[P-KS-49-5] 上肢筋血流量の増加に注目したキセノン光の星状神経節近傍照射と神経筋電気刺激の効果比較に関する検討
Keywords:キセノン光, 神経筋電気刺激, 筋血流量
【はじめに,目的】
キセノン光の星状神経節近傍照射(Xe-LISG)は交感神経活動抑制に伴う末梢血管拡張,神経筋電気刺激(NMES)は筋収縮に伴う筋ポンプ作用により上肢筋血流量の増加に寄与すると報告されている。しかし,作用機序の異なるXe-LISGとNMESの上肢筋血流量増加の程度を比較検討した報告は皆無である。以上から本研究の目的は,上肢筋血流量の増加に注目してXe-LISGとNMESの効果を比較検討することとした。
【方法】
健常者5名の上肢筋として左右の上腕二頭筋(BB)計10筋を対象とし,介入として以下の3条件を無作為順序で日を改めて実施した。条件1:Xe-LISGを実施する条件,条件2:NMESを実施する条件,条件3:Xe-LISGやNMESを実施しない条件。条件1では,対象者は安静仰臥位を15分間保持(馴化)後,Xe-LISG(左右の星状神経節が照射対象)を10分間受けた。キセノン光の照射条件は先行研究に準じ,発光間隔を最初1分間は1秒に1回,以降は3.5秒に1回,1回の発光時間とエネルギーを5 msec,18 Wとした。Xe-LISG終了後,安静仰臥位を10分間保持した。条件2では,対象者は馴化後に左右のBBに対するNMESを20分間受けた。NMESの刺激条件は先行研究に準じ,二相性対称性矩形波を用いてパルス幅250 μsec,周波数30 Hzとし,電流強度はBBが十分に収縮し無痛範囲で最大に調整した。オン・オフ時間はいずれも5秒間とした。条件3では,対象者は馴化後に安静背臥位をさらに20分間保持した。各条件の実施中,筋血流量の指標として左右のBBの酸素化ヘモグロビン量(BB-HbO2)を連続で測定した。また,交感神経活動の指標として左右のBBの筋硬度を各条件の実施前後で測定した。その上で,各条件でのBB-HbO2の馴化終了時の値を基準とした介入開始10分後および20分後での経時的変化と各条件間での介入前後でのBBの筋硬度の変化量(筋硬度変化量)を多重比較検定にて検討した。
【結果】
BB-HbO2については,条件1では馴化終了時と比較してXe-LISG開始10分後および20分後での有意な増加を認めたが,条件2および3では明らかな変化を認めなかった。筋硬度変化量については,条件2および条件3と比較して条件1でXe-LISGに伴う筋硬度の減少が大きく,条件3との間に有意差を認めた。
【結論】
本結果は,Xe-LISGが交感神経活動抑制に基づく上肢筋血流量の増加に寄与し得ることに加えて,筋血流量の増加に対するNMESの効果が確実性に欠ける可能性を示している。今後,筋血流量の増加に適したNMESの刺激条件に関する検討が求められる。最近,不動に伴う筋の拘縮の発生・進行を抑制する上で,筋血流量を維持・増加させることが重要と指摘されている。本結果から,Xe-LISGが上肢筋の拘縮の発生・進行の抑制に寄与し得る可能性も考えられ,今後の検証が必要である。
キセノン光の星状神経節近傍照射(Xe-LISG)は交感神経活動抑制に伴う末梢血管拡張,神経筋電気刺激(NMES)は筋収縮に伴う筋ポンプ作用により上肢筋血流量の増加に寄与すると報告されている。しかし,作用機序の異なるXe-LISGとNMESの上肢筋血流量増加の程度を比較検討した報告は皆無である。以上から本研究の目的は,上肢筋血流量の増加に注目してXe-LISGとNMESの効果を比較検討することとした。
【方法】
健常者5名の上肢筋として左右の上腕二頭筋(BB)計10筋を対象とし,介入として以下の3条件を無作為順序で日を改めて実施した。条件1:Xe-LISGを実施する条件,条件2:NMESを実施する条件,条件3:Xe-LISGやNMESを実施しない条件。条件1では,対象者は安静仰臥位を15分間保持(馴化)後,Xe-LISG(左右の星状神経節が照射対象)を10分間受けた。キセノン光の照射条件は先行研究に準じ,発光間隔を最初1分間は1秒に1回,以降は3.5秒に1回,1回の発光時間とエネルギーを5 msec,18 Wとした。Xe-LISG終了後,安静仰臥位を10分間保持した。条件2では,対象者は馴化後に左右のBBに対するNMESを20分間受けた。NMESの刺激条件は先行研究に準じ,二相性対称性矩形波を用いてパルス幅250 μsec,周波数30 Hzとし,電流強度はBBが十分に収縮し無痛範囲で最大に調整した。オン・オフ時間はいずれも5秒間とした。条件3では,対象者は馴化後に安静背臥位をさらに20分間保持した。各条件の実施中,筋血流量の指標として左右のBBの酸素化ヘモグロビン量(BB-HbO2)を連続で測定した。また,交感神経活動の指標として左右のBBの筋硬度を各条件の実施前後で測定した。その上で,各条件でのBB-HbO2の馴化終了時の値を基準とした介入開始10分後および20分後での経時的変化と各条件間での介入前後でのBBの筋硬度の変化量(筋硬度変化量)を多重比較検定にて検討した。
【結果】
BB-HbO2については,条件1では馴化終了時と比較してXe-LISG開始10分後および20分後での有意な増加を認めたが,条件2および3では明らかな変化を認めなかった。筋硬度変化量については,条件2および条件3と比較して条件1でXe-LISGに伴う筋硬度の減少が大きく,条件3との間に有意差を認めた。
【結論】
本結果は,Xe-LISGが交感神経活動抑制に基づく上肢筋血流量の増加に寄与し得ることに加えて,筋血流量の増加に対するNMESの効果が確実性に欠ける可能性を示している。今後,筋血流量の増加に適したNMESの刺激条件に関する検討が求められる。最近,不動に伴う筋の拘縮の発生・進行を抑制する上で,筋血流量を維持・増加させることが重要と指摘されている。本結果から,Xe-LISGが上肢筋の拘縮の発生・進行の抑制に寄与し得る可能性も考えられ,今後の検証が必要である。