[P-MT-06-2] 腰部脊柱管狭窄症患者の歩行負荷前後において歩行時脊柱・骨盤運動は下肢痛および腰痛の増悪に影響を与えるか
Keywords:腰部脊柱管狭窄症, 歩行分析, 腰痛
【はじめに,目的】
腰部脊柱管狭窄症(LSS)の特有な臨床症状は神経症状由来の下肢痛,下肢しびれ,神経性間欠跛行であり,長距離歩行が困難となる。LSS患者の神経症状は姿勢により変化することが知られている。さらにLSS患者は除圧術後,腰痛が改善することが報告されており,その要因の一つに術後の脊柱・骨盤アライメントの変化が挙げられている。以上より,歩行により生じるLSS患者の臨床症状には歩行中の脊柱・骨盤アライメントが影響している可能性があると考えた。そこで本研究は,歩行負荷を行うことで増悪するLSS患者の下肢痛,腰痛に歩行時の脊柱・骨盤運動が影響を与えるか明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は腰部脊柱管狭窄症と診断され,神経性間欠跛行を呈した患者14名とした。歩行解析には赤外線カメラ16台を用いた三次元動作解析装置VIOCON MX(Vicon Motion Systems社,UK)と床反力計8基(AMTI社,USA)を使用した。課題動作は10 mの快適速度歩行とし,6分間歩行負荷試験前後で測定を行った。赤外線反射マーカーを対象の身体に計24箇所貼付した。得られたマーカー座標から体幹・胸椎・腰椎・骨盤前傾角度を算出し,それぞれの立脚期における最大前傾角度を解析に使用した。さらに歩行負荷前後での下肢痛,腰痛のVisual Analogue Scale(VAS)を聴取し,より下肢痛が強くなった対象を下肢痛群,腰痛が強くなった対象を腰痛群として分類した。統計学的解析は群(下肢痛群・腰痛群)と歩行負荷前後(負荷前・負荷後)における歩行時脊柱・骨盤運動の違いを明らかにするため線形混合モデル二元配置分散分析を用いて比較した。さらに歩行負荷前から後の下肢痛,腰痛VASの増加率を従属変数,各運動学データを独立変数として,ステップワイズ法による重回帰分析を行った。
【結果】
聴取したVASの結果,下肢痛群6名,腰痛群8名に分類された。各運動学データにおいて交互作用を認めなかった。胸椎前傾角度は有意な群の主効果を認め,歩行負荷前・後それぞれにおいて,下肢痛群の方が低値であった。腰椎前傾角度は有意な歩行負荷前後の主効果を認め,両群において歩行負荷後で前傾角度が増加した。重回帰分析の結果,下肢痛VASの増加率には歩行負荷前の胸椎前傾角度が有意に選択され,腰痛VASの増加率には,骨盤前傾角度の増加率(負荷後-負荷前)が有意に選択された。
【結論】
下肢痛群で歩行負荷前から示された胸椎前傾角度の低値は上半身重心を前方に移動させることができず,結果として腰椎に伸展ストレスを与えた可能性がある。歩行負荷後は腰椎前傾角度を増加させ,疼痛回避性の歩行を行っていることが考えられた。LSS患者の腰痛には,歩行負荷により増加する骨盤前傾角度が影響していることが示唆された。
腰部脊柱管狭窄症(LSS)の特有な臨床症状は神経症状由来の下肢痛,下肢しびれ,神経性間欠跛行であり,長距離歩行が困難となる。LSS患者の神経症状は姿勢により変化することが知られている。さらにLSS患者は除圧術後,腰痛が改善することが報告されており,その要因の一つに術後の脊柱・骨盤アライメントの変化が挙げられている。以上より,歩行により生じるLSS患者の臨床症状には歩行中の脊柱・骨盤アライメントが影響している可能性があると考えた。そこで本研究は,歩行負荷を行うことで増悪するLSS患者の下肢痛,腰痛に歩行時の脊柱・骨盤運動が影響を与えるか明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は腰部脊柱管狭窄症と診断され,神経性間欠跛行を呈した患者14名とした。歩行解析には赤外線カメラ16台を用いた三次元動作解析装置VIOCON MX(Vicon Motion Systems社,UK)と床反力計8基(AMTI社,USA)を使用した。課題動作は10 mの快適速度歩行とし,6分間歩行負荷試験前後で測定を行った。赤外線反射マーカーを対象の身体に計24箇所貼付した。得られたマーカー座標から体幹・胸椎・腰椎・骨盤前傾角度を算出し,それぞれの立脚期における最大前傾角度を解析に使用した。さらに歩行負荷前後での下肢痛,腰痛のVisual Analogue Scale(VAS)を聴取し,より下肢痛が強くなった対象を下肢痛群,腰痛が強くなった対象を腰痛群として分類した。統計学的解析は群(下肢痛群・腰痛群)と歩行負荷前後(負荷前・負荷後)における歩行時脊柱・骨盤運動の違いを明らかにするため線形混合モデル二元配置分散分析を用いて比較した。さらに歩行負荷前から後の下肢痛,腰痛VASの増加率を従属変数,各運動学データを独立変数として,ステップワイズ法による重回帰分析を行った。
【結果】
聴取したVASの結果,下肢痛群6名,腰痛群8名に分類された。各運動学データにおいて交互作用を認めなかった。胸椎前傾角度は有意な群の主効果を認め,歩行負荷前・後それぞれにおいて,下肢痛群の方が低値であった。腰椎前傾角度は有意な歩行負荷前後の主効果を認め,両群において歩行負荷後で前傾角度が増加した。重回帰分析の結果,下肢痛VASの増加率には歩行負荷前の胸椎前傾角度が有意に選択され,腰痛VASの増加率には,骨盤前傾角度の増加率(負荷後-負荷前)が有意に選択された。
【結論】
下肢痛群で歩行負荷前から示された胸椎前傾角度の低値は上半身重心を前方に移動させることができず,結果として腰椎に伸展ストレスを与えた可能性がある。歩行負荷後は腰椎前傾角度を増加させ,疼痛回避性の歩行を行っていることが考えられた。LSS患者の腰痛には,歩行負荷により増加する骨盤前傾角度が影響していることが示唆された。