[P-KS-54-1] バランスボード上の姿勢戦略の順応効果
Keywords:バランスボード, 姿勢戦略, 順応
【はじめに,目的】
我々は,底部が円状のバランスボード練習にて,姿勢安定性が向上することを報告した(Mani, et al., 2016)。しかしながら,関節角度の変位量のみでは,姿勢戦略の順応効果は明確にはならなかった。バランスボード上の立位では,支持基底面(Base of support:BOS)が狭く,BOSが不規則に移動することから,足関節と股関節を協調的に用いる多関節戦略が用いられることが推察される(Ooteghem, et al., 2009)。本研究の目的は,楕円解析と相互相関関数を用いて,バランスボード上立位の姿勢戦略の順応効果を示すこととした。楕円解析とは,課題中の足関節と股関節角度を二次元座標にプロットし,楕円をフィッティングさせ,その楕円の形状や傾きから両関節間の関連性を明らかにする方法である(de Lima, et al., 2014)。本研究の結果は,バランスボード練習により構築される運動パターンを示す基礎的資料となる。
【方法】
健常若年者17名(男性12名,22.8±1.1歳)を対象とした。被験者は矢状方向のみ不安定となる底部が円状のボード上で,できるだけ長く安定して保つように指示された。各被験者90秒以上保持できるようになるまで実施した。三次元動作解析装置および床反力計を用いて,保持時間,足圧中心点と体重心間の距離(COP―COM間距離),および下肢関節可動域(Range of motion:ROM)を算出した。楕円解析として,足関節角度を横軸,股関節角度を縦軸とした二次元座標プロットから,楕円面積,離心率,中心座標,および長軸の傾きを算出した。離心率が大きく,長軸の傾きが±1に近いほど多関節戦略,ゼロに近いほど足関節戦略が優位であると解釈される。さらに,姿勢制御変数であるCOP―COM間距離の変化量(⊿COP―COM)と各関節運動(⊿ROM)との関連性を,相互相関関数を用いて,相関係数の最大値および時間差から分析した。1回目の施行(練習前)と90秒以上保持出来た最後の施行(練習後)を対応のあるt検定を用いて比較した。危険率は5%とした。
【結果】
平均保持時間は練習後有意に延長した(p<0.01)。楕円解析の結果,練習後,離心率は有意に増大し,楕円面積および長軸の傾きは有意に減少した(p<0.05)。さらに,相互相関関数の結果,⊿COP-COMと⊿足関節ROMとの相関係数が有意に増大し,時間差が有意に減少した。一方,股関節と膝関節は,いずれも⊿COP-COMとの相関係数に有意差を認めなかった。
【結論】
バランスボード練習により,股関節と足関節ともに関節運動は減少する一方,股関節に比して足関節を主体とした戦略となる。また,相互相関関数の結果から,練習後,足関節を協調的に動かし重心を制御する戦略となることが示された。BOSが狭くとも底部が円状のような足関節での制御が可能な場合,中枢神経系は足関節戦略を強調することで,姿勢安定性を高めたと考えられる。姿勢戦略の構築には,BOSの大きさや足関節の自由度を考慮した課題設定が重要となることが示唆される。
我々は,底部が円状のバランスボード練習にて,姿勢安定性が向上することを報告した(Mani, et al., 2016)。しかしながら,関節角度の変位量のみでは,姿勢戦略の順応効果は明確にはならなかった。バランスボード上の立位では,支持基底面(Base of support:BOS)が狭く,BOSが不規則に移動することから,足関節と股関節を協調的に用いる多関節戦略が用いられることが推察される(Ooteghem, et al., 2009)。本研究の目的は,楕円解析と相互相関関数を用いて,バランスボード上立位の姿勢戦略の順応効果を示すこととした。楕円解析とは,課題中の足関節と股関節角度を二次元座標にプロットし,楕円をフィッティングさせ,その楕円の形状や傾きから両関節間の関連性を明らかにする方法である(de Lima, et al., 2014)。本研究の結果は,バランスボード練習により構築される運動パターンを示す基礎的資料となる。
【方法】
健常若年者17名(男性12名,22.8±1.1歳)を対象とした。被験者は矢状方向のみ不安定となる底部が円状のボード上で,できるだけ長く安定して保つように指示された。各被験者90秒以上保持できるようになるまで実施した。三次元動作解析装置および床反力計を用いて,保持時間,足圧中心点と体重心間の距離(COP―COM間距離),および下肢関節可動域(Range of motion:ROM)を算出した。楕円解析として,足関節角度を横軸,股関節角度を縦軸とした二次元座標プロットから,楕円面積,離心率,中心座標,および長軸の傾きを算出した。離心率が大きく,長軸の傾きが±1に近いほど多関節戦略,ゼロに近いほど足関節戦略が優位であると解釈される。さらに,姿勢制御変数であるCOP―COM間距離の変化量(⊿COP―COM)と各関節運動(⊿ROM)との関連性を,相互相関関数を用いて,相関係数の最大値および時間差から分析した。1回目の施行(練習前)と90秒以上保持出来た最後の施行(練習後)を対応のあるt検定を用いて比較した。危険率は5%とした。
【結果】
平均保持時間は練習後有意に延長した(p<0.01)。楕円解析の結果,練習後,離心率は有意に増大し,楕円面積および長軸の傾きは有意に減少した(p<0.05)。さらに,相互相関関数の結果,⊿COP-COMと⊿足関節ROMとの相関係数が有意に増大し,時間差が有意に減少した。一方,股関節と膝関節は,いずれも⊿COP-COMとの相関係数に有意差を認めなかった。
【結論】
バランスボード練習により,股関節と足関節ともに関節運動は減少する一方,股関節に比して足関節を主体とした戦略となる。また,相互相関関数の結果から,練習後,足関節を協調的に動かし重心を制御する戦略となることが示された。BOSが狭くとも底部が円状のような足関節での制御が可能な場合,中枢神経系は足関節戦略を強調することで,姿勢安定性を高めたと考えられる。姿勢戦略の構築には,BOSの大きさや足関節の自由度を考慮した課題設定が重要となることが示唆される。