The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

Presentation information

日本運動器理学療法学会 » ポスター発表

[P-MT-03] ポスター(運動器)P03

Fri. May 12, 2017 12:50 PM - 1:50 PM ポスター会場 (国際展示場 展示ホール8)

日本運動器理学療法学会

[P-MT-03-4] 両側大腿骨近位部骨折におけるADLについて
初回骨折時と再骨折時の比較

山本 穂高1, 有竹 洋平1, 吉武 靖史1, 横山 慧佑1, 野口 雅夫2 (1.社会法人北九州病院北九州中央病院リハビリテーション科, 2.社会法人北九州病院北九州中央病院整形外科)

Keywords:両側大腿骨近位部骨折, 再発, ADL

【はじめに,目的】

高齢社会により,大腿骨近位部骨折(以下FNF)患者は増加することが予想される。ガイドラインによるとFNFの既往は,再転倒による対側骨折発生リスクが高まるとされている。骨折すれば歩行能力低下や生活範囲の狭小化が予想され,転帰に影響を及ぼす可能性も考えられる。再骨折後のリハビリテーション(以下リハビリ)においては,初回骨折時と比較してADLの改善が乏しい印象であるが,ADL各項目に対して初回時と再骨折時で検討した報告は少ない。

そこで本研究は,両側FNFを受傷した症例において,初回時と再骨折時でADLの自立度や改善率の差を明らかにすることとした。


【方法】

対象は,2012年10月から2015年9月の期間にFNFにより2回以上当院回復期リハビリ病棟に入院した高齢者とした。入院中にリハビリの長期間の中止や転院した者は除外し,16名を調査対象とした。

評価項目は,年齢,性別,再骨折までの期間,入院時と退院時の機能的自立度評価法(以下FIM)とFIMの改善度であるFIM利得,退院時歩行レベル,在院日数をカルテより収集した。初回時と再骨折時の2群間において,年齢,在院日数は対応のあるt検定,FIMはWilcoxonの符号付順位和検定を行い比較検討した。優位水準は5%未満とし,統計処理にはIBM SPSS Statistics 24を用いた。


【結果】

性別は女性13例,男性3例,再骨折までの期間は1.5±1.3年であった。在院日数は初回時77.8±25.5日,再骨折時76.4±36.3日,年齢は初回時86.5±5.5歳,再骨折時88.1±5.6歳で有意差はなかった。初回時と再骨折時のFIMを比較し,入院時FIMでは食事,更衣(上下),トイレ動作,排尿・排便コントロール,運動FIM合計,FIM総得点において有意差を認めた(p<0.05)。退院時FIMでは,食事,整容,清拭,更衣(上下),排尿・排便コントロール,移動,運動FIM合計,FIM総得点において有意差を認めた(p<0.05)。FIM利得,FIM効率においては有意差を認めなかった。歩行おいては初回時58.8%,再骨折時29.4%が自立であった。


【結論】

FNFの初回時と再骨折時では,すべての項目と総得点においてFIM利得,FIM効率に有意差を認めず,両側FNFにおいてもリハビリによりADLの改善は期待できる。

移動は再骨折退院時で,初回退院時より有意に低下し,歩行レベルも低下する傾向にあった。先行研究では歩行レベルは低下するが,歩行自立は可能であると報告され,本研究の結果とは異なっていた。セルフケアにおいても,再骨折退院時の方が初回時より有意に低下していた。立位を要する項目だけでなく,座位レベルの項目も有意に低下した点は新たな知見だと考える。

両側FNF患者において,初回時より退院時のADL低下が危惧される事から,歩行形態だけでなくセルフケアにも着目して早期より介入することが重要である。本研究は,ADLの検討のみあり,要因などは明らかに出来なかった。今後は,機能面や精神面による包括的な検討をする必要がある。