The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) » ポスター発表

[P-KS-50] ポスター(基礎)P50

Sun. May 14, 2017 1:00 PM - 2:00 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT)

[P-KS-50-3] 変形性膝関節症モデルラットにおける軟骨細胞配列パターンの変化

髙橋 英明, 田巻 弘之, 大西 秀明 (新潟医療福祉大学運動医科学研究所)

Keywords:変形性関節症, 軟骨細胞, 細胞配列

【はじめに,目的】

変形性関節症(OA;osteoarthritis)は,関節軟骨の変性退行疾患で高齢者において最も多い骨関節疾患の一つである。そして,OAの根本的な治療戦略がないことから,軟骨細胞の振る舞いについて理解することは重要である。通常,関節軟骨細胞は,表層から石灰化層にいたるまで複雑に分化統制されており,局在別にその働きが異なる。そのため,関節軟骨細胞は表層の静止軟骨細胞から石灰化層の肥大軟骨細胞に至るまで柱状(カラム状)に規律性を持った配列パターンを成し細胞間において相互作用を有することが報告さている。一方,OAの病態においては,軟骨細胞のアポトーシスが誘導され,細胞数とOA重症度との間には関連があるとされているが,配列パターンに影響を及ぼすかについては定かではない。本研究では,関節軟骨の恒常性維持に細胞配列パターンが影響するかについて,OAモデルラットを用い空間自己相関分析による検討を行った。


【方法】

13週齢Wistar系雄性ラット(n=30)を用い,すべての処置は全身麻酔下にて実施した。OA誘発処置として,右膝関節の内側半月脛骨靭帯を切除し,右膝関節を不安定にせしめた。左膝関節には半月板剖出までのSham処置を実施した後に縫合した。術後0,1,2,4,8週目(各n=6)の各時期で灌流固定をおこない膝関節を採取した。試料は24時間の後固定後,エチレンジアミン四酢酸で脱灰し,パラフィン包埋した。各サンプルブロックは5μmの薄切切片を作成し,Safranin-O染色及びH-E染色を施した。観察には光学顕微鏡を用い,設置したCCDカメラにて脛骨内側面の組織画像を取得した。Safranin-O染色画像はOA重症度の半定量的評価(OARSIスコア),H-E染色画像は画像処理ソフトを用いて細胞密度と空間自己相関分析のZスコア(配列パターンの指標)を算出した。


【結果】

術後0週目と比較した結果,OARSIスコアは術後1週目より有意に高値を示した(P<0.05),細胞密度とZスコアは術後0週目と比較し,術後2週目より有意に低値を示した(P<0.05)。OARSIスコアと細胞密度の間に弱い負の相関関係を認めた(r=-0.41)。一方,OARSIスコアとZスコアの相関関係については,より強い負の相関関係を認めた(r=-0.62)。


【結論】

本研究の結果から関節軟骨の恒常性維持には軟骨細胞の数だけでなく,その配列パターンも重要な因子である可能性が示唆された。術後1週目では関節表面のfibrillationによるOARSIスコアの上昇が認められたが,細胞数や細胞配列には有意差を認めなかった。OA初期では,表層部の軟骨細胞において,アポトーシスとオートファジーシグナルの共局在が報告されていることから,術後1週目では細胞数と細胞配列には影響を及ぼさなかったと推察される。