[P-KS-45-4] 体幹伸展反復運動が多裂筋の循環動態と筋活動に及ぼす影響
Keywords:筋電図, NIRS, 腰痛
【はじめに,目的】
近年,非特異的腰痛症に対する立位での体幹伸展運動(伸展運動)が推奨されるが,生理学的機序は明確でない。我々は伸展運動にて多裂筋部の組織硬度が低下,血液循環が増加することを第50,51回本学会にて報告した。しかし,解剖学的知見にあるように椎間関節への刺激が多裂筋活動増加を引き起こす可能性があることから,伸展運動の適切な反復回数を循環動態と筋活動の変化から検討し,より適応となる病態を明確化することが課題となった。
本研究の目的は,多裂筋部の光学的分析と筋電図学的検討により,伸展運動の適切な反復回数と適応となる病態を検証することである。
【方法】
対象は健常成人男性16名(23.2±6.2歳)とした。立位から体幹を最大伸展位で保持(伸展相),そこから立位に戻り,立位を保持(立位相),これを1セットとする伸展運動を行わせた。伸展運動の反復回数は5セットとして,各姿勢を10秒間保持させた。近赤外線組織酸素モニタ装置(Pocket NIRS Duo,DynaSense社製)で,酸素化ヘモグロビン(Oxy-Hb),脱酸素化ヘモグロビン(deOxy-Hb),総ヘモグロビン(total-Hb),表面筋電計(TeleMyo2400,Noraxon社製)で筋活動を多裂筋部で計測した。各ヘモグロビン値は伸展運動前の立位時を0とした相対的変化,筋活動は伸展運動前における立位時の値で正規化し求めた。筋疲労の検討として,各セット後の立位時の筋活動周波数を求めた。各ヘモグロビン値の相対的変化と筋活動量を反復回数要因と姿勢要因(立位相と伸展相)の二元配置分散分析,筋活動周波数は一元配置分散分析,post hoc testはShafferの方法にて比較検討した。有意水準は5%とした。
【結果】
筋活動量は反復回数,姿勢,いずれの要因でも水準間に有意差を認めなかったが,伸展相4セット目が121.4%,5セット目が134.3%と1セット目と比較して増加する傾向を示した。筋活動周波数は有意差を認めなかった。各ヘモグロビン値は,姿勢要因でOxy-Hb,deOxy-Hb,total-Hbのいずれもが立位相と比較して伸展相で有意に増加した。反復回数要因ではdeOxy-Hb,total-Hbのいずれもが水準間で有意差を認めなかったが,Oxy-Hbの伸展相2セット目が1セット目よりも高値,立位相2セット目が4セット目よりも高値を示した。
【結論】
今後,腰痛者を対象とした検討を行う必要があるが,伸展運動は血液循環の増加が認められたことから,筋筋膜性腰痛などにおける多裂筋部の循環動態改善を期待できる。しかし,4回目以降の伸展運動では健常者でも筋活動の高まりとOxy-Hbの減少が確認されたことから,椎間関節性腰痛では伸展運動の反復が及ぼすメカニカルストレスに留意する必要性が示唆された。
近年,非特異的腰痛症に対する立位での体幹伸展運動(伸展運動)が推奨されるが,生理学的機序は明確でない。我々は伸展運動にて多裂筋部の組織硬度が低下,血液循環が増加することを第50,51回本学会にて報告した。しかし,解剖学的知見にあるように椎間関節への刺激が多裂筋活動増加を引き起こす可能性があることから,伸展運動の適切な反復回数を循環動態と筋活動の変化から検討し,より適応となる病態を明確化することが課題となった。
本研究の目的は,多裂筋部の光学的分析と筋電図学的検討により,伸展運動の適切な反復回数と適応となる病態を検証することである。
【方法】
対象は健常成人男性16名(23.2±6.2歳)とした。立位から体幹を最大伸展位で保持(伸展相),そこから立位に戻り,立位を保持(立位相),これを1セットとする伸展運動を行わせた。伸展運動の反復回数は5セットとして,各姿勢を10秒間保持させた。近赤外線組織酸素モニタ装置(Pocket NIRS Duo,DynaSense社製)で,酸素化ヘモグロビン(Oxy-Hb),脱酸素化ヘモグロビン(deOxy-Hb),総ヘモグロビン(total-Hb),表面筋電計(TeleMyo2400,Noraxon社製)で筋活動を多裂筋部で計測した。各ヘモグロビン値は伸展運動前の立位時を0とした相対的変化,筋活動は伸展運動前における立位時の値で正規化し求めた。筋疲労の検討として,各セット後の立位時の筋活動周波数を求めた。各ヘモグロビン値の相対的変化と筋活動量を反復回数要因と姿勢要因(立位相と伸展相)の二元配置分散分析,筋活動周波数は一元配置分散分析,post hoc testはShafferの方法にて比較検討した。有意水準は5%とした。
【結果】
筋活動量は反復回数,姿勢,いずれの要因でも水準間に有意差を認めなかったが,伸展相4セット目が121.4%,5セット目が134.3%と1セット目と比較して増加する傾向を示した。筋活動周波数は有意差を認めなかった。各ヘモグロビン値は,姿勢要因でOxy-Hb,deOxy-Hb,total-Hbのいずれもが立位相と比較して伸展相で有意に増加した。反復回数要因ではdeOxy-Hb,total-Hbのいずれもが水準間で有意差を認めなかったが,Oxy-Hbの伸展相2セット目が1セット目よりも高値,立位相2セット目が4セット目よりも高値を示した。
【結論】
今後,腰痛者を対象とした検討を行う必要があるが,伸展運動は血液循環の増加が認められたことから,筋筋膜性腰痛などにおける多裂筋部の循環動態改善を期待できる。しかし,4回目以降の伸展運動では健常者でも筋活動の高まりとOxy-Hbの減少が確認されたことから,椎間関節性腰痛では伸展運動の反復が及ぼすメカニカルストレスに留意する必要性が示唆された。