第52回日本理学療法学術大会

講演情報

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) » ポスター発表

[P-KS-37] ポスター(基礎)P37

2017年5月13日(土) 15:30 〜 16:30 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT)

[P-KS-37-3] Upright姿位とRecumbent姿位における片脚サイクリング運動の急性効果の違い
―動脈スティフネスと筋血流に着目して―

鈴木 龍1, 西田 裕介2 (1.公立森町病院リハビリテーション科, 2.国際医療福祉大学成田保健医療学部理学療法学科)

キーワード:Upright, Recumbent, baPWV

【はじめに,目的】

厚生労働省や高血圧治療学会ガイドラインでは,動脈スティフネスの増大を基盤とする血管機能障害を有する高血圧治療として,有酸素運動を勧めている。有酸素運動の中でも,サイクリング運動が血流量を増加させやすく,動脈スティフネスに対する有用性が示されている。Sugawara, et al.,は,片脚サイクリング運動によって,非活動肢の動脈スティフネスに有意な変化は認められず,活動肢の動脈スティフネスのみが有意に低下したことを報告している。我々の先行研究では,Uprightの方がRecumbentよりも筋血流量を増大させ,動脈スティフネスを低下させることを示唆した。そこで,本研究の目的は,片脚でのサイクリング運動時の姿勢の違いが,非活動肢における筋血流量・動脈スティフネスへの効果を明らかにすることである。


【方法】

対象は健常成人男性7名(25.6±2.3歳)とした。対象者は事前に片脚(右下肢)駆動のUprightとRecumbentにて運動負荷試験を行った。両課題はランダムに実施した。プロトコルは安静臥位20分,HR reserve 40%負荷にてサイクリング運動30分,安静臥位30分とした。動脈スティフネスの指標として,脈波伝播速度(以下baPWV)を用い,運動前・直後・運動後15分・運動後30分に測定した。筋血流量の指標として,近赤外線分光装置を使用し,プローブを非活動肢である左外側広筋に設置した。安静時を基準として運動時・回復期のTotal Hb変化率を算出した。Total HbとbaPWVを相毎にTukeyの多重比較検定を用いて比較した。有意水準は危険率5%未満とした。


【結果】

Total Hb変化率はUprightにおいて,安静時と比較して運動時が高値を示す傾向にあり(p<0.1),運動時と比較し回復期が有意に低値を示した(p<0.05)。Recumbentでは安静時と比較して運動時が有意に高値を示し(p<0.05),運動時と比較して回復期が低値を示す傾向にあった(p<0.1)。baPWVはUprightにおいて,活動肢が安静時(1074.3±141.6cm/s)と比較して運動後15分(964±99.6cm/s)にて有意に低値を示した(p<0.05)。Recumbentにおいて,活動肢は安静時(1061.7±111.8cm/s)と比較して運動直後にて低値(978.1±130.2cm/s)を示す傾向にあった(p<0.1)。両課題とも非活動肢では有意な差を認めなかった。


【結論】

両課題とも,筋血流量は非活動肢において,運動時に増加し回復期に減少した。また,baPWVは活動肢のみ安静時と比較して運動後に減少した。よって,姿勢変化によって生じる静水圧や体幹筋の収縮の変化が非活動肢の動脈スティフネスに対して影響を与えないことを示唆した。また,非活動肢の動脈スティフネスに変化がなかったことは,エンドセリン-1濃度の上昇など局所性の要因が影響していると考える。本研究結果は,術後急性期や片麻痺等の影響で片脚のみ駆動可能な方にはUpright,Recumbentの駆動可能な方を推奨するなど,動脈スティフネスをより効果的に低下させるための運動処方の開発に資する基礎資料となり得るのではないかと考える。