[P-KS-54-2] 視空間傾斜による身体傾斜
立位と歩行の比較
Keywords:視覚, 立位, 歩行
【はじめに,目的】視空間傾斜は立位時の身体重心を視空間傾斜側に偏倚させると報告されている(Tsuruhara, et al., 2006)。一方,視空間傾斜が歩行に与える影響は明らかではない。我々は没入型ヘッドマウントディスプレイを用いて視空間傾斜を生じさせるシステムを開発し,視空間傾斜による身体傾斜の立位と歩行での違いを明らかにすることを目的として研究を行った。
【方法】対象は右利きの健常男生11名で,年齢は21.5±1.5歳であった。対象者は前方にステレオカメラ(しのびや社製ovrvision 1)を搭載した没入型ヘッドマウントディスプレイ(Oculus VR社製Oculus Rift DK2)を装着し,ステレオカメラでとらえた対象者前方の視空間の映像をそのまま提示される条件(非傾斜条件)と,オリジナルのプログラムで左に20度傾斜させた映像を提示される条件(傾斜条件)で,5秒間の立位保持と6mの歩行を各2試行実施した。その際,頭部と体幹と骨盤の側方傾斜角度を三次元動作解析装置(Vicon社製Vicon MX)で測定した。測定は非傾斜条件での立位,非傾斜条件での歩行,傾斜条件での立位,傾斜条件での歩行の順に実施した。データ解析では頭部と体幹と骨盤の側方傾斜角度を,立位での5秒間の平均値,歩行時の両脚支持期(右下肢前),単脚支持期(右下肢),両脚支持期(左下肢前),単脚支持期(左下肢)での最大値および最小値について,それぞれ2試行の平均値を求め,傾斜条件と非傾斜条件の差を効果量とした。その際,左傾斜を正の値,右傾斜を負の値とした。求めた頭部と体幹と骨盤の側方傾斜角度の効果量について,立位での5秒間の平均値を対照とし,両脚支持期(右下肢前),単脚支持期(右下肢),両脚支持期(左下肢前),単脚支持期(左下肢)での最大値および最小値との間で比較した。検定にはDunnetのt検定による多重比較(両側)を用い,有意水準は5%とした。
【結果】頭部および体幹の側方傾斜角度の効果量はいずれの歩行周期においても最大値,最小値ともに立位より大きかった(p<0.05)。骨盤の側方傾斜角度の効果量は単脚支持期(右下肢),両脚支持期(左下肢前),単脚支持期(左下肢)の最大値と単脚支持期(左下肢)の最小値において立位より大きかったが(p<0.05),両脚支持期(右下肢前)の最大値と両脚支持期(右下肢前),単脚支持期(右下肢),両脚支持期(左下肢前)の最小値については立位と有意差がなかった。
【結論】視空間傾斜による身体の傾斜は立位時よりも歩行時の方が大きかった。歩行では,左右の下肢の荷重感覚を比較できる立位よりも,体性感覚による視空間傾斜の代償が困難であることが要因として考えられる。加えて,前進することに注意を向ける歩行は,立位よりも姿勢の調整に向けられる注意容量が減少すると考えられる。本研究から,歩行は立位よりも体性感覚による視空間傾斜の代償が困難な課題と考えられた。
【方法】対象は右利きの健常男生11名で,年齢は21.5±1.5歳であった。対象者は前方にステレオカメラ(しのびや社製ovrvision 1)を搭載した没入型ヘッドマウントディスプレイ(Oculus VR社製Oculus Rift DK2)を装着し,ステレオカメラでとらえた対象者前方の視空間の映像をそのまま提示される条件(非傾斜条件)と,オリジナルのプログラムで左に20度傾斜させた映像を提示される条件(傾斜条件)で,5秒間の立位保持と6mの歩行を各2試行実施した。その際,頭部と体幹と骨盤の側方傾斜角度を三次元動作解析装置(Vicon社製Vicon MX)で測定した。測定は非傾斜条件での立位,非傾斜条件での歩行,傾斜条件での立位,傾斜条件での歩行の順に実施した。データ解析では頭部と体幹と骨盤の側方傾斜角度を,立位での5秒間の平均値,歩行時の両脚支持期(右下肢前),単脚支持期(右下肢),両脚支持期(左下肢前),単脚支持期(左下肢)での最大値および最小値について,それぞれ2試行の平均値を求め,傾斜条件と非傾斜条件の差を効果量とした。その際,左傾斜を正の値,右傾斜を負の値とした。求めた頭部と体幹と骨盤の側方傾斜角度の効果量について,立位での5秒間の平均値を対照とし,両脚支持期(右下肢前),単脚支持期(右下肢),両脚支持期(左下肢前),単脚支持期(左下肢)での最大値および最小値との間で比較した。検定にはDunnetのt検定による多重比較(両側)を用い,有意水準は5%とした。
【結果】頭部および体幹の側方傾斜角度の効果量はいずれの歩行周期においても最大値,最小値ともに立位より大きかった(p<0.05)。骨盤の側方傾斜角度の効果量は単脚支持期(右下肢),両脚支持期(左下肢前),単脚支持期(左下肢)の最大値と単脚支持期(左下肢)の最小値において立位より大きかったが(p<0.05),両脚支持期(右下肢前)の最大値と両脚支持期(右下肢前),単脚支持期(右下肢),両脚支持期(左下肢前)の最小値については立位と有意差がなかった。
【結論】視空間傾斜による身体の傾斜は立位時よりも歩行時の方が大きかった。歩行では,左右の下肢の荷重感覚を比較できる立位よりも,体性感覚による視空間傾斜の代償が困難であることが要因として考えられる。加えて,前進することに注意を向ける歩行は,立位よりも姿勢の調整に向けられる注意容量が減少すると考えられる。本研究から,歩行は立位よりも体性感覚による視空間傾斜の代償が困難な課題と考えられた。