[P-KS-51-1] 微弱電流刺激が伸張性収縮後の骨格筋の機能回復に及ぼす影響
Keywords:微弱電流刺激, 筋損傷, 興奮・収縮連関
【目的】
伸張性収縮(eccentric contraction:ECC)は,他の様式の収縮と比べ筋損傷が高い頻度で生じ,そのため,収縮によって低下した筋力の回復に長時間を要する。ECCによって損傷が起こる器官としては,筋小胞体(sacroplasmic reticulum:SR)あるいは筋原線維があげられ,これらではタンパクの分解が生ずることが報告されている。鎮痛や組織修復促進などを目的として,医療現場で用いられている微弱電流刺激は,筋疲労の回復にも効果があるとされているが,これを実証した研究はなされていない。そこで本研究では,微弱電流刺激処置により,ECC後の低下した張力が迅速に回復するか否か,また,回復が早まるとすれば,筋細胞内のどの器官に作用するのかについて,検討することを目的とした。
【方法】
実験には,Wistar系雄性ラット30匹を用いた。これらをECC負荷(eccentric:E)群(n=20)と無負荷(sedentary:Sed)群(n=10)に分け,E群には前脛骨筋にECCを負荷した。収縮を負荷した脚を刺激脚,負荷しなかった脚を安静脚とした。E群を,微弱電流刺激処置を施す群(E+treatment:ET)群(n=10)と施さない群(E+non-treatment:EN)群(n=10)に細分し,ET群の刺激脚には,ECC負荷直後から3日後にかけて,1日1回(計4回),1回20分間の微弱電流刺激処置を施した。Sed群については,左脚にのみ微弱電流刺激処置を行った。これらの処置を行った後に,前脛骨筋を摘出し,等尺性収縮力を測定した。また,SR Ca2+-ATPase活性,SR Ca2+放出・取り込み速度,ミオシンATPase活性およびCa2+濃度調節タンパク(ジヒロドピリジン受容体,ジャンクトフィリン1,リアノジン受容体1,SR Ca2+-ATPase)量の分析を行った。
【結果】
等尺性収縮力,SR Ca2+放出・取り込み速度,リアノジン受容体1量およびミオシンATPase活性については,EN群では,安静脚と比較し刺激脚において低値が認められた。一方,ET群では両脚間に有意な差異は認められなかった。総カルパイン活性(安静脚<刺激脚),ジャンクトフィリン1量(安静脚>刺激脚)については,ECCによる主効果が認められた。また,SR Ca2+-ATPase活性,SR Ca2+-ATPase量およびジヒドロピリジン受容体量については,EN群とET群との間および安静脚と刺激脚との間に,有意な差異は認められなかった。
【結論】
本研究で得られた重要な知見は,ECC負荷後,微弱電流刺激処置を3日間施すことによって,等尺性収縮力,ミオシンATPase活性およびSR Ca2+放出速度に低下がみられなかったことである。本研究の結果は,微弱電流刺激処置によって,筋疲労の回復が促進されること,また,その促進作用は筋原線維およびSRの機能の低下が抑制されるためであることを示唆するものである。
伸張性収縮(eccentric contraction:ECC)は,他の様式の収縮と比べ筋損傷が高い頻度で生じ,そのため,収縮によって低下した筋力の回復に長時間を要する。ECCによって損傷が起こる器官としては,筋小胞体(sacroplasmic reticulum:SR)あるいは筋原線維があげられ,これらではタンパクの分解が生ずることが報告されている。鎮痛や組織修復促進などを目的として,医療現場で用いられている微弱電流刺激は,筋疲労の回復にも効果があるとされているが,これを実証した研究はなされていない。そこで本研究では,微弱電流刺激処置により,ECC後の低下した張力が迅速に回復するか否か,また,回復が早まるとすれば,筋細胞内のどの器官に作用するのかについて,検討することを目的とした。
【方法】
実験には,Wistar系雄性ラット30匹を用いた。これらをECC負荷(eccentric:E)群(n=20)と無負荷(sedentary:Sed)群(n=10)に分け,E群には前脛骨筋にECCを負荷した。収縮を負荷した脚を刺激脚,負荷しなかった脚を安静脚とした。E群を,微弱電流刺激処置を施す群(E+treatment:ET)群(n=10)と施さない群(E+non-treatment:EN)群(n=10)に細分し,ET群の刺激脚には,ECC負荷直後から3日後にかけて,1日1回(計4回),1回20分間の微弱電流刺激処置を施した。Sed群については,左脚にのみ微弱電流刺激処置を行った。これらの処置を行った後に,前脛骨筋を摘出し,等尺性収縮力を測定した。また,SR Ca2+-ATPase活性,SR Ca2+放出・取り込み速度,ミオシンATPase活性およびCa2+濃度調節タンパク(ジヒロドピリジン受容体,ジャンクトフィリン1,リアノジン受容体1,SR Ca2+-ATPase)量の分析を行った。
【結果】
等尺性収縮力,SR Ca2+放出・取り込み速度,リアノジン受容体1量およびミオシンATPase活性については,EN群では,安静脚と比較し刺激脚において低値が認められた。一方,ET群では両脚間に有意な差異は認められなかった。総カルパイン活性(安静脚<刺激脚),ジャンクトフィリン1量(安静脚>刺激脚)については,ECCによる主効果が認められた。また,SR Ca2+-ATPase活性,SR Ca2+-ATPase量およびジヒドロピリジン受容体量については,EN群とET群との間および安静脚と刺激脚との間に,有意な差異は認められなかった。
【結論】
本研究で得られた重要な知見は,ECC負荷後,微弱電流刺激処置を3日間施すことによって,等尺性収縮力,ミオシンATPase活性およびSR Ca2+放出速度に低下がみられなかったことである。本研究の結果は,微弱電流刺激処置によって,筋疲労の回復が促進されること,また,その促進作用は筋原線維およびSRの機能の低下が抑制されるためであることを示唆するものである。