[P-KS-38-3] 骨格筋電気刺激が内頚動脈血流量に及ぼす影響の検討
Keywords:内頚動脈, 骨格筋電気刺激, 超音波診断装置
【はじめに,目的】
加齢に伴って脳血流が低下することが知られており,この加齢に伴う脳血流の低下は認知機能の低下につながると考えられている。先行研究において,脳血流量の増加や認知機能の改善を目的とした有酸素運動を中心とした運動療法の有効性が示されている。近年,痛みが少なく効果的に筋収縮を誘発する骨格筋電気刺激(Electrical Muscle Stimulation:EMS)が開発され,EMSによる筋肥大および糖代謝の亢進効果が報告されている。そこで本研究では,EMSにより誘発される筋収縮が有酸素運動と同様に脳血流を増加させる可能性に着目し,下肢を中心としたEMSが脳の栄養血管の一つである内頚動脈の血流量に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は神経学的及び整形外科的疾患を有さない健常成人男性7名とした。使用機器は低周波治療器(ホーマーイオン研究所社製オートテンズプロ)を使用し,安静背臥位で両側下肢に20分間のEMSを実施した。EMSの設定は,筋肥大を目的として実施されている周波数20Hz,パルス幅250μsec,duty cycle 5秒on 2秒offの指数関数的漸増波で20分間実施した。刺激強度に関しては対象者が痛みなく我慢できる最大の強度で実施した。超音波診断装置(東芝メディカルシステムズ社製Aplio 500)のパルスドプラ法により左内頚動脈の血流量(ml/min)と心拍数(拍/min)を測定した。また血流量を心拍数で除することで心拍1拍あたりの内頚動脈の血流量(ml/拍)を算出した。なお,データ解析には安定した5拍分のデータより血流量と心拍数を算出した。EMSが内頚動脈血流量および心拍数に与える影響を経時的に検討するために,開始前と開始後5分,10分,15分,終了直後に測定を行った。統計学的検定は,EMSにおける内頚動脈血流量の変化を検討するために,開始前の値に対する各時期の各指標の比較をBonferroni補正における対応のあるt検定を用いて比較した。
【結果】
内頚動脈の血流量は開始前が301.6±66.9ml/minに対して,開始5分後が344.4±74.6ml/min,開始10分後が344.6±74.7ml/min,開始15分後が350.9±93.3ml/min,終了直後は312.3±63.4ml/minであった。統計学的検定の結果,開始前と比較して開始後5,10,15分後の血流量は有意に高値を示したが,終了直後とは有意な差は認められなかった。また心拍数においては,血流量と同様に開始前と比較して開始後5,10,15分後は有意に高値を示したが,終了直後とは有意な差は認められなかった。一方,1拍あたりの内頚動脈の血流量には全ての時期において開始前と有意な変化は認められなかった。
【結論】
本研究結果より,下肢を中心としたEMSにより内頚動脈の血流量が増加し,その効果はEMSが終了すると消失することが明らかになった。心拍数と1拍あたりの内頚動脈血流量の変化の結果より,心拍数の増加が内頚動脈血流量の増加に繋がったことが明らかになった。
加齢に伴って脳血流が低下することが知られており,この加齢に伴う脳血流の低下は認知機能の低下につながると考えられている。先行研究において,脳血流量の増加や認知機能の改善を目的とした有酸素運動を中心とした運動療法の有効性が示されている。近年,痛みが少なく効果的に筋収縮を誘発する骨格筋電気刺激(Electrical Muscle Stimulation:EMS)が開発され,EMSによる筋肥大および糖代謝の亢進効果が報告されている。そこで本研究では,EMSにより誘発される筋収縮が有酸素運動と同様に脳血流を増加させる可能性に着目し,下肢を中心としたEMSが脳の栄養血管の一つである内頚動脈の血流量に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は神経学的及び整形外科的疾患を有さない健常成人男性7名とした。使用機器は低周波治療器(ホーマーイオン研究所社製オートテンズプロ)を使用し,安静背臥位で両側下肢に20分間のEMSを実施した。EMSの設定は,筋肥大を目的として実施されている周波数20Hz,パルス幅250μsec,duty cycle 5秒on 2秒offの指数関数的漸増波で20分間実施した。刺激強度に関しては対象者が痛みなく我慢できる最大の強度で実施した。超音波診断装置(東芝メディカルシステムズ社製Aplio 500)のパルスドプラ法により左内頚動脈の血流量(ml/min)と心拍数(拍/min)を測定した。また血流量を心拍数で除することで心拍1拍あたりの内頚動脈の血流量(ml/拍)を算出した。なお,データ解析には安定した5拍分のデータより血流量と心拍数を算出した。EMSが内頚動脈血流量および心拍数に与える影響を経時的に検討するために,開始前と開始後5分,10分,15分,終了直後に測定を行った。統計学的検定は,EMSにおける内頚動脈血流量の変化を検討するために,開始前の値に対する各時期の各指標の比較をBonferroni補正における対応のあるt検定を用いて比較した。
【結果】
内頚動脈の血流量は開始前が301.6±66.9ml/minに対して,開始5分後が344.4±74.6ml/min,開始10分後が344.6±74.7ml/min,開始15分後が350.9±93.3ml/min,終了直後は312.3±63.4ml/minであった。統計学的検定の結果,開始前と比較して開始後5,10,15分後の血流量は有意に高値を示したが,終了直後とは有意な差は認められなかった。また心拍数においては,血流量と同様に開始前と比較して開始後5,10,15分後は有意に高値を示したが,終了直後とは有意な差は認められなかった。一方,1拍あたりの内頚動脈の血流量には全ての時期において開始前と有意な変化は認められなかった。
【結論】
本研究結果より,下肢を中心としたEMSにより内頚動脈の血流量が増加し,その効果はEMSが終了すると消失することが明らかになった。心拍数と1拍あたりの内頚動脈血流量の変化の結果より,心拍数の増加が内頚動脈血流量の増加に繋がったことが明らかになった。