[P-KS-41-4] 歩行動態の変動性指標は運動介入後の歩行状態の変化を捉えることはできるのか?
介護予防教室に参加した地域在住高齢者を対象とした縦断的検討
Keywords:歩行分析, 歩行変動, 地域在住高齢者
【はじめに,目的】
近年,測定の自由度が高く経済性に優れる加速度計を用いた歩行解析が注目されている。我々は脳卒中患者や一般高齢者を対象に歩行中の体幹加速度を基にRoot mean square(RMS),Power spectrum entropy(PSEn)を算出し横断的に検討した結果,これらの指標の変動性は転倒リスクを反映する歩行動態指標であることを報告した。しかしながらその結果は,一時点における転倒リスク評価としての有用性が示唆されたに留まっており,運動介入により生じた歩行状態の変化を,縦断的に捉えることが可能であるのかは明らかではない。そこで本研究では,介護予防教室に参加した地域在住高齢者を対象に,教室参加前後の体幹加速度解析に基づく歩行動態指標の変動性の変化について検討することを目的とした。
【方法】
対象は東京都A市において開催された介護予防教室に参加した地域在住高齢者12名とした。そのうち最終評価結果に欠損のない8名を分析対象とした。教室は週1回(全10回)開催され,理学療法士と運動指導員が柔軟体操,筋力トレーニング,スクエアステップエクササイズなどを指導した。歩行能力はTimed up and go test(TUG),5m歩行テストにより評価し,TUGと5m歩行は単一課題条件に加えて,計算課題を課した二重課題条件の2条件で測定を行った。5m歩行テストの際にATR-Promotions社製小型無線多機能センサーTSND121を第3腰椎棘突起部に固定し,サンプリング周波数200Hzにて体幹加速度を記録した。記録波形はMathworks社製数値演算ソフトMATLAB2012を用い前処理を行った後,heel contact(HC)により生じた波形から,定常歩行中の歩行周期を同定し解析対象とした。標準化された各歩行周期データを7つの区間に分割し,各区間の加速度鉛直成分において加速度の大きさを表すRMS,歩行円滑性を表すPSEnを算出した。得られた5歩行周期分のデータを用いて各区間の変動係数(Coefficient of variation:CV)を算出した。統計解析にはIBM SPSS statistics ver.21を使用し,正規性の検定結果に基づきWilcoxon検定により各項目の前後比較を行い,有意水準は5%とした。
【結果】
Wilcoxon検定の結果,単一課題条件下のTUGと5m歩行速度に有意な改善を認め,二重課題条件には有意な変化を認めなかった。またPSEnのHC期CV値は単一課題条件,二重課題条件ともに有意に減少した。その他の区間とRMSのCV値には有意な変化を認めなかった。
【結論】
体幹加速度波形から算出した歩行円滑性を表すPSEnの変動性は,歩行速度の変化には表れない歩行状態の変化を捉えることが可能であることが示唆された。しかしながら本研究結果は少数例を対象に得られたものであり,大規模データによる継続的な検討が必要である。
近年,測定の自由度が高く経済性に優れる加速度計を用いた歩行解析が注目されている。我々は脳卒中患者や一般高齢者を対象に歩行中の体幹加速度を基にRoot mean square(RMS),Power spectrum entropy(PSEn)を算出し横断的に検討した結果,これらの指標の変動性は転倒リスクを反映する歩行動態指標であることを報告した。しかしながらその結果は,一時点における転倒リスク評価としての有用性が示唆されたに留まっており,運動介入により生じた歩行状態の変化を,縦断的に捉えることが可能であるのかは明らかではない。そこで本研究では,介護予防教室に参加した地域在住高齢者を対象に,教室参加前後の体幹加速度解析に基づく歩行動態指標の変動性の変化について検討することを目的とした。
【方法】
対象は東京都A市において開催された介護予防教室に参加した地域在住高齢者12名とした。そのうち最終評価結果に欠損のない8名を分析対象とした。教室は週1回(全10回)開催され,理学療法士と運動指導員が柔軟体操,筋力トレーニング,スクエアステップエクササイズなどを指導した。歩行能力はTimed up and go test(TUG),5m歩行テストにより評価し,TUGと5m歩行は単一課題条件に加えて,計算課題を課した二重課題条件の2条件で測定を行った。5m歩行テストの際にATR-Promotions社製小型無線多機能センサーTSND121を第3腰椎棘突起部に固定し,サンプリング周波数200Hzにて体幹加速度を記録した。記録波形はMathworks社製数値演算ソフトMATLAB2012を用い前処理を行った後,heel contact(HC)により生じた波形から,定常歩行中の歩行周期を同定し解析対象とした。標準化された各歩行周期データを7つの区間に分割し,各区間の加速度鉛直成分において加速度の大きさを表すRMS,歩行円滑性を表すPSEnを算出した。得られた5歩行周期分のデータを用いて各区間の変動係数(Coefficient of variation:CV)を算出した。統計解析にはIBM SPSS statistics ver.21を使用し,正規性の検定結果に基づきWilcoxon検定により各項目の前後比較を行い,有意水準は5%とした。
【結果】
Wilcoxon検定の結果,単一課題条件下のTUGと5m歩行速度に有意な改善を認め,二重課題条件には有意な変化を認めなかった。またPSEnのHC期CV値は単一課題条件,二重課題条件ともに有意に減少した。その他の区間とRMSのCV値には有意な変化を認めなかった。
【結論】
体幹加速度波形から算出した歩行円滑性を表すPSEnの変動性は,歩行速度の変化には表れない歩行状態の変化を捉えることが可能であることが示唆された。しかしながら本研究結果は少数例を対象に得られたものであり,大規模データによる継続的な検討が必要である。