The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) » ポスター発表

[P-KS-46] ポスター(基礎)P46

Sun. May 14, 2017 1:00 PM - 2:00 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT)

[P-KS-46-5] 健常人における垂直跳び跳躍高と動作の技術的要因との関係

渡部 祥輝 (茅ヶ崎リハビリテーション専門学校理学療法学科)

Keywords:跳躍高, タイミング, 運動学的分析

【はじめに,目的】垂直跳び跳躍高は,その主要な力源である下肢関節に対する運動学的分析が多く行われてきた。近年,動作中の関節運動の調整や,タイミングといった技術的側面との関係が調査されている。先行研究では下肢関節の運動切り替え時間やタイミングが跳躍高に関係するとの報告がある(中俣,他 2014)。また,下肢体節間の運動の協調が運動パフォーマンスに影響するとの報告もみられるが,技術的要因が跳躍高と関係する運動学的要因と比べ,どの程度関係するかは明らかになっていない。そこで,本研究の目的は,運動学的要因や技術的要因と跳躍高との関係性を分析し,技術的要因がどの程度影響するかを明らかにすることとした。

【方法】対象は健常若年成人10名(男性4名,女性6名,年齢19.8±0.8)とした。測定には三次元動作解析装置(MA-3000,アニマ社),赤外線反射マーカー12個を用いた。課題動作は最大努力での垂直跳び動作とし,上肢は胸の前で組ませた。測定は練習後,3回実施した。解析区間は,左右の上後腸骨棘の中点に仮想点を設定し,その点が動き出した時点から第5中足骨に添付したマーカーが垂直方向に移動し始めた時点までとした。測定項目は跳躍高,股関節,膝関節,足関節の最大屈曲(背屈)角度,体幹,大腿,下腿体節(tr,th,sh)の最大傾斜角度,各体節の運動方向が切り替わった時間の差(tr-th,th-sh,sh-tr)とした。統計解析には,Free JSTAT(南江堂)を用いた。跳躍高とその他の項目の関連を調べるためにSpeamanの順位相関分析を行った。跳躍高を従属変数,多重共線性を考慮し,股関節角度,tr角度,tr-th,th-sh,sh-trを独立変数として重回帰分析(ステップワイズ法)を行った。統計学的有意水準は5%とした。

【結果】跳躍高に対し,th-sh(r=-0.77),tr角度(r=0.60),sh-tr(r=0.54),股関節角度(r=0.50)で有意な相関関係を認めた(p<0.05)。重回帰分析の結果,th-sh(標準偏回帰係数β=-0.52),tr角度(β=0.31)が抽出され,重回帰式の自由度決定済み決定係数はR2=0.54であった(p<0.01)。

【結論】本研究の結果,跳躍高には股関節屈曲角度やtr角度という運動学的要因だけでなく,体節間の運動方向切替時間の差であるth-shという技術的要因が強く関与していることが示唆された。th-shと跳躍高の関係は運動が切り替わった時間に対してshの運動が切り替わった時間が遅れるほど,跳躍高が高くなったことを示すものであった。これは,垂直跳び動作における主要な力源である股関節,膝関節で産生された力を,足関節が効率的に床に伝える反応であると言える。重回帰分析の結果,th-shが抽出されたことは,体節間の運動切り替え時間の差という技術的項目がこれまで示されてきた運動学的要因と同等かそれ以上に,垂直跳びパフォーマンスに重要な役割を持つことを示すものであると言える。