[P-MT-04-5] 大腿骨頚部・転子部骨折術後患者の術後腎機能はFunctional Independence Measureの改善に影響を及ぼすか
Keywords:大腿骨頚部骨折, 大腿骨転子部骨折, 腎不全
【はじめに,目的】
大腿骨頚部・転子部骨折は骨粗鬆症を起因とした脆弱性骨折である。腎不全になるとビタミンD欠乏や低Ca血症などで骨密度が低下し,コラーゲンのAdvanced glycation end products(AGEs)化により,骨の材質・構造特性である骨質が低下する。そのため,腎不全を有する大腿骨頚部・転子部骨折術後患者では,日常生活自立度の予後にも影響を及ぼす事が予想されるが,これまでそのような報告はない。本研究の目的は,大腿骨頚部・転子部骨折術後患者の術後腎機能がFunctional Independence Measure(FIM)に影響を及ぼすかを明らかにする事である。
【方法】
平成24年2月から平成28年4月までに当院に入退院し大腿骨地域連携パスが適応された127例のデータを診療録より後方視的に収集した。腎機能低下の重症度の指標として推算糸球体濾過量(eGFR)を,術後の当院転院時のデータから取得した。127例のうち,eGFR未測定の15例,死亡退院の8例,年齢75才未満の5例,理学・作業療法総単位数が30単位以下または当院入院期間が15日以下の2例,診療録上欠損データのあった7例を除外した92例を抽出した。当院入院時のeGFRが60mL/分/1.73 m2以上の群(対照群49例)とeGFRが60mL/分/1.73 m2未満の群(腎不全群43例)の2群に分けた。基本情報(年齢,性別,身長,体重,BMI,診断名,受傷機転,受傷側,初発・再発,術式,連携パスの種類,受傷前生活場所,理学療法単位数,作業療法単位数,手術待機日数,総入院日数,退院先),血液データ(Alb,Hb,WBC,BUN,Cre),受傷前・転院時・退院時FIM(各合計・運動項目・認知項目)を比較した。統計処理はJ-STATを使用し,2群の比較は対応のないT検定,Mann-WhitneyのU検定,カイ2乗検定を,3群比較はKruskal-Wallis Test・Scheffe多重比較を実施し,有意水準は5%で検討した。
【結果】
受傷前FIMの合計・運動項目,受傷前生活場所が自宅の割合は腎不全群より対照群が有意に低かった(p<0.05)。転院時BUN,Creは腎不全群より対照群が有意に低かった(p<0.01)。その他の2群の比較では有意差はみられなかった。時系列におけるFIM合計は,対照群で受傷前より転院時(p<0.01),退院時(p<0.05)が有意に低く,転院時より退院時が有意に高かった(p<0.05)。腎不全群では受傷前より転院時,退院時が有意に低かった(p<0.01)。
【結論】
腎不全群では術後にFIMが低下し,転院後のFIMの向上も少なく,受傷前の自宅生活が難しくなる傾向がみられた。腎不全群の腎機能は術後に低下したのかは定かではないが,大腿骨頚部・転子部骨折術後の腎不全との重複障害はFIM低下を予測する因子となる可能性が示唆された。
大腿骨頚部・転子部骨折は骨粗鬆症を起因とした脆弱性骨折である。腎不全になるとビタミンD欠乏や低Ca血症などで骨密度が低下し,コラーゲンのAdvanced glycation end products(AGEs)化により,骨の材質・構造特性である骨質が低下する。そのため,腎不全を有する大腿骨頚部・転子部骨折術後患者では,日常生活自立度の予後にも影響を及ぼす事が予想されるが,これまでそのような報告はない。本研究の目的は,大腿骨頚部・転子部骨折術後患者の術後腎機能がFunctional Independence Measure(FIM)に影響を及ぼすかを明らかにする事である。
【方法】
平成24年2月から平成28年4月までに当院に入退院し大腿骨地域連携パスが適応された127例のデータを診療録より後方視的に収集した。腎機能低下の重症度の指標として推算糸球体濾過量(eGFR)を,術後の当院転院時のデータから取得した。127例のうち,eGFR未測定の15例,死亡退院の8例,年齢75才未満の5例,理学・作業療法総単位数が30単位以下または当院入院期間が15日以下の2例,診療録上欠損データのあった7例を除外した92例を抽出した。当院入院時のeGFRが60mL/分/1.73 m2以上の群(対照群49例)とeGFRが60mL/分/1.73 m2未満の群(腎不全群43例)の2群に分けた。基本情報(年齢,性別,身長,体重,BMI,診断名,受傷機転,受傷側,初発・再発,術式,連携パスの種類,受傷前生活場所,理学療法単位数,作業療法単位数,手術待機日数,総入院日数,退院先),血液データ(Alb,Hb,WBC,BUN,Cre),受傷前・転院時・退院時FIM(各合計・運動項目・認知項目)を比較した。統計処理はJ-STATを使用し,2群の比較は対応のないT検定,Mann-WhitneyのU検定,カイ2乗検定を,3群比較はKruskal-Wallis Test・Scheffe多重比較を実施し,有意水準は5%で検討した。
【結果】
受傷前FIMの合計・運動項目,受傷前生活場所が自宅の割合は腎不全群より対照群が有意に低かった(p<0.05)。転院時BUN,Creは腎不全群より対照群が有意に低かった(p<0.01)。その他の2群の比較では有意差はみられなかった。時系列におけるFIM合計は,対照群で受傷前より転院時(p<0.01),退院時(p<0.05)が有意に低く,転院時より退院時が有意に高かった(p<0.05)。腎不全群では受傷前より転院時,退院時が有意に低かった(p<0.01)。
【結論】
腎不全群では術後にFIMが低下し,転院後のFIMの向上も少なく,受傷前の自宅生活が難しくなる傾向がみられた。腎不全群の腎機能は術後に低下したのかは定かではないが,大腿骨頚部・転子部骨折術後の腎不全との重複障害はFIM低下を予測する因子となる可能性が示唆された。