[P-MT-01-5] 2ステップ値に影響を及ぼす因子の検討
Keywords:ロコモティブシンドローム, 2スップテスト, 高齢者
【はじめに,目的】
「ロコモティブシンドローム(ロコモ)」予防の啓発と現在または将来のロコモの危険性を判定するための指針の必要性から「ロコモ度テスト」が策定された。このテストの1つである「2ステップテスト」は下肢の筋力やバランス能力などを含めた歩行能力を総合的に評価するテストである。しかし,2ステップ値と身体機能やバランス能力との関連性を実際に検討されたものは見当たらない。本研究では地域高齢者を対象として,2ステップ値と筋力,感覚機能,バランス能力の関連性について明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は地域在住高齢者91人(男性29人,女性62人,年齢76.6±7.6歳,BMI23.7±3.0kg/m2)であった。計測項目はロコモ度テストとして2ステップテストを行った。2ステップテストは原法に従い実施し,2歩幅を身長で正規化した値を2ステップ値とした。機能として,筋力は専用の装置を用いて下肢伸展拳上筋力(ASLR)と足趾把持筋力(TG),さらに5回椅子立ち座りテスト(CS-5),握力を計測した。感覚機能はモノフィラメントを用いて足底5ヶ所を刺激し,その触覚識別率を算出した。またバランス能力として片脚立位時間を計測した。統計学的検討として,2ステップ値と年齢,BMI,筋力,感覚機能,バランス能力の関連性について,Pearson積率相関係数を用いて検討した。次いで,2ステップ値を従属変数とし,単相関にて2ステップ値と有意な関連性が認められた項目を独立変数として,重回帰分析(ステップワイズ法)を用いて2ステップ値に影響を及ぼす因子を抽出した。すべて5%水準にて有意判定を行った。
【結果】
2ステップ値と有意な関連性が認められたのは,年齢(r=-0.63,p<0.0001),ASLR(r=0.52,p<0.0001),TG(r=0.44,p<0.0001),CS-5(r=-0.62,p<0.0001),握力(r=0.57,p<0.0001),片脚立位時間(r=0.54,p<0.0001)であった。重回帰分析の結果,2ステップ値の有意な独立変数として年齢(β=-0.50,p<0.0001)と握力(β=0.32,p<0.01)であった(R2=0.48,調整済みR2=0.47)。
【結論】
本研究結果より,2ステップテストの目的に記載されているとおり,2ステップ値は下肢筋力やバランス能力と相関関係が認められた。しかし,重回帰分析の結果,2ステップ値の有意な独立変数として年齢と握力のみが抽出された。本研究の対象者には80歳以上の高齢者も含んでおり,加齢に伴う筋力やバランス能力の低下が強く反映されたものと考える。握力は,立位バランスや歩行能力などの全身的な機能を反映する指標である。本結果より,80歳以上の高齢者を対象として移動能力を評価する場合,ロコモ度テストに加え,簡便に計測ができる握力の計測を追加することの有用性が示唆された。
「ロコモティブシンドローム(ロコモ)」予防の啓発と現在または将来のロコモの危険性を判定するための指針の必要性から「ロコモ度テスト」が策定された。このテストの1つである「2ステップテスト」は下肢の筋力やバランス能力などを含めた歩行能力を総合的に評価するテストである。しかし,2ステップ値と身体機能やバランス能力との関連性を実際に検討されたものは見当たらない。本研究では地域高齢者を対象として,2ステップ値と筋力,感覚機能,バランス能力の関連性について明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は地域在住高齢者91人(男性29人,女性62人,年齢76.6±7.6歳,BMI23.7±3.0kg/m2)であった。計測項目はロコモ度テストとして2ステップテストを行った。2ステップテストは原法に従い実施し,2歩幅を身長で正規化した値を2ステップ値とした。機能として,筋力は専用の装置を用いて下肢伸展拳上筋力(ASLR)と足趾把持筋力(TG),さらに5回椅子立ち座りテスト(CS-5),握力を計測した。感覚機能はモノフィラメントを用いて足底5ヶ所を刺激し,その触覚識別率を算出した。またバランス能力として片脚立位時間を計測した。統計学的検討として,2ステップ値と年齢,BMI,筋力,感覚機能,バランス能力の関連性について,Pearson積率相関係数を用いて検討した。次いで,2ステップ値を従属変数とし,単相関にて2ステップ値と有意な関連性が認められた項目を独立変数として,重回帰分析(ステップワイズ法)を用いて2ステップ値に影響を及ぼす因子を抽出した。すべて5%水準にて有意判定を行った。
【結果】
2ステップ値と有意な関連性が認められたのは,年齢(r=-0.63,p<0.0001),ASLR(r=0.52,p<0.0001),TG(r=0.44,p<0.0001),CS-5(r=-0.62,p<0.0001),握力(r=0.57,p<0.0001),片脚立位時間(r=0.54,p<0.0001)であった。重回帰分析の結果,2ステップ値の有意な独立変数として年齢(β=-0.50,p<0.0001)と握力(β=0.32,p<0.01)であった(R2=0.48,調整済みR2=0.47)。
【結論】
本研究結果より,2ステップテストの目的に記載されているとおり,2ステップ値は下肢筋力やバランス能力と相関関係が認められた。しかし,重回帰分析の結果,2ステップ値の有意な独立変数として年齢と握力のみが抽出された。本研究の対象者には80歳以上の高齢者も含んでおり,加齢に伴う筋力やバランス能力の低下が強く反映されたものと考える。握力は,立位バランスや歩行能力などの全身的な機能を反映する指標である。本結果より,80歳以上の高齢者を対象として移動能力を評価する場合,ロコモ度テストに加え,簡便に計測ができる握力の計測を追加することの有用性が示唆された。