第52回日本理学療法学術大会

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日本運動器理学療法学会 » ポスター発表

[P-MT-03] ポスター(運動器)P03

2017年5月12日(金) 12:50 〜 13:50 ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本運動器理学療法学会

[P-MT-03-1] 大腿骨近位部骨折術後患者の骨盤機能異常と骨盤ベルト装着の即時効果

高橋 幸司, 澤崎 奈生, 山本 陽平, 関口 雄介, 田島 正視, 鈴木 英二 (さいたま記念病院)

キーワード:大腿骨近位部骨折, 骨盤機能, 骨盤ベルト

【はじめに,目的】大腿骨近位部骨折術後回復期で,患側下肢支持性低下による跛行(股関節運動軸の逸脱,骨盤の過可動性)が問題となっていることを多く経験する。また,骨盤アライメントの異常や荷重時の骨盤の不安定性を有する症例も多く経験する。骨盤帯,特に仙腸関節は脊柱と下肢を連結する唯一の関節であり,脊柱と下肢に効率よく荷重を伝達するための重要な役割を担っている(Cohen2005)とされている。Leeらは臨床場面では,腰椎や骨盤帯,股関節における障害には,これら隣接する領域の障害が互いに影響しあっていることが非常に多いと述べている。しかし大腿骨近位部骨折術後の骨盤機能の報告はほとんどない。骨盤ベルトは骨盤の安定性向上に効果があると報告があり,実際に大腿骨近位部骨折術後患者に骨盤ベルトを試行すると歩行安定性の向上,歩行時痛の軽減などの効果がみられる。そこで今回は,大腿骨近位部骨折術後患者の骨盤機能を調査し,骨盤ベルト装着の効果を検証することを目的とした。




【方法】対象は,当院に入院し術後4週以上経過した大腿骨近位部骨折患者11名(全例女性,年齢77.82±11.81歳)。選定基準はMMSE21点以上であり,術後介入に支障をきたす重大な合併症がない者。評価項目は,骨盤評価としてGillet test,下肢自動伸展挙上テスト(active straight leg raise:ASLR),骨盤内捻じれの有無を評価。骨盤ベルト装着前後で疼痛(NRS),筋力(酒井医療社製 徒手筋力計モービィMT-100P使用,股関節外転,膝関節伸展),下肢荷重移動検査(アニマ社製グラビコーダーG-620使用 最大荷重量,総軌跡長,外周面積),10m歩行(時間,歩数,ケイデンス)を測定。下肢荷重移動検査は,術側へ随意的に最大限重心移動させ10秒間測定。骨盤ベルトはThe Com-pressor(インターリハ社製)を使用し,骨盤アライメントの修正後に装着。統計処理は統計ソフトR3.2.0を使用し,骨盤ベルト装着の前後での測定結果の差をWilcoxon符号付順位和検定で算出した。




【結果】Gillet test,ASLRは全例術側で陽性,骨盤内捻じれは全例でみられ,72.73%が術側方向へ骨盤内捻じれを認めた。骨盤ベルト装着前後での比較は,骨盤ベルト装着後に術側股関節外転筋力,膝伸展筋力,術側最大荷重量が有意に増加(P<0.01),10m歩行ではケイデンスが有意に増加した(P<0.05)。総軌跡長,外周面積,10m歩行時間,歩数には有意な変化はなかった。また,全例で「歩くのが楽になった。歩きが安定する。」などの主観的評価があった。




【結論】大腿骨近位部骨折術後患者は骨盤アライメントの異常や骨盤の不安定性がある可能性が示唆された。また,骨盤ベルトの装着で下肢機能,荷重能力向上の可能性が示唆された。今回の結果から大腿骨近位部骨折術後では,骨盤ベルトが有効な治療ツールとなる可能性があることや術後から骨盤アライメント,骨盤の安定性に対するリハビリテーションも重要であると考えられる。