[P-MT-01-3] 変形性膝関節症における内側広筋の筋輝度と2ステップテストの関係
Keywords:ロコモティブシンドローム, 筋輝度, 2ステップ値
【はじめに,目的】
超高齢化社会を迎え運動器疾患患者が急増し,歩行・移動障害を抱えている。中でも,ロコモティブシンドローム(以下,ロコモ)やサルコペニアを原疾患に合併している患者は多いと考えられている。変形性膝関節症(以下,膝OA)もロコモの構成要素として挙げられる。また,Fukumotoらは膝OAにおいて,大腿四頭筋の筋輝度が高くなっていることを報告しており,サルコペニアの発生が疑われる。我々は膝OAにおいて,疼痛などの機能障害とサルコペニア,ロコモの関係性の理解が保存療法において重要と考えている。しかし,膝OAでは関節水腫の影響による内側広筋(VM)の萎縮や歩行中の異常な筋活動も生じるため,膝OAとロコモ,サルコペニアの関係は明らかではない。そこで,本研究の目的は膝OAにおけるVMの輝度とロコモとの関係を検討することとした。
【方法】
対象は1名の整形外科医により片側膝OAと診断された膝OA群12名24膝(年齢72.7±7.8歳,身長158.3±9.7cm,体重59.5±14.8kg)と下肢に既往のない健常高齢者13名の右13膝(年齢68.9±5.3歳,身長160.3±11.7cm,体重61.2±10.1kg)とした。膝OAの重症度はKellgren‒Lawrence分類のGradeIIが5名,GradeIIIが7名であった。VM筋輝度の測定には超音波診断装置(日立アロカ社製Noblus)を使用した。撮像はB-modeで,リニアプローブ(8~15MHz)を用いてGainなど画像条件は同一設定とした。VMの撮像部位はEngelinaらの方法に従い,VMの筋輝度を測定した。OA群は患側・健側に分け,患側と健側VM輝度とControl群のVM輝度を比較検討した。さらに村永の方法に準じて2ステップテストを実施し,OA群とControl群で比較検討した。統計学的手法には対応のないt検定を用い,有意水準を5%未満とした。また,患側と健側VMの輝度と2ステップテストの相関関係をPearsonの積率相関係数を用い検討した。
【結果】
患側VMの輝度は109.0±45.1,Control群77.1±29.6で有意差を認めた(p<0.05)。健側VMの輝度は83.4±35.9でControl群77.1±29.6と有意差を認めなかった。2ステップ値は,OA群0.90±0.16,Control群1.06±0.16で有意差を認めた(p<0.05)。患側VMの輝度と2ステップテストの関係はr=-0.39と弱い負の相関関係を認めた(p<0.05)。
【結論】
膝OA群は,2ステップ値に有意差があり,ロコモが進行していることが伺えた。また患側のみVMは高輝度となっており,VMに関しては,サルコペニアより疾患特異的な筋の質的変化が生じていると考えた。また,VM輝度と2ステップ値には弱い相関関係しか認めなかった。つまり,VM輝度が改善しても,ロコモの状態は改善されないことが示唆された。膝OAではVM以外の筋にも過活動や同時収縮の増強などの変化が生じるため,このような変化がロコモに関わっている可能性がある。すなわち,膝OAの保存療法では,疾患特異的な症状の改善と活動量の維持を独立して実施することが重要と考えた。
超高齢化社会を迎え運動器疾患患者が急増し,歩行・移動障害を抱えている。中でも,ロコモティブシンドローム(以下,ロコモ)やサルコペニアを原疾患に合併している患者は多いと考えられている。変形性膝関節症(以下,膝OA)もロコモの構成要素として挙げられる。また,Fukumotoらは膝OAにおいて,大腿四頭筋の筋輝度が高くなっていることを報告しており,サルコペニアの発生が疑われる。我々は膝OAにおいて,疼痛などの機能障害とサルコペニア,ロコモの関係性の理解が保存療法において重要と考えている。しかし,膝OAでは関節水腫の影響による内側広筋(VM)の萎縮や歩行中の異常な筋活動も生じるため,膝OAとロコモ,サルコペニアの関係は明らかではない。そこで,本研究の目的は膝OAにおけるVMの輝度とロコモとの関係を検討することとした。
【方法】
対象は1名の整形外科医により片側膝OAと診断された膝OA群12名24膝(年齢72.7±7.8歳,身長158.3±9.7cm,体重59.5±14.8kg)と下肢に既往のない健常高齢者13名の右13膝(年齢68.9±5.3歳,身長160.3±11.7cm,体重61.2±10.1kg)とした。膝OAの重症度はKellgren‒Lawrence分類のGradeIIが5名,GradeIIIが7名であった。VM筋輝度の測定には超音波診断装置(日立アロカ社製Noblus)を使用した。撮像はB-modeで,リニアプローブ(8~15MHz)を用いてGainなど画像条件は同一設定とした。VMの撮像部位はEngelinaらの方法に従い,VMの筋輝度を測定した。OA群は患側・健側に分け,患側と健側VM輝度とControl群のVM輝度を比較検討した。さらに村永の方法に準じて2ステップテストを実施し,OA群とControl群で比較検討した。統計学的手法には対応のないt検定を用い,有意水準を5%未満とした。また,患側と健側VMの輝度と2ステップテストの相関関係をPearsonの積率相関係数を用い検討した。
【結果】
患側VMの輝度は109.0±45.1,Control群77.1±29.6で有意差を認めた(p<0.05)。健側VMの輝度は83.4±35.9でControl群77.1±29.6と有意差を認めなかった。2ステップ値は,OA群0.90±0.16,Control群1.06±0.16で有意差を認めた(p<0.05)。患側VMの輝度と2ステップテストの関係はr=-0.39と弱い負の相関関係を認めた(p<0.05)。
【結論】
膝OA群は,2ステップ値に有意差があり,ロコモが進行していることが伺えた。また患側のみVMは高輝度となっており,VMに関しては,サルコペニアより疾患特異的な筋の質的変化が生じていると考えた。また,VM輝度と2ステップ値には弱い相関関係しか認めなかった。つまり,VM輝度が改善しても,ロコモの状態は改善されないことが示唆された。膝OAではVM以外の筋にも過活動や同時収縮の増強などの変化が生じるため,このような変化がロコモに関わっている可能性がある。すなわち,膝OAの保存療法では,疾患特異的な症状の改善と活動量の維持を独立して実施することが重要と考えた。