The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) » ポスター発表

[P-KS-48] ポスター(基礎)P48

Sun. May 14, 2017 1:00 PM - 2:00 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT)

[P-KS-48-3] 2点交互視運動の速度の違いが立位姿勢制御に与える影響

村上 隆一1, 島谷 康司2, 曽利 洋平3, 曽 智4, 辻 敏夫4 (1.国立病院機構福山医療センター, 2.県立広島大学保健福祉学部理学療法学科, 3.国立病院機構東広島医療センター, 4.広島大学大学院工学研究院)

Keywords:2点交互視運動, 眼球移動速度, 立位姿勢制御

【はじめに,目的】

ヒトは対象物の速い動きに対応する衝動性眼球運動,遅い動きの対象物を注視する追従性眼球運動,前庭動眼反射などを利用することによって視覚対象物を見失うことなく視認できる。先行研究では,衝動性眼球運動による姿勢制御,追従性眼球運動による姿勢制御の影響は報告されているものの,衝動性眼球運動と追従性眼球運動の姿勢制御の比較に関する報告それほど多くない。そこで,本研究では,2点交互視運動の速度の違いによる姿勢制御との関連性について検証を行った。

【方法】

被験者は若年健常者43名(男性23名,女性20名,平均年齢20.9±1.0歳)。重心動揺計測にはWiiボード(任天堂社製)を用いて閉脚立位とし,自作したLED追従装置(幅65cm,計測距離2.0m,被験者を起点としたLED2点間の角度は18度に設定)を用いて各被験者の目の高さに設定した水平方向の眼球運動誘導を行った。被験者に対して,「眼球運動追従装置の両端が交互に点灯します。頭部は動かさずになるべく眼だけを動かして白い光を追ってください。」との教示を行った。注視条件,2点交互視条件(1 Hz,2 Hz)の各条件3試行(計9試行)を被験者ごとにランダム化し計測を行った。各試行間2分間の休息を設けた。測定は1試行につき70秒間行い,測定開始と終了時の5秒間を除外した60秒間を前半30秒間・後半30秒間(以下,前半・後半)に分け解析に使用した。総軌跡長,外周面積,実効値面積(以下,RMS),X軸周波数(ピーク値)を使用し,各条件の3回の測定の平均値を算出した。3条件間比較には,二元配置分散分析およびBonferroni検定による多重比較検定を行った。なお,有意水準は5%未満とした。

【結果】

2点交互視条件間の比較では全解析項目において有意差を認めなかった。外周面積において後半注視条件と比較して後半1 Hz・2 Hz条件にて有意に低値を示した。RMSにおいては,前半・後半ともに注視条件と比較して1 Hz,2 Hz条件において有意に低値を示した。

【結論】

2点交互視運動の速度の違いは姿勢制御に影響を与えないことが示唆された。衝動性眼球運動は眼球の位置を意識的に細かく調節する必要がなく自己体動感に影響しにくく,視野の安定性に関与しているといわれている。このため,眼球運動速度が増加しても視野の安定性が保たれ重心動揺に影響しなかったことが考えられる。一方,2点交互視条件の外周面積・RMSは注視条件より有意に低値を示した。2点交互視運動の神経回路の活動が脳幹を経由して下腿伸筋群の活動を高めるとの報告があることから,若年健常者においては2点交互視条件で身体動揺が減少したと考えられる。今後は,健常高齢者や障がい者を対象として2点交互視条件で身体動揺の関係性を検証していく予定である。