[P-KS-41-2] 歩行速度が制限される等尺性膝伸展筋力水準
Hand-Held Dynamometer測定値での検討
Keywords:歩行速度, 等尺性膝伸展筋力, Hand-Held Dynamometer
【はじめに,目的】
下肢筋力と歩行速度の間には密接な関連がある。Buchner(1992)らは,下肢筋力と歩行速度の関連は直線的ではなく,ある閾値を境として変化するモデルがより適合することを報告した。同様に,山崎(1998)らは一定の膝伸展筋力水準を下回る場合に,歩行速度が低下し始めることを報告した。しかし,先行研究の多くは高価で持ち運びが不可能な筋力測定器を用いており,先行研究のデータを活用できる場面は限られている。歩行速度が制限される筋力域が明らかとなれば,それが筋力低下によるものか,それ以外の要因によって引き起こされる問題なのかを判別できる。本研究の目的は,比較的安価で,操作性が簡便なHand-Held Dynamometerを用いて等尺性膝伸展筋力を測定し,筋力が歩行速度,歩幅,歩行率に与える影響について検討することである。
【方法】
対象は,高齢入院患者222名(男性116名,女性106名,平均年齢77.9±7.4歳)である。等尺性膝伸展筋力測定はアニマ社製μ-TasF-01を用い,加藤らの方法に準じて実施した。左右脚の平均筋力を体重で除した値を等尺性膝伸展筋力(kgf/kg)とした。最大歩行速度(m/sec),歩幅(cm),歩行率(step/min)は,10m歩行テストにて算出した。対象者を等尺性膝伸展筋力により,0.20kgf/kg未満群,0.30kgf/kg未満群(0.20-0.29kgf/kg),0.40kgf/kg未満群(0.30-0.39kgf/kg),0.50kgf/kg未満群(0.40-0.49kgf/kg),0.60kgf/kg未満群(0.50-0.59kgf/kg),0.60kgf/kg以上群の6群に区分し,各筋力区分における最大歩行速度,歩幅,歩行率の平均値を算出した。統計学的解析には,一元配置分散分析及びSteel-Dwass法を用いた。いずれも危険率5%未満を有意水準とした。
【結果】
0.20kgf/kg未満群,0.30kgf/kg未満群,0.40kgf/kg未満群,0.50kgf/kg未満群,0.60kgf/kg未満群,0.60kgf/kg以上群の順に,最大歩行速度は,0.44±0.13m/sec,0.64±0.25m/sec,0.97±0.29m/sec,1.26±0.35m/sec,1.51±0.26m/sec,1.61±0.25m/secであった。歩幅は,25.6±7.1cm,35.5±11.6cm,47.3±13.2cm,56.7±12.7cm,65.4±9.0cm,67.0±5.6cmであった。それぞれ0.60kgf/kg未満群と0.60kgf/kg以上群の間を除く全ての群間で有意差が認められた(p<0.05)。歩行率は同様の順に,103.9±16.8step/min,107.4±21.0step/min,123.1±20.0step/min,132.1±17.8step/min,139.1±18.0step/min,142.8±17.7step/minであった。0.50kgf/kg未満群,0.60kgf/kg未満群,0.60kgf/kg以上群の3群間及び0.40kgf/kg未満群と0.50kgf/kg未満群,0.20kgf/kg未満群と0.30kgf/kg未満群の間を除く群間で有意差が認められた(p<0.05)。
【結論】
等尺性膝伸展筋力0.50kgf/kgを上回る場合,筋力の多寡は歩行速度,歩幅,歩行率に影響を与えないものと考えられた。一方,0.50kgf/kgを下回る場合,筋力低下にしたがって,歩行速度,歩幅,歩行率は減少した。等尺性膝伸展筋力が歩行に与える影響は,筋力水準によって異なることが明らかとなった。
下肢筋力と歩行速度の間には密接な関連がある。Buchner(1992)らは,下肢筋力と歩行速度の関連は直線的ではなく,ある閾値を境として変化するモデルがより適合することを報告した。同様に,山崎(1998)らは一定の膝伸展筋力水準を下回る場合に,歩行速度が低下し始めることを報告した。しかし,先行研究の多くは高価で持ち運びが不可能な筋力測定器を用いており,先行研究のデータを活用できる場面は限られている。歩行速度が制限される筋力域が明らかとなれば,それが筋力低下によるものか,それ以外の要因によって引き起こされる問題なのかを判別できる。本研究の目的は,比較的安価で,操作性が簡便なHand-Held Dynamometerを用いて等尺性膝伸展筋力を測定し,筋力が歩行速度,歩幅,歩行率に与える影響について検討することである。
【方法】
対象は,高齢入院患者222名(男性116名,女性106名,平均年齢77.9±7.4歳)である。等尺性膝伸展筋力測定はアニマ社製μ-TasF-01を用い,加藤らの方法に準じて実施した。左右脚の平均筋力を体重で除した値を等尺性膝伸展筋力(kgf/kg)とした。最大歩行速度(m/sec),歩幅(cm),歩行率(step/min)は,10m歩行テストにて算出した。対象者を等尺性膝伸展筋力により,0.20kgf/kg未満群,0.30kgf/kg未満群(0.20-0.29kgf/kg),0.40kgf/kg未満群(0.30-0.39kgf/kg),0.50kgf/kg未満群(0.40-0.49kgf/kg),0.60kgf/kg未満群(0.50-0.59kgf/kg),0.60kgf/kg以上群の6群に区分し,各筋力区分における最大歩行速度,歩幅,歩行率の平均値を算出した。統計学的解析には,一元配置分散分析及びSteel-Dwass法を用いた。いずれも危険率5%未満を有意水準とした。
【結果】
0.20kgf/kg未満群,0.30kgf/kg未満群,0.40kgf/kg未満群,0.50kgf/kg未満群,0.60kgf/kg未満群,0.60kgf/kg以上群の順に,最大歩行速度は,0.44±0.13m/sec,0.64±0.25m/sec,0.97±0.29m/sec,1.26±0.35m/sec,1.51±0.26m/sec,1.61±0.25m/secであった。歩幅は,25.6±7.1cm,35.5±11.6cm,47.3±13.2cm,56.7±12.7cm,65.4±9.0cm,67.0±5.6cmであった。それぞれ0.60kgf/kg未満群と0.60kgf/kg以上群の間を除く全ての群間で有意差が認められた(p<0.05)。歩行率は同様の順に,103.9±16.8step/min,107.4±21.0step/min,123.1±20.0step/min,132.1±17.8step/min,139.1±18.0step/min,142.8±17.7step/minであった。0.50kgf/kg未満群,0.60kgf/kg未満群,0.60kgf/kg以上群の3群間及び0.40kgf/kg未満群と0.50kgf/kg未満群,0.20kgf/kg未満群と0.30kgf/kg未満群の間を除く群間で有意差が認められた(p<0.05)。
【結論】
等尺性膝伸展筋力0.50kgf/kgを上回る場合,筋力の多寡は歩行速度,歩幅,歩行率に影響を与えないものと考えられた。一方,0.50kgf/kgを下回る場合,筋力低下にしたがって,歩行速度,歩幅,歩行率は減少した。等尺性膝伸展筋力が歩行に与える影響は,筋力水準によって異なることが明らかとなった。