[P-KS-49-3] 経皮的電気神経刺激(TENS)の刺激部位の違いが鎮痛効果に及ぼす影響に関する検討
Keywords:TENS, 疼痛, 刺激部位
【はじめに,目的】
鎮痛を目的とした電気刺激療法である経皮的電気神経刺激(TENS)では,即時的な鎮痛をもたらし得る門制御説に基づき,疼痛部位と同一の皮膚分節領域に電極を貼付する方法が多用されている。TENSの鎮痛機序としては,門制御説の他に,全身性の鎮痛に寄与し得る内因性オピオイドも関与する。特に,後者に着目すると,疼痛部位と関連の無い遠隔部位に電極を貼付してTENSを施行したとしても,内因性オピオイドの放出に十分な通電時間を確保することで鎮痛を得られる可能性が考えられるが,十分な検討は行われていないのが現状である。以上から本研究では,TENSの刺激部位の違いが鎮痛効果に及ぼす影響について検討することを目的とした。
【方法】
健常者18名を対象とし,疼痛発生部位と同一の皮膚分節領域にTENSを施行する条件(通常TENS),疼痛発生部位と関連のない遠隔部位へTENSを施行する条件(遠隔TENS),TENSを実施しない条件(コントロール)の3条件を無作為順序で日を改めて実施した。各条件ともに,対象者は馴化のための安静背臥位を5分間保持した後,NRSで6となる疼痛を発生させる電流強度での疼痛発生刺激(周波数3Hz,パルス幅40ms)を上腕二頭筋腱外側部の皮膚へ加えた。疼痛は1分間隔で4回発生させ,2回目の疼痛発生の30秒後にTENS(周波数100Hz,パルス幅250μsec,電流強度:無痛範囲内で最大)を開始し,各条件の終了まで継続した。TENSの刺激部位は,通常TENSでは疼痛部位と皮膚分節領域が一致する右上腕前外側部,遠隔TENSでは左下腿前外側部とした。4回目の疼痛発生後,疼痛発生刺激を休止し,安静背臥位を10分間保持した後に疼痛発生刺激を再開し,疼痛を1分間隔で2回発生させた。各条件の実施中,疼痛の主観的指標として4回目と6回目の疼痛のNRSを各疼痛の発生直後に聴取した。また,疼痛の客観的な指標として前頭前皮質の脳血流量(酸素化ヘモグロビン量:PF-HbO2)を測定した。その上で,各条件間で4回目と6回目の疼痛のNRSと,各条件でTENS未施行となる2回目の疼痛発生時のPF-HbO2の増加量を基準とした4回目と6回目の疼痛発生時のPF-HbO2の増加率を多重比較検定にて分析した。
【結果】
NRSとPF-HbO2の増加率の両指標において,通常及び遠隔TENSともにコントロールと比較して4回目と6回目の疼痛発生時での有意な減少もしくは減少傾向(4回目の疼痛発生時のPF-HbO2)を認めたが,両TENS間での明らかな差は認めなかった。
【結論】
本結果は,刺激部位の違いがTENSの鎮痛効果に影響しないことを示している。遠隔TENSにおいて,TENS開始直後に当たる4回目の疼痛に対する鎮痛は,門制御説や内因性オピオイドでは説明できず,TENSにより賦活された広汎性侵害抑制調節の関与が推察される。また,6回目の疼痛に対する鎮痛は,TENSの持続的な実施に伴い放出された内因性オピオイドに基づくと推察される。本結果から,臨床でのTENSの実施方法の多様化が期待される。
鎮痛を目的とした電気刺激療法である経皮的電気神経刺激(TENS)では,即時的な鎮痛をもたらし得る門制御説に基づき,疼痛部位と同一の皮膚分節領域に電極を貼付する方法が多用されている。TENSの鎮痛機序としては,門制御説の他に,全身性の鎮痛に寄与し得る内因性オピオイドも関与する。特に,後者に着目すると,疼痛部位と関連の無い遠隔部位に電極を貼付してTENSを施行したとしても,内因性オピオイドの放出に十分な通電時間を確保することで鎮痛を得られる可能性が考えられるが,十分な検討は行われていないのが現状である。以上から本研究では,TENSの刺激部位の違いが鎮痛効果に及ぼす影響について検討することを目的とした。
【方法】
健常者18名を対象とし,疼痛発生部位と同一の皮膚分節領域にTENSを施行する条件(通常TENS),疼痛発生部位と関連のない遠隔部位へTENSを施行する条件(遠隔TENS),TENSを実施しない条件(コントロール)の3条件を無作為順序で日を改めて実施した。各条件ともに,対象者は馴化のための安静背臥位を5分間保持した後,NRSで6となる疼痛を発生させる電流強度での疼痛発生刺激(周波数3Hz,パルス幅40ms)を上腕二頭筋腱外側部の皮膚へ加えた。疼痛は1分間隔で4回発生させ,2回目の疼痛発生の30秒後にTENS(周波数100Hz,パルス幅250μsec,電流強度:無痛範囲内で最大)を開始し,各条件の終了まで継続した。TENSの刺激部位は,通常TENSでは疼痛部位と皮膚分節領域が一致する右上腕前外側部,遠隔TENSでは左下腿前外側部とした。4回目の疼痛発生後,疼痛発生刺激を休止し,安静背臥位を10分間保持した後に疼痛発生刺激を再開し,疼痛を1分間隔で2回発生させた。各条件の実施中,疼痛の主観的指標として4回目と6回目の疼痛のNRSを各疼痛の発生直後に聴取した。また,疼痛の客観的な指標として前頭前皮質の脳血流量(酸素化ヘモグロビン量:PF-HbO2)を測定した。その上で,各条件間で4回目と6回目の疼痛のNRSと,各条件でTENS未施行となる2回目の疼痛発生時のPF-HbO2の増加量を基準とした4回目と6回目の疼痛発生時のPF-HbO2の増加率を多重比較検定にて分析した。
【結果】
NRSとPF-HbO2の増加率の両指標において,通常及び遠隔TENSともにコントロールと比較して4回目と6回目の疼痛発生時での有意な減少もしくは減少傾向(4回目の疼痛発生時のPF-HbO2)を認めたが,両TENS間での明らかな差は認めなかった。
【結論】
本結果は,刺激部位の違いがTENSの鎮痛効果に影響しないことを示している。遠隔TENSにおいて,TENS開始直後に当たる4回目の疼痛に対する鎮痛は,門制御説や内因性オピオイドでは説明できず,TENSにより賦活された広汎性侵害抑制調節の関与が推察される。また,6回目の疼痛に対する鎮痛は,TENSの持続的な実施に伴い放出された内因性オピオイドに基づくと推察される。本結果から,臨床でのTENSの実施方法の多様化が期待される。