.信州大学大学院, 2.日本学術振興会, 3.慶應義塾大学, 4.コペンハーゲン大学, 5.東京湾岸リハビリテーション病院)

Keywords:最高酸素摂取量, 最高心拍数, 呼気ガス分析

【はじめに,目的】

全身持久力は,脳卒中患者の日常生活活動に影響するため,その把握は根拠に基づく理学療法を提供するうえで重要である(Smith, et al., IJS. 2012)。我々はACPT2016において,片麻痺患者の全身持久力低下を判別する手法として,非麻痺側上肢でのエルゴメータ駆動による運動負荷試験(CPX)の有効性を報告した。しかし,脳卒中患者における縦断的評価において,本手法と従来の下肢運動による評価との相違は十分に検討されていない。そこで本研究の目的は,回復期脳卒中片麻痺患者において,非麻痺側上肢でのCPXにより縦断的に評価し,下肢運動による手法に対する特徴を検証することである。

【方法】

対象は,2014年10月から2015年10月の間に当院回復期病棟に入院した初発脳卒中片麻痺患者14名であった(65±9歳,発症後74±17日;平均±標準偏差)。麻痺側下肢のBrunnstrom stageは,IIが3名,IIIが5名,IVが4名,Vが2名であった。採用基準は,端座位保持が自立し,認知症や高次脳機能障害がない者とした。除外基準は,内科的疾患および関節拘縮や疼痛のために運動課題の遂行が困難,および神経疾患の既往がある者とした。

CPXは,非麻痺側上肢運動と下肢運動によるエルゴメータ駆動の2課題とした。負荷強度は,10 Wで開始し,上肢課題は5 W,下肢課題は10 Wずつ1分ごとに漸増した。運動中は,開始時の至適回転速度を維持するよう指示した。評価指標は,最高酸素摂取量(Peak VO2)および最高心拍数を計測した。試行順はカウンターバランスを考慮し,1週間以内の別日に実施した。評価は,初回およびその4週後に実施した。統計解析は,初回と4週後の変化を比較するために,対応のあるt検定を用いた。また,Peak VO2および最高心拍数の変化量の相関を検定するために,Pearson積率相関係数を用いた。有意水準は5%とした。

【結果】

上肢課題において,Peak VO2は有意に増加したが(初回9.5±1.8 mL/kg/min,4週後10.2±2.2 mL/kg/min,p=0.02),最高心拍数は有意な変化を認めなかった(初回116±16 bpm,4週後118±17 bpm,p=0.31)。下肢課題のPeak VO2(初回11.8±3.1 mL/kg/min,4週後12.5±3.9 mL/kg/min,p=0.37)および最高心拍数(初回109±18 bpm,4週後110±16 bpm,p=0.84)は,いずれも有意な変化を認めなかった。Peak VO2および最高心拍数の変化量は,上肢課題では有意な相関を認めないが(r=0.20,p=0.49),下肢課題では有意な正の相関を認めた(r=0.85,p<0.01)。

【結論】

上肢課題におけるPeak VO2の増加は,最高心拍数の変化と関連しないことから,Fickの原理より,1回拍出量および動静脈酸素較差の増加が示唆される。一方で,下肢運動は最高心拍数の変化が関連することから,Peak VO2の変化には運動遂行能力の変化が大きく影響する可能性がある。したがって,非麻痺側上肢でのCPXは,従来の下肢運動に比べ,全身持久力に関わる循環機能や代謝機能の変化をより精確に捉えられる可能性がある。