[P-KS-37-5] 下肢他動運動が起立性低血圧に与える影響
Keywords:血圧改善, 下大静脈還流, ティルトテーブル
【はじめに,目的】
近年,起立性低血圧(Orthostatic hypotension以下OH)の改善に関する先行研究として,弾性ストッキング・腹帯・下肢の自動運動が有効とされている。しかし,他動運動がOHに効果的か明らかではない。そこで,我々は機械的に下肢他動運動が行える機能のついたティルトテーブルを試作した。本機器を用いて,起立時の機械的下肢他動運動(以下他動運動)がOHを有する若年健常者に有効かを検討することとした。
【方法】
事前調査(60°head up tiltを39名実施)によりOHの診断基準を満たす若年健常者は男女8名(年齢21.6±0.7歳)だった。この8名を対象とした。本研究のプロトコールは安静臥位を10分間,60°起立を2分間,起立しながらの他動運動を5分間,リカバリーを5分間の手順で実施した。また,本研究での他動運動はティルトテーブル上で両側交互に股関節・膝関節の屈曲伸展運動であり,頻度は設定された最大速度の18回/分で行った。測定項目は①一拍ごとの収縮期血圧・拡張期血圧・心拍数は非侵襲連続血圧計(MUB/メディセンス)を使用し,それぞれ1分間で平均した。②自覚症状は新たに考案した5段階の指標(5:気分がよい・4:普通・3:やや気分が悪い・2:気分が悪い・1:かなり気分が悪い)を用いた。これを安静時・60°起立時・他動運動時で聴取した。③静脈脈還流量は,超音波機器(TOSHIBA,Xario)を使用し,下大静脈の平均血流速度の測定と下大静脈血流の指標であるCollapse index{(最大血管径-最小血管径)÷最大血管径}を求めた。これを安静臥位時・60°起立・他動運動時に計測した。
【結果】
全体の収縮期血圧は,安静臥位時が平均131mmHg,60°起立時は平均115mmHgと有意に低下した。その後,他動運動時に平均121mmHgとなり,有意な差はないが上昇傾向を示した。また,拡張期血圧・心拍数には著明な変化は見られなかった。自覚症状の結果は,有意差はみられなかった(p=0.07)が,改善する傾向であった。下大静脈の平均血流速度・Collapse indexは安静臥位時を100%として,60°起立時・他動運動時のデータを変化率でみた。下大静脈の平均血流速度は安静臥位時に比べ60°起立時は47%となり有意に低下し,他動運動時は86%となり有意に増加した。またCollapse indexでも同様に60°起立時に有意に低下し,他動運動時に有意に増加を示した。
【結論】
ティルトテーブル上での他動運動がOHを有する若年健常者の静脈還流量を有意に増加させた。静脈還流量の増加が1回拍出量を増加させ,収縮期血圧の上昇傾向を示したものと推測された。また運動頻度の増加で下肢自動運動が困難な脊髄損傷等に応用できる可能性がある。
近年,起立性低血圧(Orthostatic hypotension以下OH)の改善に関する先行研究として,弾性ストッキング・腹帯・下肢の自動運動が有効とされている。しかし,他動運動がOHに効果的か明らかではない。そこで,我々は機械的に下肢他動運動が行える機能のついたティルトテーブルを試作した。本機器を用いて,起立時の機械的下肢他動運動(以下他動運動)がOHを有する若年健常者に有効かを検討することとした。
【方法】
事前調査(60°head up tiltを39名実施)によりOHの診断基準を満たす若年健常者は男女8名(年齢21.6±0.7歳)だった。この8名を対象とした。本研究のプロトコールは安静臥位を10分間,60°起立を2分間,起立しながらの他動運動を5分間,リカバリーを5分間の手順で実施した。また,本研究での他動運動はティルトテーブル上で両側交互に股関節・膝関節の屈曲伸展運動であり,頻度は設定された最大速度の18回/分で行った。測定項目は①一拍ごとの収縮期血圧・拡張期血圧・心拍数は非侵襲連続血圧計(MUB/メディセンス)を使用し,それぞれ1分間で平均した。②自覚症状は新たに考案した5段階の指標(5:気分がよい・4:普通・3:やや気分が悪い・2:気分が悪い・1:かなり気分が悪い)を用いた。これを安静時・60°起立時・他動運動時で聴取した。③静脈脈還流量は,超音波機器(TOSHIBA,Xario)を使用し,下大静脈の平均血流速度の測定と下大静脈血流の指標であるCollapse index{(最大血管径-最小血管径)÷最大血管径}を求めた。これを安静臥位時・60°起立・他動運動時に計測した。
【結果】
全体の収縮期血圧は,安静臥位時が平均131mmHg,60°起立時は平均115mmHgと有意に低下した。その後,他動運動時に平均121mmHgとなり,有意な差はないが上昇傾向を示した。また,拡張期血圧・心拍数には著明な変化は見られなかった。自覚症状の結果は,有意差はみられなかった(p=0.07)が,改善する傾向であった。下大静脈の平均血流速度・Collapse indexは安静臥位時を100%として,60°起立時・他動運動時のデータを変化率でみた。下大静脈の平均血流速度は安静臥位時に比べ60°起立時は47%となり有意に低下し,他動運動時は86%となり有意に増加した。またCollapse indexでも同様に60°起立時に有意に低下し,他動運動時に有意に増加を示した。
【結論】
ティルトテーブル上での他動運動がOHを有する若年健常者の静脈還流量を有意に増加させた。静脈還流量の増加が1回拍出量を増加させ,収縮期血圧の上昇傾向を示したものと推測された。また運動頻度の増加で下肢自動運動が困難な脊髄損傷等に応用できる可能性がある。