The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) » ポスター発表

[P-KS-55] ポスター(基礎)P55

Sun. May 14, 2017 1:00 PM - 2:00 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT)

[P-KS-55-4] 脊椎脊髄疾患におけるLight Touchが立位の姿勢動揺に及ぼす効果

飯塚 隆充1,2, 大角 哲也1,2, 田島 健太郎1,2, 原田 亮1, 臼田 滋2 (1.榛名荘病院リハビリテーション部, 2.群馬大学大学院保健学研究科)

Keywords:light touch, 立位バランス, 姿勢制御

【はじめに,目的】

固定点への軽い指先接触(light touch:LT)で立位姿勢動揺が減少し,不安定方向への接触ではより動揺が減少することが報告されているが,機能障害を有する患者においてその効果は十分に検証されていない。本研究の目的は,脊椎脊髄疾患患者を対象にLTが立位の姿勢動揺に及ぼす影響とLTの実行の可否を分析することである。



【方法】

対象は脊椎脊髄疾患入院患者28名(男性10名,69.5±9.14歳,頸髄疾患17名,胸腰髓疾患11名)で,30秒以上の開脚立位を保持可能なものとした。立位は両上肢を下垂したNo Touch(NT)条件,大転子の高さの水平面に接触するLT条件,肘関節90°屈曲位で前方の水平面に接触するHorizontal LT(HLT)条件と前方の垂直面に接触するVertical LT(VLT)条件の上肢の4条件と,開閉眼を組み合わせた計8条件とした。足位は開脚立位とし,LTは利き腕または触覚が鋭敏であった側の示指にて計量器KS-243(DRETEC社製)に1N以下の接触とした。姿勢動揺は重心動揺計G-7100(ANIMA社製)にて30秒間(20Hz)測定した。全LT条件が遂行可能であった可能群の総軌跡長と前後・左右方向における動揺速度のroot mean square(RMS速度)に対し,反復測定二元配置分散分析(上肢条件×視覚条件)を行った。また,可能群といずれかの条件が遂行不可能であった不可能群の,年齢,疾患部位,筋力(ASIA機能障害尺度のC5-T1とL2-S1領域合計点),触覚(Semmes-Weinstein Monofilamentによる示指と母趾指腹),振動覚(Rydel Seiffer音叉による橈骨茎状突起と内果)に対し,χ2検定またはMann-WhitneyのU検定にて群間比較を行った。統計解析にはIBM SPSS Statistics 23を用い,有意水準は5%とした。



【結果】

LT可能群は20名(67.8±10.0歳),不可能群は8名(73.8±4.5歳)であった。総軌跡長(cm)の平均値±標準偏差は,開眼でNTが52.5±21.3,LTが37.0±13.8,HLTが34.7±16.3,VLTが35.5±14.9,閉眼で各102.6±69.8,57.4±26.0,63.8±40.5,57.1±25.6であった。RMS速度(cm/s)の前後方向は,開眼で1.72±0.72,1.22±0.48,1.17±0.58,1.18±0.55,閉眼で3.53±2.47,1.98±1.00,2.20±1.39,1.98±0.90,左右方向は,開眼で1.13±0.57,0.78±0.37,0.71±0.35,0.73±0.31,閉眼で2.06±1.52,1.10±0.50,1.26±0.50,1.14±0.70であった。全て交互作用が有意であり,視覚条件と上肢条件間にそれぞれ有意差を認め,NTとLT3条件間で有意差を認めた。群間比較では,年齢とC5-T1の筋力には有意差を認めず,疾患部位とも有意な関連を認めなかった。L2-S1の筋力,触覚,振動覚では不可能群に有意な機能低下を認めた。



【結論】

LTを実行可能なだけの身体機能を有する場合,開脚立位においては接触方向に関わらず同程度の効果を及ぼすことが示唆された。また,LTを実行可能とする要因には,上肢は接触部位の触覚と接触肢の深部感覚,下肢は筋力と足底の触覚と足関節の深部感覚が含まれていることが示唆された。