[P-MT-03-3] 大腿骨近位部骨折術後患者のADL能力の獲得と痛みの多面性の関連性
Keywords:大腿骨近位部骨折, ADL, 痛みの多面性
【はじめに,目的】大腿骨近位部骨折(hip fracture;以下,HF)術後では痛みの程度といった感覚的側面のみならず,不安や抑うつといった情動的側面,痛みを過度にネガティブに捉えてしまう破局的思考といった認知的側面に問題を抱える患者も多い。われわれは,第51回本学術大会においてHF術後8週のADLの獲得状況が不良な患者では抑うつ傾向が強い一方で,痛みの程度には問題がないことから,痛みの情動的側面はADLの獲得状況と関連する可能性があることを報告した。一方,様々な外傷や運動器外科術後といった急性痛の段階において,破局的思考の問題を抱える患者は慢性痛に移行しやすく,機能・能力障害の回復が遅延しやすいことが報告されている。したがって,HF術後患者においても,痛みの認知的側面は術後のADLの獲得に影響を与える可能性が推測され,痛みの感覚的・情動的側面と合わせて検討する必要があると考えられる。そこで,本研究ではHF術後患者の痛みの多面性に着目し,ADL能力の獲得との関連性について検討することを目的とした。
【方法】
対象は認知症の診断のないHF術後の女性患者41例(平均年齢;84.8±6.7歳,受傷前bartel index:92.3±12.3点)とした。評価項目はfunctional independence measure運動項目(mFIM),動作時痛のverbal rating scale(VRS),geriatric depression scale(GDS)-15,pain catastrophizing scale(PCS)とした。なお,PCSは,反芻(痛みに過度に注意が向けられる),無力感(痛みのために何もできないと感じてしまう),拡大視(痛みの脅威を過大評価してしまう)の3つの下位項目からなり,痛みの破局的思考を評価する代表的な質問紙の一つである。各評価項目は術後2・4・8週で評価し,Spearmanの順位相関係数を用いて,術後8週のmFIMと術後2・4週のVRS,GDS-15,PCS下位項目の相関関係を分析した。その後,相関が認められた項目を独立変数,術後8週のmFIMを従属変数とし,ステップワイズ法にて重回帰分析を行った。有意水準は5%未満とした。
【結果】術後8週のmFIMと術後2・4週のVRSは相関関係を認めなかったが,術後2・4週のGDS-15ならびにPCSのすべての下位項目との間には相関関係が認められた。また,ステップワイズ重回帰分析の結果,術後8週のmFIMの独立変数として術後2週ではPCSの無力感,術後4週ではGDS-15が抽出された。
【結論】今回の結果から術後2週ではPCSの無力感,術後4週では抑うつがADL能力の獲得に関連が強いことが明らかとなった。したがって,HF術後患者のADLの獲得においては身体機能面への介入のみならず,痛みの認知・情動的側面も考慮したアプローチや関わり方が重要になることが示唆された。
【方法】
対象は認知症の診断のないHF術後の女性患者41例(平均年齢;84.8±6.7歳,受傷前bartel index:92.3±12.3点)とした。評価項目はfunctional independence measure運動項目(mFIM),動作時痛のverbal rating scale(VRS),geriatric depression scale(GDS)-15,pain catastrophizing scale(PCS)とした。なお,PCSは,反芻(痛みに過度に注意が向けられる),無力感(痛みのために何もできないと感じてしまう),拡大視(痛みの脅威を過大評価してしまう)の3つの下位項目からなり,痛みの破局的思考を評価する代表的な質問紙の一つである。各評価項目は術後2・4・8週で評価し,Spearmanの順位相関係数を用いて,術後8週のmFIMと術後2・4週のVRS,GDS-15,PCS下位項目の相関関係を分析した。その後,相関が認められた項目を独立変数,術後8週のmFIMを従属変数とし,ステップワイズ法にて重回帰分析を行った。有意水準は5%未満とした。
【結果】術後8週のmFIMと術後2・4週のVRSは相関関係を認めなかったが,術後2・4週のGDS-15ならびにPCSのすべての下位項目との間には相関関係が認められた。また,ステップワイズ重回帰分析の結果,術後8週のmFIMの独立変数として術後2週ではPCSの無力感,術後4週ではGDS-15が抽出された。
【結論】今回の結果から術後2週ではPCSの無力感,術後4週では抑うつがADL能力の獲得に関連が強いことが明らかとなった。したがって,HF術後患者のADLの獲得においては身体機能面への介入のみならず,痛みの認知・情動的側面も考慮したアプローチや関わり方が重要になることが示唆された。