The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) » ポスター発表

[P-KS-38] ポスター(基礎)P38

Sat. May 13, 2017 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT)

[P-KS-38-5] 全身振動刺激実施における呼吸循環応答と筋循環動態

藤田 俊文 (弘前大学大学院保健学研究科)

Keywords:全身振動刺激, 呼吸循環応答, 筋循環動態

【はじめに,目的】

全身振動刺激(WBV)を用いた運動は,パフォーマンス,筋力,柔軟性向上などに有効であり,対象もスポーツアスリートから高齢者,脳卒中患者,パーキンソン病患者などに実施されてきている。しかしながら,運動器系の報告は多いが呼吸循環応答についての報告は十分ではなく,また末梢の筋循環動態も合わせて評価している報告はみられない。本研究では,WBV実施における呼吸循環応答と筋循環動態について調査することを目的とした。

【方法】

対象は健常成人11名とした。運動負荷は全身振動刺激装置を使用し振動周波数30Hzとした。研究プロトコルは,座位安静5分,振動なしスクワット姿勢(WBVなし)3分,安静時の状態に心拍数が戻るまで休憩,振動ありスクワット姿勢(WBVあり),終了後安静20分とした。なおWBVありでは自覚的運動強度Borgスケール【かなりきつい(17)】で運動終了とした。測定項目は実験開始から終了まで連続で呼気ガス分析,筋循環動態測定(内側広筋)を実施した。また,安静5分後,WBVなし直後,WBVあり直後,終了安静20分後で乳酸値測定を実施した。解析には,呼気ガス分析より,酸素摂取量(VO2),二酸化炭素排出量(VCO2),呼吸交換比(R)について,安静時5分時点,WBVなし3分時点,WBVあり3分時点の前30秒間の平均を算出した。筋循環動態測定より,酸素化ヘモグロビン(OxyHb),脱酸素化ヘモグロビン(DeoxyHb),トータルヘモグロビン(TotalHb)について,呼気ガス分析と同様にデータを算出した。呼気ガス分析,筋循環動態測定,乳酸値については,反復測定による分散分析後に多重比較検定を実施した。

【結果】

VO2,VCO2とも安静時よりもWBVなし,WBVありで有意に上昇し,またWBVなしよりもWBVありで有意に上昇した。Rは安静時およびWBVなしよりもWBVありで有意に高値であった。乳酸値についても,安静時およびWBVなしよりもWBVありで有意に高値であった。OxyHbは,安静時,WBVなし,WBVありよりも運動終了20分後で有意に高値を示した。DeoxyHbは,安静時,WBVあり,終了安静20分後よりもWBVなしで有意に高値を示した。TotalHbは,安静時,WBVありよりも終了安静20分後で有意に高値を示し,またWBVありよりもWBVなしで高値を示した。

【結論】

呼気ガス分析の結果より,WBVありのスクワット姿勢ではVO2,VCO2が増加し,さらにはRも平均0.9程度となっており糖質をエネルギー気質として多く利用した運動であることが示唆された。しかしながらBorg17までの運動を実施したにも関わらず乳酸値は平均2.2程度となっており,さらにはスクワット姿勢で内側広筋の酸素化ヘモグロビンが有意に増加していることから,運動中は有酸素性の代謝も亢進していると推測された。その傾向は運動終了後もみられた。以上より,WBVを用いた運動は,スクワット姿勢を保持するだけの運動であっても呼吸循環応答および筋循環動態を亢進させることが示唆された。