[P-MT-07-2] 肩関節由来の痛みの拡がりが身体機能・日常生活に与える影響
Keywords:肩, 痛み, ADL
【はじめに,目的】
肩の痛みは,関節可動域制限や筋力低下などの身体機能低下を招き,その結果,ALDおよびQOLを低下させる。臨床場面では,単に肩の痛みといっても肩関節のみならず,肩関節以外へ痛みが拡がる症例を目にすることが少なくない。しかし,これまで肩の痛みの拡がりに注目した報告はない。我々は,この肩の痛みの拡がりそれ自体が患者の身体機能・ADLを低下させると仮説を立て,肩の痛みの拡がりに関係する因子を検証した。本研究の目的は,肩の痛みを主訴とする患者を対象に肩関節由来の痛みの拡がりが患者の身体機能・ADLに関係することを明らかにし,痛みの拡がりを詳細に聴取することの有用性を検討することである。
【方法】
平成27年11月から平成28年10月間の肩関節手術待機患者で術前機能評価として,身体機能評価測定と質問紙表での聴取可能であった23名(男性15名,女性13名,平均年齢68.6±8.7)を対象に調査した。
痛みの拡がりはPain drawing用シェーマを作成し,患者自身が痛みを感じている範囲を線で囲んで表した。身体機能として,患側肩関節屈曲・外転最大筋力をHand Held Dynamometerで測定し,疼痛強度は過去6週間の平均疼痛強度をNRSで測定した。また,質問紙表として,日本整形外科学会肩関節疾患治療成績判定基準(以下,JOA),患者立脚肩関節評価法Shoulder36(以下,Shoulder36),米国肩肘関節外科スコア(以下,ASES),Quick DASHを聴取した。統計解析は,痛みの範囲と各評価項目をSpearmanの順位相関係数を用いて相関を求めた。有意水準は5%とした。
【結果】
痛みの拡がりは,JOAの下位項目である機能(r=-0.49)・可動域(r=-0.41),合計点(r=-0.46)とShoulder36の下位項目である筋力(r=-0.45)と負の相関を示した。(p<0.05)しかし,NRSと肩屈曲・外転最大筋力との間には相関を示さなかった。
【結論】
痛みの拡がりは,各質問紙表における筋力や関節可動域などの日常生活活動に必要な機能と関連することが示されたが,痛みの強度への関連は見られなかった。痛みの拡がりは,単純な最大筋力ではなく日常生活上での動作を遂行するために必要な筋力に相関があるという事は新しい知見である。痛みの評価はこれまで,腱板断裂部位特異的な疼痛部位の報告があり疼痛部位や強度の評価が推奨されている。しかし,疼痛部位や強度だけではなく,痛みの拡がりを詳細に把握することは,痛みの強度とは別の視点である日常生活における肩の機能を簡便に評価できる可能性が示唆された。今後は,痛みの部位や強度だけでなく,痛みの範囲を詳細に評価することも,臨床における1つの評価になると考える。
肩の痛みは,関節可動域制限や筋力低下などの身体機能低下を招き,その結果,ALDおよびQOLを低下させる。臨床場面では,単に肩の痛みといっても肩関節のみならず,肩関節以外へ痛みが拡がる症例を目にすることが少なくない。しかし,これまで肩の痛みの拡がりに注目した報告はない。我々は,この肩の痛みの拡がりそれ自体が患者の身体機能・ADLを低下させると仮説を立て,肩の痛みの拡がりに関係する因子を検証した。本研究の目的は,肩の痛みを主訴とする患者を対象に肩関節由来の痛みの拡がりが患者の身体機能・ADLに関係することを明らかにし,痛みの拡がりを詳細に聴取することの有用性を検討することである。
【方法】
平成27年11月から平成28年10月間の肩関節手術待機患者で術前機能評価として,身体機能評価測定と質問紙表での聴取可能であった23名(男性15名,女性13名,平均年齢68.6±8.7)を対象に調査した。
痛みの拡がりはPain drawing用シェーマを作成し,患者自身が痛みを感じている範囲を線で囲んで表した。身体機能として,患側肩関節屈曲・外転最大筋力をHand Held Dynamometerで測定し,疼痛強度は過去6週間の平均疼痛強度をNRSで測定した。また,質問紙表として,日本整形外科学会肩関節疾患治療成績判定基準(以下,JOA),患者立脚肩関節評価法Shoulder36(以下,Shoulder36),米国肩肘関節外科スコア(以下,ASES),Quick DASHを聴取した。統計解析は,痛みの範囲と各評価項目をSpearmanの順位相関係数を用いて相関を求めた。有意水準は5%とした。
【結果】
痛みの拡がりは,JOAの下位項目である機能(r=-0.49)・可動域(r=-0.41),合計点(r=-0.46)とShoulder36の下位項目である筋力(r=-0.45)と負の相関を示した。(p<0.05)しかし,NRSと肩屈曲・外転最大筋力との間には相関を示さなかった。
【結論】
痛みの拡がりは,各質問紙表における筋力や関節可動域などの日常生活活動に必要な機能と関連することが示されたが,痛みの強度への関連は見られなかった。痛みの拡がりは,単純な最大筋力ではなく日常生活上での動作を遂行するために必要な筋力に相関があるという事は新しい知見である。痛みの評価はこれまで,腱板断裂部位特異的な疼痛部位の報告があり疼痛部位や強度の評価が推奨されている。しかし,疼痛部位や強度だけではなく,痛みの拡がりを詳細に把握することは,痛みの強度とは別の視点である日常生活における肩の機能を簡便に評価できる可能性が示唆された。今後は,痛みの部位や強度だけでなく,痛みの範囲を詳細に評価することも,臨床における1つの評価になると考える。